7月20日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [テイスト・オブ・ジャズ]
2019/07/19(金) 19:00 番組スタッフ
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.471~閉店のお知らせ】
 
 ぼくのようなロートル=オールドボーイにとっては、日頃余り連絡を取り合っていない知り合いからTELなんぞがあると、それは大方決まって訃報のお知らせである。そこでおもむろに礼服と香典の用意...となるのだが、日頃ラフな格好でいるだけに、ネクタイを締めるなどと言うのもこんな場合に限られてしまう。こうした訃報などもこのところ結構あって、この年令になると人の生き死なども、今や淡々と受け止められるようになっている。

 
そんなこんなで先日知り合い(と言っても一人は息子だが...)からTELがあり、またまた訃報連絡かと思いきや、これがお店閉店の連絡で息子も同じだった。いずれもがぼくの最も愛着を抱いているお店で、一軒はラーメン店、もう一軒は割烹居酒屋。ラーメン店の方は高円寺駅前の老舗「代一元 高円寺店」、割烹居酒屋の方は新橋烏森の「たきもと」、両方とも銘店などと言うものでは無いが、ぼくにとっては両方とも最も大切な店で、「代一元」が6月末、「たきもと」の方はこの7月末でジエンドなのである。

 6月閉店の代一元は、ぼくの育った街、高円寺を代表するする街ラーメン店で、確か昭和25年創業の筈なので70年近い歴史を刻むお店(玉袋筋太郎がTVで閉店を嘆いたとも聞く...)。ぼくらの時代は本当に貧しい頃だったので、ほとんどの子供は外食なども出来ず、特にうちの親父は一切外食拒否の人。それだけに子供の頃は1年1度ほどのデパート食堂での会食位しか記憶が無く、お袋に連れられて初めてラーメンを食べたのがこの「代一元」。ここのラーメンは中央線界隈でも評判だっただけに、最初食べた時にはこんな旨いものが...とびっくり、それ以来親父に内緒でお袋や姉貴に連れて行って貰った。まさに少年時代のぼくのデリシャスフード(最初に入ったのは小学4年生の時)だった。
 それ以来中・高校、大学、局員になってからもここにはよく通ったし、高円寺を離れてからもわざわざ駅で降りて、ここのラーメンを食べたものだった。店員も数多く変わったが、その変遷も懐かしい。お勧めは1年中ある「冷やし中華」。独特のタレが絶品で、年間を通して冷やしがある店は、当時東京でも数少なかった筈。この冷やし中華に関して言えば不二夫ちゃん(赤塚不二夫)とNHKにいた滝大作氏がメインのお笑い集団「面白グループ(筒井康隆、タモリや山下洋輔、所ジョージ、山本監督等多彩な面々が集まっていた)」が、一時冷やし中華をはやらせようと「全冷中連(全国冷やし中華推進連盟)」なるお遊び集団をぶち上げた時に、代一元高円寺店を推薦してくれるように不二夫ちゃんに頼んだのだが、一部のメンバーの反対により惜しくも落選してしまったことがある。あの時に推薦を取れれば、全国一の冷やし有名店になった筈だったが、まことに惜しいことをしたもの。
 
70年近い歴史を閉じるそのニュースを息子に教えられ、わざわざ閉店2日前に店を訪れてみたのだが、何時もは見られない行列が出来ており、入店にも時間がかかるほど超満員、親父さんとはほとんど口もきけず、最後に少し声を交わして店を離れた。冷やし中華の大盛」をもう二度と食べられないと思うと、いささか感傷的になりましたし、本当に腹に沁みました。

 
一方新橋の割烹居酒屋「たきもと」は、烏森神社のすぐ脇の飲み屋街の一角にある店で、ここの女将~杉野さんは日本短波放送時代の先輩で、局時代には現場庶務のような仕事を担当していた。本当に入社以降お世話になった人で、「全てを幼稚園の砂場から学んだ」等と言う人生本があったと思うが、その伝で行くと会社員として「ほぼ全てを杉野さんに教わった」と記してもいいほど、色々と会社員としてのイロハを教わった気がする。
 制作部員新入歓迎コンパで、予科練上がりの先輩にビール瓶で殴られるなどの手荒い歓迎を受けた小生意気だったぼくを、どうしたら組織に受け入れられるかなど良く忠告してくれたが、余りそれらを受け入れることなく今まで来てしまった感もある。まあ彼女はぼくにとって色々と人生の良き先達でもあった。なりよりこの店で素晴らしいのは、彼女のお袋さんは新橋界隈ではよく知られた芸者さん上がり。数多くの芸者さんにお茶やお花、三味線などの習い事を教える師匠格でもあったゴッドマザーで、知的で美形、話をするのも実に愉しかった。その関係もあって会社を辞めた後、彼女はお店を始めたのだろうが、余り接客業に向いているとは言えない人だったと思う。しかし40年近く良く継続したものだとほとほと感心する。ぼくのご贔屓のお袋さんが亡くなってからは、ここの板前と合わない為(知り合いの多くはそれが原因でここから離れてしまった...)、余り店に顔を出すことも少なくなってしまったが、新橋の会合の後などはなるべく立ち寄る様にはしていたのだが...、まさかこの7月で店じまいとは...、残念としか言いようがない。あと数回は顔を見せることにして、しみじみと懐かしきあの日々を振り返りつつ偲ぼうと思う。


 「代一元」と「たきもと」。いつもでも心に残り、ぼくにとっての人生の大きな位置を占める、本当の銘店なのである。


【今週の番組ゲスト:株式会社88代表の伊藤妙子さん】
今年で第8回開催の「軽井沢ジャズフェスティバル」が、7月27日(土)、軽井沢大賀ホールで開催されます。
http://eighty-eight.jp/

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