番組紹介

ラジオNIKKEI第1 毎月第3火曜日 17:00~17:20
協力:NCGM 国立国際医療研究センター 国際医療協力局

途上国へ赴き、現地の医療システム全体の改善に貢献する「グローバルヘルス」。
その活動経験を持つマスターと、カフェの常連客が、世界の健康問題について語り合います。
マスターが淹れるめずらしいコーヒーも登場します。
出演は、国立国際医療研究センターの明石秀親。

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第18回「国際医療協力とイノベーション」テキストデータ版(2016.6.21放送) [放送内容テキストデータ]

2016.06/28 番組スタッフ 記事URL

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聴く第18回「国際医療協力とイノベーション」(2016年6月21日放送分)


<出演>
マスター:明石 秀親(国立国際医療研究センター)
伊藤:伊藤 洋一(エコノミスト/常連客)

※ 番組では、みなさまからのご意見・ご感想を募集しております。
※ 番組宛メール送信フォームより、ぜひご意見をお寄せください。
※ お寄せいただいた内容は、番組内でご紹介させていただく場合がございます。

デジタルは"壁崩し"の技術

マスター:いらっしゃいませ、グローバルヘルス・カフェへようこそ。コーヒーですね。

伊藤洋一:こんにちは。あら、先客がいらっしゃるんですね。はじめまして、エコノミストの伊藤洋一です。

マスター:伊藤さんは国際経済がご専門なんですよね。

伊藤:国際経済ですけれども、結局全てつながっているじゃないですか。政治も見ますし、社会も見ますし。最近はどうですかね、AIとかね。イ・セドルに囲碁でAIが勝ったじゃないですか。僕、ずっとAIの取材をしていて、IBMさんとかいろんなところにお伺いしていますけれども、それがみんな最初のターゲットとしている領域は医療だと、こう言うんですよね。つまり、AIというのは人工知能で、お医者さんの領域ってみんなセグメント化されていますよね。それを、AIを使って統合すると思わぬところから回答が出てくるっていう。世界は高齢化していますし、AIというのはそういうところから一般に普及しているのかいう感じがひとつ。それと、世界的に人口が減少傾向に入っていますよね。OECDの生産年齢人口も今年が頭打ちです。要するに、世界が成長に対する考え方を大きく変えてきている。そこらへんが私の関心項目ですかね。

マスター:なるほど。そうすると、経済そのものも国境が無い感じだし、それに対していろんなインターベンションというか、それもAIを中心に、ITとかいろいろあるんでしょうけれど。

伊藤:最初からデジタルが出てきた時に、これは壁崩しの技術だと僕は思ったんですね。つまり、壁崩しって何かというと、デジタルが普及する前の産業ってどんどん専門化していったわけじゃないですか。でも、デジタルっていうのは横串を通す技術なので、全ての情報が、今なんかクラウドでね、集合されて、その中でもまれてAIを通じて、何か問い合わせがあればAIが回答を出すみたいな状況になってきているので、これからの時代は、専門化よりむしろ統合化の、つまり隙間を埋める知識とかそういうものが非常に重要になってくると思っているんですね。

マスター:経済だけじゃなくて、それを突き崩す、もしかすると経済と医療とか、経済と保健とか、経済と何とかとかという話だけじゃなくて、そこの間の壁も崩れてきているかもしれないということなんですね。

■ BOPビジネスの考え方が製薬業界や支援体制の流れを変えている

伊藤:私が最近見たテレビ番組で、薬は誰のものかという番組をやっていたんですね。ものすごく資本主義が変わりつつある大きな変化だと思ったのは、たとえば製薬会社って先進国の豊かな層相手にしか薬を作らないじゃないですか。

マスター:これまではね。

伊藤:お金払う人はそこにしかいないわけだから。

マスター:開発にもかかるし。

伊藤:そうなんですよ。エイズとかそういう薬がなぜ普及に遅れたのかというならば、要するに作ろうともしなかった、世界の主要な製薬会社はね。でも、そういう流れが変わりつつあるというのは感じていて、でもどういう方向に行くのかなとずっと関心があるんですよね。

マスター:なるほどね。たぶん、薬を買えないというだけじゃなくて、オーファンドラッグというのですけど、買える層、ターゲット、患者さんがそんなに数がいない。たとえば風邪薬だったら世界中でいっぺんに売れちゃうけれど、(エイズなんかは)一部の人しかかからないので、結局開発コストがペイしない。したがって単価を高くせざるを得ない。というようなことも動いていましたね、確かに。

一方、やはり世界的に、今までの企業として利益を追求するという形だけじゃなくて、ご存じのように、社会貢献というのをまあどちらかというと会社の本業にしているという動きが出ていると思うんですよね。それが社会的企業とか、それはまあ企業のCSRが発展した形だと思うのですが。いずれにしろそういう企業側の変化、それはBOPビジネスもそうですけれど。BOPというのはですね、世界の人口をピラミッドとして考えると、一番トップにいるのは高所得者の人たち。次は中間。それで一番底辺の、年間所得が3,000ドル以下の低所得者層をBOPBase Of Pyramid)といっていますが、これを消費の市場として捉えて、それをビジネスに結び付けるという考え方なんです。その人たちの社会的課題を解決に向けて図りましょうと、そういったような動きそのものが全体としてBOPビジネスという考え方。そういうことが起こっている。それの背景には世界的な経済の発展などや、グローバル化があります。それだけじゃなくて、たとえば交通、移動の容易性。たとえば途上国といえども、お金持ちの人は昔はその国の中で医療を得ればよかったけれども、隣の国に行ってしまえば、良い医療が得られますということがまあ普通にできるようになってきている。

さらに援助側では、今までは国対国の援助、あるいは国連機関を中心にと行っていたのが、NGOが出てきますよね。さらに今それがアライアンスという形で、企業も入るし、国連機関も入るし、国対国のバイというのですけれども、そういった機関も入るようなアライアンスができ、さらにそれがクラウドファンディングなどの形で、個人個人が別の人たちのいいこと、それは企業か中小企業かもしれないし、そういうことに直接ファンドできるようになってきている。

ということを考えると、要するに今までの大きな企業が全てを動かすという時代だけじゃなく、要するに個人の力で個人のそういう活動をエンカレッジする。そういうことによって新しい、たとえば先ほどの薬の開発かもしれないし、薬の開発だけじゃなくてその仕組みの開発なんかにもつながってきているんじゃないかなと思うんですよね。

■ 銀行がお金を貸すことの意味

伊藤:金融の世界では、薬とよく似ていて、大銀行が世界を支配しているみたいに言われているんですけれど、バングラデシュではね、グラミン銀行というのがあって。本当に字も読めないバングラデシュの女性たちに針とかそういうものを買うお金を融資して、それによって彼女たちが何らかの生産ができるようになって逆に返せるという、小さいところから始めて産業を興していくみたいな努力をしているんですよ。大企業のなかでも消費者の目としてはフェアトレードなんかが広がってコーヒーの産業が抱える深刻な問題とかあって、要するに上から目線ではなくて下からも見ていこうというところがあるわけじゃないですか。医療ではそういう動きというのはないですか。

マスター:いや、ありますね。実際にたとえばグラミンの場合ですね、ユヌス先生、モハメド・ユヌスさんというのはノーベル平和賞を取った方ですけれど、あの方ともお話したことがあるんですけれど、講演のなかで言っていたのは、「銀行というのは元々お金の無い人たちに貸すところです」と。ところが......

伊藤:今どうなってるんだ。

マスター:そうそう、やれ担保はどうなんだ、やれ何とかはどうなんだという。それでユヌスさんはチッタゴン大学の経済学の教授だと思うんです。

伊藤:そうです。

マスター:そういうなかでお金の無い人、彼らは別に巨額のお金が必要なわけじゃないんですよね。ユヌスさんは最初お金を貸してくれと言われて、確か20ドルくらいお貸しした。返ってくるのかどうかわからないなと思っていたら返ってきたと。それで借りた人はそれを元手に稼業というか起こした。小さなことで変えられる、というのをある種組織化して、ほかのところに移植したと。グラミンは銀行だけじゃなくて、ヘルスとかいくつかやってるんですよね。モバイルフォンとか。ヘルスのトップと話しても、地域の人たちが普段(医者に)かかれない、要するに大都会に行かなければならないといったことも解消するように、少額でも(医者に)かかれるというようなことをやっていますよね。

だからお金を貸すってかなり経済的に見えやすい話ですけれども、それだけじゃなくて、保健医療サービスへのアクセスを改善するような動きも出てきていますし、実際にそれを医療サービスとつなげるというようなことを彼らはやっている。日本でいうとたとえばワンコインサービスみたいなものを始めているNGOみたいなのもありますけれど、そういったような動きはありますよね。

■ 途上国でも予防医療が広がっている

伊藤:なるどね。それからもう1つ。僕ね結構ランニングが好きなんですよ。明治公園、北の丸公園、いつも6時半に行くと大勢の若い人も含めてラジオ体操しているんですよね。

マスター:なるほど。

伊藤:おお、これはすごいな。そう思っていたら、旧エルピーダが何歩歩いたかによって、ボーナスやるよと。一番歩いたら2万円やると、増やすというんですね。それで医療って病気にかかった人を診るのが医療だと思っている人が多いんでしょうけれども、かかる前に何かしようというムーブメントが出てきて、それはとっても重要なことだと思うんですよ。つまり、歩けるうちは歩く。動けるうちは動く。食べれるうちは食べるという基本的なことが必要で、歩け歩け運動でもないけれどね、僕が世界各国行っても、日本は朝歩いている人が一番多い国です。それはものすごく結構なことだと思っていて、そういうベースのところから医療というのを考えられないかなと。そういうことを含めていくと、結構成長性がある分野かなといつも思っているんですよ。

マスター:そうですね。そう思います。途上国であればあるほど、予防という概念がなかなか定着しにくいというか、要するに自分が健康と感じているときは、別にお金を払ってまでどこかに行こうとは思わないわけですよね。だから、そういうときに予防という概念はそのことにお金を払ってもいいという一歩進んだ形だと思うんですよ。だから、なかなか途上国にそういう概念を広げるのは難しかったんですが。今までは途上国で亡くなるというのは感染症とか母子の死亡が多かったんですけれども、それが下がり切らない前に、生活習慣病系がやはりもう出てきているんですよ。

伊藤:なるほどね。

マスター:糖尿病であれ、高血圧であれ。なってしまってから治療すればいいのかというと、それはかなり高額なお金がかかる。ですからそれに対して、たとえばインシュアランスの保険制度を入れるとすると、かなり経済的な負荷がかかってしまう、その制度そのものに。それよりは予防ということにお金をかけるというか、そのことに目を向けていかないと。おっしゃるように、(病気を)未然に防ぐことによって、そんなにコストをかけなくても、健康であって、健康寿命が伸びればいいわけでしょ。だから、たとえばモバイルフォンを使って、自分の、先ほどの運動もそうですし、あるいはそのことに対して健康指導をするとか、そういったような試みなんかも出てきている。今までそういうのは逆にいえばテクノロジーとしてもできなかった。それが今そうじゃなくなって、ウェアラブルでそういうのがどんどんできるようになってきている。だから、そのことは途上国でも可能は可能なわけですよ。そうするとそれをどうやって買いやすい値段で提供するかという部分と、それをシステムとしてどうやって維持、提供するか、サービスを提供するかという、そういった考え方は必要になってくると思いますね。

■ AIが医療を変える

伊藤:なるほどね。ウェアラブルの話が出たので、今ちょっと腕を出しているんですけれども、これアップルウォッチなんですね。それで、これは私の運動量を毎日きっちり計ってくれていて、これは私が持っているiPhoneとも常時情報交換してるんですよ。たとえば、これがAIとつながっていつも分析してくれるなら、私が今どういう状態にあるのかという、脈拍も全部計れるんですけれどね、これはやはり革新になりますよね。

マスター:と思いますね。

伊藤:要するに前兆がつかめるという意味で。最初にAIの話をしたのは、お医者さんのセグメントってわかり過ぎていて、最近よく聞くのはいい先生に当たったんで助かったとかね、がんになった時にね。それはないだろうと思うわけですよね。いい先生がアメリカにいて、いい先生がバングラデシュにいなかったら、バングラデシュの人はたとえば特殊ながんになったら治らないのかという話になりますよね。でもだから、アメリカにいるいい先生の知識が人工知能の中に入って、バングラデシュでも何かを導き出せたのなら、それはいいことだと思うので、医療の世界もテクノロジーによってめちゃめちゃ変わるだろうと。

マスター:そうでしょうね。

伊藤:それで僕の腕にもウェアラブルがあるわけだから。ただ、まだこれ4万円と、途上国の人には高いわけですよ。これどうするのかという話も含めて、お伺いしていきたいなと思うんですけどね。

マスター:技術はね、そのウェアラブルもそうだし、今ドローンとか出てて、ドローンで実際に、

伊藤:薬の配送ね。

マスター:そうです。あと輸血とか実際にやりだしている。アフリカでもやっているといいますし、テクノロジーそのものも、たとえばゲーミフィケーションみたいなね、ああいう要するにソフト系でどうアプローチするか。今、ある種アイデアしだいで健康に対して介入できるし、いいツールなりサービスを提供できるし、そのことを可能にするテクノロジーなり、新しい考え方がどんどん出てきているのかなと。そういう時代なのかなと思いますけれども。

伊藤:これからどんどん具体的ないろいろ教えていただきたいと思います。今日、おいしいコーヒーでしたね。

マスター:ありがとうございます。またぜひいらっしゃってください。

伊藤:マスターが入れたんですか。

マスター:もちろんですよ。

伊藤:ははは。僕はキリマンジェロが大好きなんですよ。

マスター:ああ!そうなんですか!

第18回「国際医療協力とイノベーション」放送時間のご案内 [お知らせ]

2016.06/17 番組スタッフ 記事URL

グローバルヘルス・カフェ、次回の放送は6月21日火曜日の17時00分~です!
テーマは「国際医療協力とイノベーション」。

国際医療協力のエキスパート・明石医師がマスターを務める「グローバルヘルス・カフェ」。
今回は、お客様にエコノミストの伊藤洋一さんを迎え、
世界を変える可能性を秘める、新しいテクノロジーや考え方について、
医療と経済、それぞれの視点からお話し合いいただきます。

【出演】
明石 秀親(国立国際医療研究センター/医師)
伊藤 洋一(エコノミスト)



「グローバルヘルス・カフェ」は、毎月第3火曜日の17時00分~20分に放送しています。
PC・スマートフォンから全国どこからでもラジオNIKKEIがお聴きいただける「radiko.jp」からラジオNIKKEI第1を選んでお楽しみください。

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マスターが現地で見て、触れて、感じたそのままをお伝えする言わば「グローバルヘルス・カフェ番外編」として当番組ブログに好評連載中。
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第17回「ベトナムの地域医療連携─顔が見える関係づくり」テキストデータ版(2016.2.16放送) [放送内容テキストデータ]

2016.02/25 番組スタッフ 記事URL

※音声はこちらからお聴きいただけます。
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聴く第17回「ベトナムの地域医療連携─顔が見える関係づくり」(2016年2月16日放送分)


<出演>
マスター:明石 秀親(国立国際医療研究センター)
土井:土井 正彦(国立国際医療研究センター/看護師)
ヨーコ:香月 よう子(フリーアナウンサー)

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■ベトナムでも大病院に患者が集中する

マスター:グローバルヘルス・カフェ、マスターの明石です。今日は、常連客のヨーコさんと、看護師の土井さんがあちらで話しています。早速聞いてみましょう。

ヨーコ:土井さんは、ベトナムに行っていたんですよね?
土井:ベトナムの北部にあるハノイという都市にいました。実際に働いていたのは、ハノイ市より北西部に80kmぐらい行った、ホアビン省の省病院と、そのホアビン省の保健局です。
ヨーコ:役所みたいなところで。
土井:そうですね。お役所です。
ヨーコ:今、マスター。土井さんがショウ病院って言ったんですけれども。
マスター:日本で言うとまぁ県に当たるのが省なんですけれども。
ヨーコ:省、小さいショウじゃなくて。
マスター:じゃなくてね。
ヨーコ:何々省のショウですね。
マスター:そうですね。まぁそこより下に郡病院とか、さらに下にコミューンのヘルスセンターなどがありますが、一方その省病院の上には、ハノイとかホーチミン市にある大きな病院、大病院があります。
ヨーコ:その病院は土井さん、どんな状況なんですか?
土井:ハノイ市の病院は、ハノイの人だけじゃなく、ホアビン省であるとか、そのほかの周辺省から患者さんが集まってきて、とても患者さんが多い病院です。一方、そのホアビン省の病院は、それほど患者さんが多くはなくて、ひっそりしている。
ベッドも空いているところがあったりするのが、この省病院の現状です。
そういう現状なので、まず省の病院の能力を向上する、強化するということで、研修できるような体制を作ったり、郡病院から患者さんを搬送する際に、適切に搬送できているのか、何か問題がないのかといった搬送のシステムを作ったのが主立った活動です。
ヨーコ:なるほど。大都市の病院ではないところの技術を上げるということと、それからその連携を強めていくというか、つながりを強めていくというか。まぁ、地域医療連携みたいなイメージになるんでしょうか。
土井:そうですね。ベトナムというのはシステムの国なので、地域医療連携というのはそもそもあるんですけれども、それがうまくいっていないところがありました。そこで、システムを動かすだけじゃなく、地域とうまく結びつけて情報共有をして、進めていくということをしました。
ヨーコ:なるほど。地域医療連携という言葉は日本でもよく聞きますが、マスターこれはすごく大事なことなんですか?
マスター:そうですね。特に下位病院といって、たとえば郡病院やクリニックなどでは、自分たちだけで全てできるわけではない。この人は手術が必要だなとか、そういう人たちをどこに送るのだろうとか、さらにもっと専門的な心臓などの病気に対応するときに、専門病院なり、上位の病院に送るということをしなければいけない。
ヨーコ:なるほど。逆に、周りの病院でなんとかなる患者さんが大きな病院に行ってしまうと、それも難しい問題になる、ということですよね。
マスター:そうですね。日本でも大病院に患者さんが集中しがちというのはあると思います。大病院じゃなくても診られる患者さんが大病院にどんどん集まってしまうと、逆に言えば大病院じゃないと診られない患者さんが後回しになってしまったり、時間がかかってしまったり、というようなことが起こります。ですからそういう意味でも適切なレベルで、適切な患者さんが診られるということが大事だと思います。

■ 「場を作る」ことからスタート

ヨーコ:土井さん、実際現地に着くと早速いろんな壁が見えてくるということなんですが。
土井:ベトナムというのは社会主義の国です。制度であるとか、規則であるとか、ヒエラルキーがとてもしっかりした国なんですね。そういうなかで、まずはその地域医療連携をする部署を病院に作って、そしてそこで働く人たちと一緒になって、連携をしていくという仕組みを考えました。
ヨーコ:ヒエラルキーとか制度がきちんとできているというのはすごく良いことのように聞こえますが。
土井:たとえばですね。会議に出ると、管理者、病院の院長先生や保健局の局長さんといった方が、がしっとその場を治めてしまっているので、会議の雰囲気が固まってしまう。だから自分の意見であるとか、状況をもっと説明してもらいたくても、それが出ない雰囲気になるということがありました。
ヨーコ:その地域医療連携指導室でしたっけ?これはどういったもので、どういうことをされていった
んでしょうか。
土井:その部署ではまず「場を作る」っていうことをやっています。いろんな患者さんの状況、病院の情報などをシェアする「場」です。下の病院から上位の病院に患者さんが搬送される際の情報を集めて分析し、患者さんが適切に送られてきているのか、医師が適切に診断したのかといったことをしっかりと見て、足りなければそれを研修やセミナーに生かすということを、その部署が企画して実施する。
ヨーコ:なるほど。要するにその、救急で搬送されてきたような実際の事例をよく検討したうえで、お医者さんがちゃんと診断できていたかっていう技術的なことなのかっていうことをまず調べるわけですよね。
土井:そうですね。

■ 現地のリーダーのモチベーションを上げる努力

ヨーコ:その「場」を作る際にどういったことに注意なさいましたか?
土井:我々はそこにずっといるわけではなくて、途中でプロジェクトが終わったら出ていってしまう、そこを去ってしまいます。ですので、我々が全部やるのではなく、ベトナム人である彼らのほうにイニシアチブを取ってもらって、そして進めていくような場や機会を作っていました。
ヨーコ:なるほど。じゃあ土井さんが陣頭指揮に立って「あれやれ、これやれ」ということではなかった?
土井:そうですね。
ヨーコ:その役目を担ったのはどういった?
土井:先ほどお話した地域医療指導室の長になる方、ベトナム人のその人物を中心に場を作り、研修を企画しました。
ヨーコ:その長の方はどんな方だったのでしょう?
土井:その方は、元々は歯科医でした。彼はなかなかその部署をうまく回していけなかったのですが、場を作る際、研修をやる際に準備から関わってもらったりして、なるだけ彼のモチベーションを上げるようなことをしました。
ヨーコ:モチベーションは高い人だったんですか?
土井:残念ながらその方はあまりモチベーションが高くなく、最初はプレゼンテーションなどもあまりうまくできなかったのですが、繰り返しやっていくうちに徐々にモチベーションも上がっていって、プレゼンもだんだんうまくなっていきました。
ヨーコ:彼が変わったな、と思った瞬間とかあります?
土井:そうですね。先ほどお話した、プレゼンテーションを何度も何度もやっているうちに、途中で堂々とやるようになっていたんですね。「あれ、どうしちゃったんだろう?」と思いました。
やはり彼自身が準備をしっかりやり、人の前で話をする際、特に会議では彼よりもずっと役職の高い方、管理者がたくさん揃っている中で、自信を持ってやる。そのことで彼のやる気が引き出されたんだなというのはありました。

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第17回「ベトナムの地域医療連携―顔の見える関係づくり」放送時間のご案内 [お知らせ]

2016.02/12 番組スタッフ 記事URL

グローバルヘルス・カフェ、次回は2月16日火曜日の17時10分より放送です!
今回のテーマは「ベトナムの地域医療連携―顔の見える関係づくり」。

ベトナムの大都市の病院には、日々大勢の患者さんが来院します。
その一方、地方の病院やクリニックは閑散としていることも。
看護師の土井さんは、地方の病院のレベルを上げ、大病院との連携を図るため、
省病院内にベトナム人を室長とした地域医療連携室を立ち上げます。

【出演】
明石 秀親(国立国際医療研究センター/医師)
土井 正彦(国立国際医療研究センター/看護師)
香月 よう子(フリーアナウンサー)



「グローバルヘルス・カフェ」は、毎月第3火曜日の17時10分~25分に放送しています。
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第16回「未来の看護に向かって」テキストデータ版(2015.12.15放送) [放送内容テキストデータ]

2016.01/04 番組スタッフ 記事URL

※音声はこちらからお聴きいただけます。
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聴く第16回「未来の看護に向かって」(2015年12月15日放送分)


<出演>
マスター:明石 秀親(国立国際医療研究センター)
メグミ:五十嵐 恵(国立国際医療研究センター/看護師)
ヨーコ:香月 よう子(フリーアナウンサー)


■ カンボジアで看護学を学ぶ人を増やす活動

ヨーコ:お元気ですか、グローバルヘルス・カフェ、香月よう子です。国際医療協力にかかわる人たちが通うカフェってちょっと変わってませんか。ここのマスターはとっても面白いので、わたし気に入って通っています。それではさっそく、カフェに入ってみましょう。

マスター:グローバルヘルス・カフェ、マスターの明石です。あ、あそこにいるのはメグミさんだ。国際協力に携わりたくて看護を勉強して、今、カンボジアとか途上国に行って頑張っているんです。
ヨーコ:マスター、何ぶつぶつ言ってるの?
マスター:あ、ヨーコさん、こんにちは。
ヨーコ:こんにちは。
マスター:メグミさんはカンボジアで看護学を学ぶ人を増やして、未来の看護師さんを増やそうということに頑張っている若手なんだ。
ヨーコ:へえ、看護学というのがあるんですね。
マスター:そう、看護学。看護師さんって、どうしても何かね病院の現場で仕事をするというところがよく見られちゃうんだけども、実は医療のなかでたいへん重要な役割を果たしてて、そういう意味で看護をもっと高めましょうということで看護学の大学とか大学院がどんどん出てきてます。カンボジアはね、ちょっと前までは看護学の大学ってなかったんです。それがまあ最近出てきたということですね。

■ カンボジアの看護師と勉強会を開いた

ヨーコ:メグミさん、こんにちは。
メグミ:こんにちは。
ヨーコ:メグミさんは長くカンボジアに行ってたんですか?
メグミ:いえ、短期で行っていました。1回目は1カ月、カンボジアの国立病院で働く看護師の支援に行ってきました。2回目は2カ月間、将来カンボジアの看護を担うリーダー育成の支援に行ってきました。
ヨーコ:じゃあ1回目のことからちょっと聞いていきたいなと思うのですが、実際のそのカンボジアの看護師さんってどんな感じだったんですか?
メグミ:私が働いてきたカンボジアの国立病院というのは、小さく生まれたり、あとは少し元気がなくて様子を見なければいけない、病気を持った赤ちゃんたちが入院してくる病棟だったんですが、生まれてくる赤ちゃんの数もとても多くて、入院する赤ちゃんも多いので看護師さんだけでは十分にケアをすることができなくて、家族と一緒に看護を提供しているという状況です。
ヨーコ:なるほど。日本とはだいぶ違うと思うんですが、そこでの看護とかケアというんですか、そういったものというのはどんなことをやられていたんでしょうか?
メグミ:看護師の仕事はたくさんあるんですけれど、やはり熱を測ったり、脈を測ったり、血圧を測ったり。そういうことを正しくできないと、赤ちゃんたちを正しく見てあげることができないので、きちんと異常があるのか、そうでないのかというのを判断できるように、そういうことを一緒に考える勉強会を開きました。
ヨーコ:それってふつうにやれることのような気がするんですけど、看護師さんなら。
メグミ:そうですね。やはり私たちも学校でそういうことをきちんと先生に教えてもらいながら身に付けていく技術です。そういう教育を受けてない看護師さんたちはそういったものの考え方をするのはやはり苦手ですし、もうちょっと強化していかないと赤ちゃんを救ってあげることができないんじゃないかなと思いました。
ヨーコ:要するに、ちゃんと測って、それで調べていくみたいなことっていうことを全然やってないということになるのかしら?
メグミ:そうですね。実際はなかなか難しいと思います。
ヨーコ:そこでどんなことをメグミさんはやってきたのでしょうか?
メグミ:最初は何を考えて看護師さんたちがケアを行っているかというのを、一緒にケアを通して観察するようにしました。
ヨーコ:観察というのは何でしょう、看護師さんと話し合うみたいな、「どうして、それやってるの?」って聞いたりする感じですか?
メグミ:そうですね。あと一緒に赤ちゃんの熱を測るのもやらせていただいたり、身体を拭いたりするのも一緒にやらせていただいて、どんなことに看護師さんたちが困っていて、どんなことを支援してあげたらもっとよい看護が提供できるのかなというのを一緒に活動しながら探していった感じですね。
ヨーコ:一緒に活動していってわかったことってどんなことあります?
メグミ:まず1つは、もっと看護師として赤ちゃんにやさしくして、赤ちゃんたちが早くよくなってほしいと思う気持ちというのは、そこで働く看護師さんたちも一緒で、お母さんたちが心配でお母さんたちもいい看護を提供してあげたいと思っていることがすごくわかりました。
ヨーコ:反対に、ここはもう少し何とかしたいなと思ったところはどういったところですか?
メグミ:先ほども話したように、どうしても勉強していないからなんですけれど、たとえばお熱が上がったときにただ冷やせばいいということでなくて、その原因は何なのか考えて必要な治療につなげられる看護というのを提供していってほしいなということは思いました。
ヨーコ:一緒に活動して、一緒に考えていくなかで、看護師さんが変わったなと思ったところって何かありますか?
メグミ:1回目のときは、勉強会を開いたら、たとえば呼吸を測るときは時計を使って1分間にどれくらい呼吸をしているのかというのを測るんですけど、お部屋にも時計はないんですが、看護師さんたちも時計をして働くということがなかったんですね。ですが、その勉強会の後、ある看護師さんが腕時計を着けて病棟に来てくれたんですね。それで一生懸命やっているとこを見せてくれて、「やろう」という気持ちがとてもうれしかったです。

■ タイの看護を目指すようになった

ヨーコ:そして2回目はカンボジアの看護師さんをタイに連れて行ってリーダーを養成していくというようなプロジェクトに関わられたということなんですけれど、これちょっと難しいですよね。どういうことなのかな、マスター?
マスター:ああ、これね。カンボジアというのは、学士、いわゆる大学教育が看護学で行われてなくて、そのなかで看護学校を出た看護師さんがいる。看護学校を出た看護師さんたちを学士、大学卒という形に、そういう教育を施してくれるところがタイの大学でやってくれるということで。
ヨーコ:要は編入みたいな形で学士になれるというような、そんなようなコースを作ってくれるプロジェクトということ。
マスター:日本でもあるんですけど、准看護師さんを看護師にするとか、それとはちょっと形は違うのですが、そういう看護学校出の看護師さんを大学卒という形にしてくれる。
ヨーコ:学問としての看護学ということが、看護の現場には必要だということを身をもって感じたメグミさんですよね。このプロジェクトに関わってみていかがでしたか?
メグミ:このプロジェクトで、タイで学んできた看護師さんたちが本当に自分たちの職場を見直してもっとよくしたい、もっといい看護を目指したいという強い思いを持って活動されているのが本当に印象的でした。
ヨーコ:いつも現場にいて自分がやることはすごい忙しいしわかってると思ってるわけじゃないですか、看護師さんたちは。タイの看護学というのを学ぶとやはり衝撃はあるんですかね。
メグミ:卒業生の皆さんは本当に衝撃を受けて帰って来ました。私も、この卒業生たちが何が一番変わったのかなと思って、私は短期間で2カ月しか関われなかったんですけれども、ずっと長く彼らに関わっていた先生に聞いてみたところ、彼らたちがタイから帰ってきて自分たちで言った言葉が「これまでの自分たちの看護は何だったんだろう」ということを自分たちの口で述べたようです。それを聞いて、タイでの看護というのが目指すべきものになってきたんだなということがわかりました。
ヨーコ:やはり、どうしてこうなるのかなという気持ちというのは生まれてると感じました?
メグミ:感じましたね。まず、モデルになる看護師さんたちが側にいてくれるということは、やっぱりそうなりたい、そういう看護が提供したいという環境にきっといたと思うので、自分たちがもっといい看護を目指したいという気持ちに変わっていったんだと思います。

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第16回「未来の看護に向かって」放送時間のご案内 [お知らせ]

2015.12/09 番組スタッフ 記事URL

グローバルヘルス・カフェ、次回は12月15日火曜日の17時10分より放送です!
今回のテーマは「未来の看護に向かって」。

カンボジアの国立病院で、看護師の支援を行ったメグミさん。
勉強会を開き、一緒に仕事をするうち、
カンボジアの看護のリーダーになるであろう彼らを見て、
自分の意識も変わっていくことを実感します。
相手が伸びる過程で、こちらも実は伸びてきている、
あるいは相手が悩む過程で自分も悩んでいる。
支援を受ける側だけじゃなくて、支援する側も伸びていく。
国際協力を通じて、成長していく人々に焦点を当てます。

【出演】
明石 秀親(国立国際医療研究センター/医師)
五十嵐 恵(国立国際医療研究センター/看護師)
香月 よう子(フリーアナウンサー)



「グローバルヘルス・カフェ」は、毎月第3火曜日の17時10分~25分に放送しています。
PC・スマートフォンから全国どこからでもラジオNIKKEIがお聴きいただける「radiko.jp」からラジオNIKKEI第1を選んでお楽しみください。

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放送後にはオンデマンド・ポッドキャストでも配信いたします。
また、過去の放送分もオンデマンドでお楽しみいただけます。
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パーソナリティ

伊藤 洋一
いとう よういち

*伊藤洋一氏のサイト「YCASTER」
http://arfaetha.jp/ycaster/

 

 

香月 よう子
かつき ようこ

番組パーソナリティ、ナレーターの他、中心市街地活性化、町づくり等、省庁主催のシンポジウムのコーディネーター、講演を行う。一方で、「きてきて先生プロジェクト」の代表として、地域を担う人材の教育活動を展開。経済産業省キャリア教育コーディネーター育成評価事業中核コーディネート、東京都生涯学習審議委員など各種委員もつとめ、特に生涯審では、地域人材を生かした学校支援の仕組みづくりにかかわり実践も行う。

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