番組紹介

ラジオNIKKEI第1 毎月第3火曜日 17:00~17:20
協力:NCGM 国立国際医療研究センター 国際医療協力局

途上国へ赴き、現地の医療システム全体の改善に貢献する「グローバルヘルス」。
その活動経験を持つマスターと、カフェの常連客が、世界の健康問題について語り合います。
マスターが淹れるめずらしいコーヒーも登場します。
出演は、国立国際医療研究センターの明石秀親。

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第19回「医療の国際展開」テキストデータ版(2016.8.16放送) [放送内容テキストデータ]

2016.08/30 番組スタッフ 記事URL

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聴く第19回「医療の国際展開」(2016年8月16日放送分)


<出演>
マスター:明石 秀親(国立国際医療研究センター)
藤沢:藤沢久美(シンクタンク・ソフィアバンク代表/常連客)

※ 番組では、みなさまからのご意見・ご感想を募集しております。
※ 番組宛メール送信フォームより、ぜひご意見をお寄せください。
※ お寄せいただいた内容は、番組内でご紹介させていただく場合がございます。

■社会起業家と新興国の橋渡しをする

マスター:いらっしゃいませ、いやあ今日は暑いですね。アイスコーヒーですね。

藤沢:こんにちは。あ、お隣いいですか。はじめまして、藤沢久美です。

マスター:藤沢さんをご紹介したいんですけど、どんなふうにお伝えすればいいですかねえ。

藤沢:シンクタンク・ソフィアバンクという会社の代表をしているんですけれども、それ以外には政府のいろんな審議委員だとか、文部科学省の参与というお仕事もしています。あと豊田通商とか、地方銀行の静岡銀行の社外取締役とかいろんな公職が多いんですけれど、私のなかでとても力を入れているのが、日本の中小企業さんとかベンチャーの社長さんとか、そういう方々にもっと海外を知っていただいて、海外にもビジネスをしに行きませんかというような、そんなお手伝いをしています。

マスター:社会的起業家とか、そういうような支援とかそういうのもなさっていらっしゃるのですか。

藤沢:そうですね。元々、社会起業家の方々を応援するような集まりとかもやったりしていましたし、私自身も社会起業家として途上国の小学校の給食を支援するようなNPOであるとか、そういった活動もしたりしていますし。あと、何年か前はグラミン銀行のモハメド・ユヌスさんが日本に来る時に、それこそ日本の企業の経営者さんたちとユヌスさんとお話をする会をいくつか作って、日本の企業の人たちもビジネスのなかにそういう社会起業家的なセンスを入れていきませんかというような、そんなことをやったりもしました。

マスター:そうですか。実はNCGMもユヌスさんのところと関係がありまして、うちでも講演をしていただいたことがあるんですけれども、その後も向こうのグラミンヘルスのほうに行ってお話とかしているんです。

藤沢:一緒に何かプロジェクトとかやってらっしゃるんですか。

マスター:今は直接やってないんですが、ユヌスさんたちのお考えは、やっぱり貧しいお宅の女性の方たちに仕事を作る、それから同時にバングラデシュの看護師さんたちの不足を補うというようなことをやってらっしゃって、あちらが作った看護学校に支援したこともあるんですけれども。その後はユヌスさんのところではなくて、グラミンヘルストップのスルタン先生。このスルタン先生のところに、いろんな企業がいろんな機材とかですね、「これ新しいから使わないか」とかいう提案をもってくると。日本もいろいろいいものを作っているでしょう、と。だからちょっと紹介してくださいというので、一度紹介したことがありますね。

■ 国際医療研究センターの役割の変化

藤沢:マスターがいらっしゃる国際医療研究センターっていうのはまさに医療関係の支援だと思いますが、積極的にはどのあたりで活動されているんですか。

マスター:最近はアフリカとアジアですね。

藤沢:アフリカとアジアって聞くと、新興国でどんどん成長している国もあるけれども、まだまだすごく貧しい生活というか。そういうところに私のイメージだとNCGMさんてお医者さんを派遣するとか、お薬とか、医薬品を提供するというイメージがあるんですけれど、民間企業が進出するお手伝いまでされているんですか。

マスター:そうですね、元々NCGMは病院がありますので、病院の医者を派遣して向こうで診療するんじゃないかというふうなイメージで取られるんです。確かに以前はそういう形もあったんですけれども、最近は保健システムを強化するとか、あるいは病院運営を支援するとかですね、直接、医療そのものを提供するというよりは、その国の国づくり、人づくりのほうが中心になってきていますね。

藤沢:それはとても素敵なことですよね。

マスター:ありがとうございます。

藤沢:お医者さんを送ります、薬を送りますというと、ずっと送り続けなければいけないけれど、仕組みを作るお手伝いをしてくださったら、その国の人が自分でお医者さんになれたり、自分で医療サービスを担えるということで、自立できるというか。

マスター:そうですね。

藤沢:いいですね。私たちもよく社会起業家とかの仲間たちと話すのですが、魚をあげるのではなくて、魚の釣り方を教えるということをやらないと、絶対みんな幸せにならないよねという話はよくしますね。

マスター:わかりますね。

藤沢:でも、釣りの仕方を教えてさしあげる時に、やはり釣り竿とか糸とか必要になってくる。そういう釣り竿とかというと、今度は日本の企業が作るのが得意みたいなところがあって、釣り竿を作る企業さんも海外にお連れして、釣り竿の作り方も教えちゃおうみたいなこともやってらっしゃるということですか。

マスター:直接、我々は企業ではないので、そこまではいかないのですが、実際におっしゃるように企業さんからのアドバイスというのを求められることも多いんです。このままだとこの機材、日本ではいいんだけど、そもそもほこりが多いところとか、その国だとこれ壊れちゃったらどうしますかとか、そこまで考える。向こうに売ったんだけど、あるいは持って行ったんだけど、すぐに壊れて動かないんですという状態は避けたい。

藤沢:確かに企業の視点からいくと、あの新興国や途上国ではこういうものが無いからこういうものをお届けしたら喜んでもらえるだろうとか、売れるんじゃないかと思って行くんだけど、おっしゃるようにすごいほこりだとか、実は電気あんまりちゃんと無いですとか、修理をする人もいませんとか。そういうことって日本にいるとわからない。途上国に商売に行くというと、いろいろ資料を見て、この国にはカントリーリスクがあるとか政治のリスクがあるとか、通貨はこんな為替リスクがあるとか、数字でわかることは勉強して行けるんですけれども、今みたいにすごく現地に密着した話ってなかなかわからないですね。

マスター:そうかもしれないですね。やっぱり我々の職員もみんな、ずっと途上国に行っていますから、そのなかで日本の会社にもがんばってほしいなというところと、こうやったらちょっとまずいでしょうみたいな、そういう2種類というか、いくつかの面を見るなかで我々の経験なりが少しでも生きればいいかなというところもあります。

■ JICAやJETROの紹介により企業の海外進出を手助けする

藤沢:そういうのって企業のみなさんにどうやって教えてあげたり、情報共有してあげたりされているんですか。

マスター:今、実際に来ていただいて何が疑問なのか、あるいはどういう機材なのかも含めて一緒に考えていくと、それは途上国の支援と同じようなことですね。

藤沢:会社だとまず行ってみるといったって、もうちょっと勉強が必要だろうというときに、セミナーとかそういうのもやってくださるのですか。

マスター:今、年に2回くらいですけれども、国に特化した形でセミナーをやったり、最近はアフリカのTICADという。

藤沢:もうすぐありますね、ケニアで。

マスター:アフリカ開発会議ですね。そういうこともあって、アフリカをメインでセミナーをやったりしています。そこでは、我々がすべて持っているわけではないので、ほかの既に進出した企業さんとかからも情報を入れていただいて、みんなで高めるというかみんなで考えようというような形ではやっていますね。

藤沢:仲人さんみたいですよね。

マスター:そうですね、仲人になれればいいですけどね。

藤沢:途上国への支援とか、民間企業の人たちの進出支援とかというと、まずぱっとイメージで頭に浮かぶのってJAICAさんがあるんですけれども、JAICAさんともちょっと違うということですか。

マスター:そうですね。JAICAさんそのものはいろいろな民間連携の事業をやってらっしゃって、そういうのに応募する企業が多いわけですよね。そういうなかでJAICAさんが途上国を中心にいろいろな事業をなさっているんですけれども、どちらかというと保健医療の専門分野は専門機関に任せるという形が多いので、そのなかでNCGMはその専門機関だと思います。そういう意味ではJAICAさんの民間連携スキームに相談に行ってその事務所からうちに紹介されていらっしゃる企業さんとか、あとJETROさんもいろいろやってらっしゃいますけれど、JETROさんも貿易についてはお強いですけども、途上国の医療についてはちょっとわかりませんみたいなことで、JETROさんと一緒にいらっしゃったりという場合もありますね。

藤沢:私たちは日本の医療のイメージを持っているけれども、やはり医療も国ごとにずいぶん違うってことなんですかね。

マスター:そうですね。かなり似ている部分もあるし、その国ならではの環境もありますよね。もちろん文化もあるし、社会構造も含めて。ですから、言い方が変ですけれど、医療機材を持って行って売る場所というよりは、そこがどうやって良くなるか、そのことに貢献できるということが、企業さんにとっては自分たちの進出する機会であるでしょうし、日本にとっても、日本の企業について、あるいは日本人について良いイメージを持っていただく、そういう機会になるのではないかなと思います。

藤沢:そうですね。

マスター:特に中小企業さんは自分のところですべてできるわけではないので、そういうところに対して日本としても支援をすると、より日本の経済も結果として改善する。我々は医療従事者なので、どちらかというと国による健康ギャップを埋めるとかそういうほうに我々の視点はあるんですけれども、多面的に日本が出ていくという機会が最近は昔よりも増えている。それに対して、NCGMも何とか貢献できたらいいなという感じですね。

藤沢:私なんか、はじめはNCGMさんというとものすごい公的なイメージもあったし、それから医療協力、国際医療協力とか聞くと、がちがちな昔ながらの公的援助のイメージがあったんですけれど、今日はすごいお話を聞いていて、もうそういうBOP、Bottom Of PyramidとかBase Of Pyramidといわれるビジネスとうまく連携してやられているんだというのを聞いて、医療の世界もそういうのが始まっているんだなと、今日はすごく勉強になりました。

■ 「起業」に「社会性」が伴って始めて「社会起業家」となる

藤沢:でも、そういう観点からいくと、先ほどちらりと中小企業さんなんかもそういう援助プラスビジネスみたいな感じで海外に行かれているというお話がありましたけれども、最近、何か事例があったら聞いてみたいです。

マスター:たとえばですね、埼玉県の中小企業さん、社員13名というふうに聞いていますけれど、そこがベトナムにビリルビン測定器を売り込むというか、試験的に運用するというのをJICAの中小企業の予算をもらって始めているみたいです。そこに対してうちが支援する。相談にのって、最終的にその会社さんはそのベトナムに現地工場を作るということになり、今、また別の会社のお話を持ってきていますね。

藤沢:じゃあ、もう本当完全に企業のビジネス進出というもののお手伝い。

マスター:その進出する、企業さんにとっては進出が目的なんでしょうけれど、かなりこちらとしてはアドバイスして、先ほどお話したように先方の健康レベルを、健康ギャップを減らすというほうに動いていますね。

藤沢:だから社会起業家という言葉がありますけれど、その起業家のビジネスのところはまさに日本の中小企業さんとかがまさに日々やってらっしゃることで、そこに社会性というところを役割分担としてやってくださって、2つ合わせてまさに社会起業家みたいな。

マスター:ああ、それは初めて聞きました。それは面白い視点ですね。

藤沢:企業にとっても良いことして儲けるという実感が湧くと、よりみんながんばれるじゃないですか。

マスター:それは面白い視点ですね。すごい勉強になります。

藤沢:とんでもないです。出ていくというのは、みんな勇気がいることだから。誰かのためだとがんばれるかもしれないですよね。

マスター:なるほどね。それ面白いですね。

藤沢:そうですか。

第19回「医療の国際展開」放送時間のご案内 [お知らせ]

2016.08/12 番組スタッフ 記事URL

グローバルヘルス・カフェ、次回の放送は8月16日火曜日の17時00分~です!
テーマは「医療の国際展開」。

国際医療協力のエキスパート・明石医師がマスターを務める「グローバルヘルス・カフェ」。
今回は、お客様にシンクタンク・ソフィアバンク代表の藤沢久美さんを迎え、
多様化する国際支援の方法や、民間企業の海外進出とNCGMの活動について、
お話し合いいただきます。

【出演】
明石 秀親(国立国際医療研究センター/医師)
藤沢 久美(シンクタンク・ソフィアバンク代表)
藤沢久美さん


「グローバルヘルス・カフェ」は、毎月第3火曜日の17時00分~20分に放送しています。
PC・スマートフォンから全国どこからでもラジオNIKKEIがお聴きいただける「radiko.jp」からラジオNIKKEI第1を選んでお楽しみください。

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聴くradiko.jp(外部サイトへジャンプします)

放送後にはオンデマンド・ポッドキャストでも配信いたします。
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<Master's Memory更新中!!>

マスターが国際協力で渡り歩いた開発途上国の文化・習慣・風土を記したブログ「Master's Memory
リスナーの皆さんはもうご覧いただいてますでしょうか?

マスターが現地で見て、触れて、感じたそのままをお伝えする言わば「グローバルヘルス・カフェ番外編」として当番組ブログに好評連載中。
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第18回「国際医療協力とイノベーション」テキストデータ版(2016.6.21放送) [放送内容テキストデータ]

2016.06/28 番組スタッフ 記事URL

※音声はこちらからお聴きいただけます。
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聴く第18回「国際医療協力とイノベーション」(2016年6月21日放送分)


<出演>
マスター:明石 秀親(国立国際医療研究センター)
伊藤:伊藤 洋一(エコノミスト/常連客)

※ 番組では、みなさまからのご意見・ご感想を募集しております。
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デジタルは"壁崩し"の技術

マスター:いらっしゃいませ、グローバルヘルス・カフェへようこそ。コーヒーですね。

伊藤洋一:こんにちは。あら、先客がいらっしゃるんですね。はじめまして、エコノミストの伊藤洋一です。

マスター:伊藤さんは国際経済がご専門なんですよね。

伊藤:国際経済ですけれども、結局全てつながっているじゃないですか。政治も見ますし、社会も見ますし。最近はどうですかね、AIとかね。イ・セドルに囲碁でAIが勝ったじゃないですか。僕、ずっとAIの取材をしていて、IBMさんとかいろんなところにお伺いしていますけれども、それがみんな最初のターゲットとしている領域は医療だと、こう言うんですよね。つまり、AIというのは人工知能で、お医者さんの領域ってみんなセグメント化されていますよね。それを、AIを使って統合すると思わぬところから回答が出てくるっていう。世界は高齢化していますし、AIというのはそういうところから一般に普及しているのかいう感じがひとつ。それと、世界的に人口が減少傾向に入っていますよね。OECDの生産年齢人口も今年が頭打ちです。要するに、世界が成長に対する考え方を大きく変えてきている。そこらへんが私の関心項目ですかね。

マスター:なるほど。そうすると、経済そのものも国境が無い感じだし、それに対していろんなインターベンションというか、それもAIを中心に、ITとかいろいろあるんでしょうけれど。

伊藤:最初からデジタルが出てきた時に、これは壁崩しの技術だと僕は思ったんですね。つまり、壁崩しって何かというと、デジタルが普及する前の産業ってどんどん専門化していったわけじゃないですか。でも、デジタルっていうのは横串を通す技術なので、全ての情報が、今なんかクラウドでね、集合されて、その中でもまれてAIを通じて、何か問い合わせがあればAIが回答を出すみたいな状況になってきているので、これからの時代は、専門化よりむしろ統合化の、つまり隙間を埋める知識とかそういうものが非常に重要になってくると思っているんですね。

マスター:経済だけじゃなくて、それを突き崩す、もしかすると経済と医療とか、経済と保健とか、経済と何とかとかという話だけじゃなくて、そこの間の壁も崩れてきているかもしれないということなんですね。

■ BOPビジネスの考え方が製薬業界や支援体制の流れを変えている

伊藤:私が最近見たテレビ番組で、薬は誰のものかという番組をやっていたんですね。ものすごく資本主義が変わりつつある大きな変化だと思ったのは、たとえば製薬会社って先進国の豊かな層相手にしか薬を作らないじゃないですか。

マスター:これまではね。

伊藤:お金払う人はそこにしかいないわけだから。

マスター:開発にもかかるし。

伊藤:そうなんですよ。エイズとかそういう薬がなぜ普及に遅れたのかというならば、要するに作ろうともしなかった、世界の主要な製薬会社はね。でも、そういう流れが変わりつつあるというのは感じていて、でもどういう方向に行くのかなとずっと関心があるんですよね。

マスター:なるほどね。たぶん、薬を買えないというだけじゃなくて、オーファンドラッグというのですけど、買える層、ターゲット、患者さんがそんなに数がいない。たとえば風邪薬だったら世界中でいっぺんに売れちゃうけれど、(エイズなんかは)一部の人しかかからないので、結局開発コストがペイしない。したがって単価を高くせざるを得ない。というようなことも動いていましたね、確かに。

一方、やはり世界的に、今までの企業として利益を追求するという形だけじゃなくて、ご存じのように、社会貢献というのをまあどちらかというと会社の本業にしているという動きが出ていると思うんですよね。それが社会的企業とか、それはまあ企業のCSRが発展した形だと思うのですが。いずれにしろそういう企業側の変化、それはBOPビジネスもそうですけれど。BOPというのはですね、世界の人口をピラミッドとして考えると、一番トップにいるのは高所得者の人たち。次は中間。それで一番底辺の、年間所得が3,000ドル以下の低所得者層をBOPBase Of Pyramid)といっていますが、これを消費の市場として捉えて、それをビジネスに結び付けるという考え方なんです。その人たちの社会的課題を解決に向けて図りましょうと、そういったような動きそのものが全体としてBOPビジネスという考え方。そういうことが起こっている。それの背景には世界的な経済の発展などや、グローバル化があります。それだけじゃなくて、たとえば交通、移動の容易性。たとえば途上国といえども、お金持ちの人は昔はその国の中で医療を得ればよかったけれども、隣の国に行ってしまえば、良い医療が得られますということがまあ普通にできるようになってきている。

さらに援助側では、今までは国対国の援助、あるいは国連機関を中心にと行っていたのが、NGOが出てきますよね。さらに今それがアライアンスという形で、企業も入るし、国連機関も入るし、国対国のバイというのですけれども、そういった機関も入るようなアライアンスができ、さらにそれがクラウドファンディングなどの形で、個人個人が別の人たちのいいこと、それは企業か中小企業かもしれないし、そういうことに直接ファンドできるようになってきている。

ということを考えると、要するに今までの大きな企業が全てを動かすという時代だけじゃなく、要するに個人の力で個人のそういう活動をエンカレッジする。そういうことによって新しい、たとえば先ほどの薬の開発かもしれないし、薬の開発だけじゃなくてその仕組みの開発なんかにもつながってきているんじゃないかなと思うんですよね。

■ 銀行がお金を貸すことの意味

伊藤:金融の世界では、薬とよく似ていて、大銀行が世界を支配しているみたいに言われているんですけれど、バングラデシュではね、グラミン銀行というのがあって。本当に字も読めないバングラデシュの女性たちに針とかそういうものを買うお金を融資して、それによって彼女たちが何らかの生産ができるようになって逆に返せるという、小さいところから始めて産業を興していくみたいな努力をしているんですよ。大企業のなかでも消費者の目としてはフェアトレードなんかが広がってコーヒーの産業が抱える深刻な問題とかあって、要するに上から目線ではなくて下からも見ていこうというところがあるわけじゃないですか。医療ではそういう動きというのはないですか。

マスター:いや、ありますね。実際にたとえばグラミンの場合ですね、ユヌス先生、モハメド・ユヌスさんというのはノーベル平和賞を取った方ですけれど、あの方ともお話したことがあるんですけれど、講演のなかで言っていたのは、「銀行というのは元々お金の無い人たちに貸すところです」と。ところが......

伊藤:今どうなってるんだ。

マスター:そうそう、やれ担保はどうなんだ、やれ何とかはどうなんだという。それでユヌスさんはチッタゴン大学の経済学の教授だと思うんです。

伊藤:そうです。

マスター:そういうなかでお金の無い人、彼らは別に巨額のお金が必要なわけじゃないんですよね。ユヌスさんは最初お金を貸してくれと言われて、確か20ドルくらいお貸しした。返ってくるのかどうかわからないなと思っていたら返ってきたと。それで借りた人はそれを元手に稼業というか起こした。小さなことで変えられる、というのをある種組織化して、ほかのところに移植したと。グラミンは銀行だけじゃなくて、ヘルスとかいくつかやってるんですよね。モバイルフォンとか。ヘルスのトップと話しても、地域の人たちが普段(医者に)かかれない、要するに大都会に行かなければならないといったことも解消するように、少額でも(医者に)かかれるというようなことをやっていますよね。

だからお金を貸すってかなり経済的に見えやすい話ですけれども、それだけじゃなくて、保健医療サービスへのアクセスを改善するような動きも出てきていますし、実際にそれを医療サービスとつなげるというようなことを彼らはやっている。日本でいうとたとえばワンコインサービスみたいなものを始めているNGOみたいなのもありますけれど、そういったような動きはありますよね。

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第18回「国際医療協力とイノベーション」放送時間のご案内 [お知らせ]

2016.06/17 番組スタッフ 記事URL

グローバルヘルス・カフェ、次回の放送は6月21日火曜日の17時00分~です!
テーマは「国際医療協力とイノベーション」。

国際医療協力のエキスパート・明石医師がマスターを務める「グローバルヘルス・カフェ」。
今回は、お客様にエコノミストの伊藤洋一さんを迎え、
世界を変える可能性を秘める、新しいテクノロジーや考え方について、
医療と経済、それぞれの視点からお話し合いいただきます。

【出演】
明石 秀親(国立国際医療研究センター/医師)
伊藤 洋一(エコノミスト)



「グローバルヘルス・カフェ」は、毎月第3火曜日の17時00分~20分に放送しています。
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第17回「ベトナムの地域医療連携─顔が見える関係づくり」テキストデータ版(2016.2.16放送) [放送内容テキストデータ]

2016.02/25 番組スタッフ 記事URL

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聴く第17回「ベトナムの地域医療連携─顔が見える関係づくり」(2016年2月16日放送分)


<出演>
マスター:明石 秀親(国立国際医療研究センター)
土井:土井 正彦(国立国際医療研究センター/看護師)
ヨーコ:香月 よう子(フリーアナウンサー)

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■ベトナムでも大病院に患者が集中する

マスター:グローバルヘルス・カフェ、マスターの明石です。今日は、常連客のヨーコさんと、看護師の土井さんがあちらで話しています。早速聞いてみましょう。

ヨーコ:土井さんは、ベトナムに行っていたんですよね?
土井:ベトナムの北部にあるハノイという都市にいました。実際に働いていたのは、ハノイ市より北西部に80kmぐらい行った、ホアビン省の省病院と、そのホアビン省の保健局です。
ヨーコ:役所みたいなところで。
土井:そうですね。お役所です。
ヨーコ:今、マスター。土井さんがショウ病院って言ったんですけれども。
マスター:日本で言うとまぁ県に当たるのが省なんですけれども。
ヨーコ:省、小さいショウじゃなくて。
マスター:じゃなくてね。
ヨーコ:何々省のショウですね。
マスター:そうですね。まぁそこより下に郡病院とか、さらに下にコミューンのヘルスセンターなどがありますが、一方その省病院の上には、ハノイとかホーチミン市にある大きな病院、大病院があります。
ヨーコ:その病院は土井さん、どんな状況なんですか?
土井:ハノイ市の病院は、ハノイの人だけじゃなく、ホアビン省であるとか、そのほかの周辺省から患者さんが集まってきて、とても患者さんが多い病院です。一方、そのホアビン省の病院は、それほど患者さんが多くはなくて、ひっそりしている。
ベッドも空いているところがあったりするのが、この省病院の現状です。
そういう現状なので、まず省の病院の能力を向上する、強化するということで、研修できるような体制を作ったり、郡病院から患者さんを搬送する際に、適切に搬送できているのか、何か問題がないのかといった搬送のシステムを作ったのが主立った活動です。
ヨーコ:なるほど。大都市の病院ではないところの技術を上げるということと、それからその連携を強めていくというか、つながりを強めていくというか。まぁ、地域医療連携みたいなイメージになるんでしょうか。
土井:そうですね。ベトナムというのはシステムの国なので、地域医療連携というのはそもそもあるんですけれども、それがうまくいっていないところがありました。そこで、システムを動かすだけじゃなく、地域とうまく結びつけて情報共有をして、進めていくということをしました。
ヨーコ:なるほど。地域医療連携という言葉は日本でもよく聞きますが、マスターこれはすごく大事なことなんですか?
マスター:そうですね。特に下位病院といって、たとえば郡病院やクリニックなどでは、自分たちだけで全てできるわけではない。この人は手術が必要だなとか、そういう人たちをどこに送るのだろうとか、さらにもっと専門的な心臓などの病気に対応するときに、専門病院なり、上位の病院に送るということをしなければいけない。
ヨーコ:なるほど。逆に、周りの病院でなんとかなる患者さんが大きな病院に行ってしまうと、それも難しい問題になる、ということですよね。
マスター:そうですね。日本でも大病院に患者さんが集中しがちというのはあると思います。大病院じゃなくても診られる患者さんが大病院にどんどん集まってしまうと、逆に言えば大病院じゃないと診られない患者さんが後回しになってしまったり、時間がかかってしまったり、というようなことが起こります。ですからそういう意味でも適切なレベルで、適切な患者さんが診られるということが大事だと思います。

■ 「場を作る」ことからスタート

ヨーコ:土井さん、実際現地に着くと早速いろんな壁が見えてくるということなんですが。
土井:ベトナムというのは社会主義の国です。制度であるとか、規則であるとか、ヒエラルキーがとてもしっかりした国なんですね。そういうなかで、まずはその地域医療連携をする部署を病院に作って、そしてそこで働く人たちと一緒になって、連携をしていくという仕組みを考えました。
ヨーコ:ヒエラルキーとか制度がきちんとできているというのはすごく良いことのように聞こえますが。
土井:たとえばですね。会議に出ると、管理者、病院の院長先生や保健局の局長さんといった方が、がしっとその場を治めてしまっているので、会議の雰囲気が固まってしまう。だから自分の意見であるとか、状況をもっと説明してもらいたくても、それが出ない雰囲気になるということがありました。
ヨーコ:その地域医療連携指導室でしたっけ?これはどういったもので、どういうことをされていった
んでしょうか。
土井:その部署ではまず「場を作る」っていうことをやっています。いろんな患者さんの状況、病院の情報などをシェアする「場」です。下の病院から上位の病院に患者さんが搬送される際の情報を集めて分析し、患者さんが適切に送られてきているのか、医師が適切に診断したのかといったことをしっかりと見て、足りなければそれを研修やセミナーに生かすということを、その部署が企画して実施する。
ヨーコ:なるほど。要するにその、救急で搬送されてきたような実際の事例をよく検討したうえで、お医者さんがちゃんと診断できていたかっていう技術的なことなのかっていうことをまず調べるわけですよね。
土井:そうですね。

■ 現地のリーダーのモチベーションを上げる努力

ヨーコ:その「場」を作る際にどういったことに注意なさいましたか?
土井:我々はそこにずっといるわけではなくて、途中でプロジェクトが終わったら出ていってしまう、そこを去ってしまいます。ですので、我々が全部やるのではなく、ベトナム人である彼らのほうにイニシアチブを取ってもらって、そして進めていくような場や機会を作っていました。
ヨーコ:なるほど。じゃあ土井さんが陣頭指揮に立って「あれやれ、これやれ」ということではなかった?
土井:そうですね。
ヨーコ:その役目を担ったのはどういった?
土井:先ほどお話した地域医療指導室の長になる方、ベトナム人のその人物を中心に場を作り、研修を企画しました。
ヨーコ:その長の方はどんな方だったのでしょう?
土井:その方は、元々は歯科医でした。彼はなかなかその部署をうまく回していけなかったのですが、場を作る際、研修をやる際に準備から関わってもらったりして、なるだけ彼のモチベーションを上げるようなことをしました。
ヨーコ:モチベーションは高い人だったんですか?
土井:残念ながらその方はあまりモチベーションが高くなく、最初はプレゼンテーションなどもあまりうまくできなかったのですが、繰り返しやっていくうちに徐々にモチベーションも上がっていって、プレゼンもだんだんうまくなっていきました。
ヨーコ:彼が変わったな、と思った瞬間とかあります?
土井:そうですね。先ほどお話した、プレゼンテーションを何度も何度もやっているうちに、途中で堂々とやるようになっていたんですね。「あれ、どうしちゃったんだろう?」と思いました。
やはり彼自身が準備をしっかりやり、人の前で話をする際、特に会議では彼よりもずっと役職の高い方、管理者がたくさん揃っている中で、自信を持ってやる。そのことで彼のやる気が引き出されたんだなというのはありました。

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第17回「ベトナムの地域医療連携―顔の見える関係づくり」放送時間のご案内 [お知らせ]

2016.02/12 番組スタッフ 記事URL

グローバルヘルス・カフェ、次回は2月16日火曜日の17時10分より放送です!
今回のテーマは「ベトナムの地域医療連携―顔の見える関係づくり」。

ベトナムの大都市の病院には、日々大勢の患者さんが来院します。
その一方、地方の病院やクリニックは閑散としていることも。
看護師の土井さんは、地方の病院のレベルを上げ、大病院との連携を図るため、
省病院内にベトナム人を室長とした地域医療連携室を立ち上げます。

【出演】
明石 秀親(国立国際医療研究センター/医師)
土井 正彦(国立国際医療研究センター/看護師)
香月 よう子(フリーアナウンサー)



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パーソナリティ

明石 秀親
あかし ひでちか

医師/NCGM 国立国際医療研究センター国際医療協力局

香月 よう子
かつき ようこ

番組パーソナリティ、ナレーターの他、中心市街地活性化、町づくり等、省庁主催のシンポジウムのコーディネーター、講演を行う。一方で、「きてきて先生プロジェクト」の代表として、地域を担う人材の教育活動を展開。経済産業省キャリア教育コーディネーター育成評価事業中核コーディネート、東京都生涯学習審議委員など各種委員もつとめ、特に生涯審では、地域人材を生かした学校支援の仕組みづくりにかかわり実践も行う。

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