「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週日曜19:00~19:30で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。
【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.723~唄者大野えり~】
3週間ほど前の放送になるが、日本のジャズ唄者の第一人者~大野えりと、編曲者として今最も充実している松本治がゲスト登場した。その時に...と思ったのだがこちらの勘違いで原稿スルーしてしまい、改めて今回は大野えりをこのコラムの主役で取り上げたいと思う。番組にはえりさんと松本氏の2人が共作した、デューク・エリントン(&ビリー・ストレ―ホーン)作品集『デューク・オン・ザ・ウインズ』を携えての登場だった。このアルバムは以前もこのコラムで紹介したが、ぼくは23年度の「ベスト・ジャズ・アルバム」として各所で紹介しており、それだけに是非2人に番組にも...と思っていたのだった。えりさんは昨年も板橋文夫&米木康と言う強者と組んだトリオで、2曲のみと言うミニアルバムを発表したが、その折にも是非番組に...と言うことで出てもらっただけに、番組としてはかなり短いサイクルでの登場となる。その収録終わりで雑談をしている時に、今エリントン集を作っており、かなりな出来栄えになりそうなの...と彼女は言う。これは面白いかな...と思っていた矢先、その作品がアルバムレビュー(アルバムの評価)の担当としてぼくの所に廻って来た。まあその縁にもいささか驚いたが、その内容の素晴らしさにも驚かされたものだった。そこで直ぐに彼女に、松本氏を伴ってスタジオに遊びに来るよう頼み、2人の出演が実現した訳なのである。
先ほど彼女を、ジャズ唄者と言う言い方をしたが、この「唄者(うたじゃ)」と言う言葉は、奄美大島の奄美民謡の歌い手の中の真の歌い手だけに使われる言葉だそうで、奄美大島好きなぼくは良くジャズシンガーのレビューなどにもこの言葉を使っているのだが、日本には殆どこの「ジャズ唄者」に価するシンガーはいない。その数少ない一人がえりさんなのだ。
名古屋市出身で同地の有名劇場「御園座」出演者達の定宿だった大野屋(今は無い)の長女として生まれ育ち、同志社大学のジャズ研時代からもうプロのシンガーとして活躍していた。卒業後はフュージョン畑での仕事が多く、ぼく自身はそんなに彼女への関心は無かったのだが、10数年ほど前に久し振りにその歌声に接し、本当に驚かされてしまった。丁度そのころ唄者と言う言葉を知り、正にジャズの世界での唄者は彼女...と言う感じを持ち、以降は良くこの表現を使わさせてもらっている。そんな彼女だけに最近のアルバムは、どれも和ジャズの水準を大きく凌駕するような素晴らしいものばかり。最新作『デューク・オン・ザ・ウインズ』は木管楽器アンサンブルをバックにしたもので、主役はアレンジを担当した松本治(トロンボーン奏者でもあるのが、今回は吹いていない)だが、元々は彼女が木管楽器をバックにして何か唄いたい...という希望を松本氏に伝え、それならば彼も好きなエリントン集にしたら...と言うことで実現した企画だとのこと。正にジャストフィットの企画だったようで、世界的な規模と内容をも誇る素晴らしいアルバムが誕生した。各方面で好評のこの木管アンサンブルと共演盤、次回はコール・ポーター作品集を...と言う話が進んでいるやにも聞くが...、なんとも愉しみな企画で早めの実現を是非望みたいものです。
【今週の番組ゲスト:ピアニスト クリヤマコトさんとパーカッショニスト 安井源之新さん】
お2人のユニットRHYTHMATRIXの15年ぶりの新譜『BRIGHTNESS』から
M1「5 Spot」
M2「Passando, feat. Marcelo Kimura」
M3「Berimbau, feat. Yuka Ueda」
M4「I Can Recall Spain, feat. KOTETSU」