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聴く第19回「医療の国際展開」(2016年8月16日放送分)


<出演>
マスター:明石 秀親(国立国際医療研究センター)
藤沢:藤沢久美(シンクタンク・ソフィアバンク代表/常連客)

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■社会企業家と新興国の橋渡しをする

マスター:いらっしゃいませ、いやあ今日は暑いですね。アイスコーヒーですね。

藤沢:こんにちは。あ、お隣いいですか。はじめまして、藤沢久美です。

マスター:藤沢さんをご紹介したいんですけど、どんなふうにお伝えすればいいですかねえ。

藤沢:シンクタンク・ソフィアバンクという会社の代表をしているんですけれども、それ以外には政府のいろんな審議委員だとか、文部科学省の参与というお仕事もしています。あと豊田通商とか、地方銀行の静岡銀行の社外取締役とかいろんな公職が多いんですけれど、私のなかでとても力を入れているのが、日本の中小企業さんとかベンチャーの社長さんとか、そういう方々にもっと海外を知っていただいて、海外にもビジネスをしに行きませんかというような、そんなお手伝いをしています。

マスター:社会的企業家とか、そういうような支援とかそういうのもなさっていらっしゃるのですか。

藤沢:そうですね。元々、社会企業家の方々を応援するような集まりとかもやったりしていましたし、私自身も社会企業家として途上国の小学校の給食を支援するようなNPOであるとか、そういった活動もしたりしていますし。あと、何年か前はグラミン銀行のモハメド・ユヌスさんが日本に来る時に、それこそ日本の企業の経営者さんたちとユヌスさんとお話をする会をいくつか作って、日本の企業の人たちもビジネスのなかにそういう社会企業家的なセンスを入れていきませんかというような、そんなことをやったりもしました。

マスター:そうですか。実はNCGMもユヌスさんのところと関係がありまして、うちでも講演をしていただいたことがあるんですけれども、その後も向こうのグラミンヘルスのほうに行ってお話とかしているんです。

藤沢:一緒に何かプロジェクトとかやってらっしゃるんですか。

マスター:今は直接やってないんですが、ユヌスさんたちのお考えは、やっぱり貧しいお宅の女性の方たちに仕事を作る、それから同時にバングラデシュの看護師さんたちの不足を補うというようなことをやってらっしゃって、あちらが作った看護学校に支援したこともあるんですけれども。その後はユヌスさんのところではなくて、グラミンヘルストップのスルタン先生。このスルタン先生のところに、いろんな企業がいろんな機材とかですね、「これ新しいから使わないか」とかいう提案をもってくると。日本もいろいろいいものを作っているでしょう、と。だからちょっと紹介してくださいというので、一度紹介したことがありますね。

■ 国際医療研究センターの役割の変化

藤沢:マスターがいらっしゃる国際医療研究センターっていうのはまさに医療関係の支援だと思いますが、積極的にはどのあたりで活動されているんですか。

マスター:最近はアフリカとアジアですね。

藤沢:アフリカとアジアって聞くと、新興国でどんどん成長している国もあるけれども、まだまだすごく貧しい生活というか。そういうところに私のイメージだとNCGMさんてお医者さんを派遣するとか、お薬とか、医薬品を提供するというイメージがあるんですけれど、民間企業が進出するお手伝いまでされているんですか。

マスター:そうですね、元々NCGMは病院がありますので、病院の医者を派遣して向こうで診療するんじゃないかというふうなイメージで取られるんです。確かに以前はそういう形もあったんですけれども、最近は保健システムを強化するとか、あるいは病院運営を支援するとかですね、直接、医療そのものを提供するというよりは、その国の国づくり、人づくりのほうが中心になってきていますね。

藤沢:それはとても素敵なことですよね。

マスター:ありがとうございます。

藤沢:お医者さんを送ります、薬を送りますというと、ずっと送り続けなければいけないけれど、仕組みを作るお手伝いをしてくださったら、その国の人が自分でお医者さんになれたり、自分で医療サービスを担えるということで、自立できるというか。

マスター:そうですね。

藤沢:いいですね。私たちもよく社会企業家とかの仲間たちと話すのですが、魚をあげるのではなくて、魚の釣り方を教えるということをやらないと、絶対みんな幸せにならないよねという話はよくしますね。

マスター:わかりますね。

藤沢:でも、釣りの仕方を教えてさしあげる時に、やはり釣り竿とか糸とか必要になってくる。そういう釣り竿とかというと、今度は日本の企業が作るのが得意みたいなところがあって、釣り竿を作る企業さんも海外にお連れして、釣り竿の作り方も教えちゃおうみたいなこともやってらっしゃるということですか。

マスター:直接、我々は企業ではないので、そこまではいかないのですが、実際におっしゃるように企業さんからのアドバイスというのを求められることも多いんです。このままだとこの機材、日本ではいいんだけど、そもそもほこりが多いところとか、その国だとこれ壊れちゃったらどうしますかとか、そこまで考える。向こうに売ったんだけど、あるいは持って行ったんだけど、すぐに壊れて動かないんですという状態は避けたい。

藤沢:確かに企業の視点からいくと、あの新興国や途上国ではこういうものが無いからこういうものをお届けしたら喜んでもらえるだろうとか、売れるんじゃないかと思って行くんだけど、おっしゃるようにすごいほこりだとか、実は電気あんまりちゃんと無いですとか、修理をする人もいませんとか。そういうことって日本にいるとわからない。途上国に商売に行くというと、いろいろ資料を見て、この国にはカントリーリスクがあるとか政治のリスクがあるとか、通貨はこんな為替リスクがあるとか、数字でわかることは勉強して行けるんですけれども、今みたいにすごく現地に密着した話ってなかなかわからないですね。

マスター:そうかもしれないですね。やっぱり我々の職員もみんな、ずっと途上国に行っていますから、そのなかで日本の会社にもがんばってほしいなというところと、こうやったらちょっとまずいでしょうみたいな、そういう2種類というか、いくつかの面を見るなかで我々の経験なりが少しでも生きればいいかなというところもあります。

■ JICAやJETROの紹介により企業の海外進出を手助けする

藤沢:そういうのって企業のみなさんにどうやって教えてあげたり、情報共有してあげたりされているんですか。

マスター:今、実際に来ていただいて何が疑問なのか、あるいはどういう機材なのかも含めて一緒に考えていくと、それは途上国の支援と同じようなことですね。

藤沢:会社だとまず行ってみるといったって、もうちょっと勉強が必要だろうというときに、セミナーとかそういうのもやってくださるのですか。

マスター:今、年に2回くらいですけれども、国に特化した形でセミナーをやったり、最近はアフリカのTICADという。

藤沢:もうすぐありますね、ケニアで。

マスター:アフリカ開発会議ですね。そういうこともあって、アフリカをメインでセミナーをやったりしています。そこでは、我々がすべて持っているわけではないので、ほかの既に進出した企業さんとかからも情報を入れていただいて、みんなで高めるというかみんなで考えようというような形ではやっていますね。

藤沢:仲人さんみたいですよね。

マスター:そうですね、仲人になれればいいですけどね。

藤沢:途上国への支援とか、民間企業の人たちの進出支援とかというと、まずぱっとイメージで頭に浮かぶのってJAICAさんがあるんですけれども、JAICAさんともちょっと違うということですか。

マスター:そうですね。JAICAさんそのものはいろいろな民間連携の事業をやってらっしゃって、そういうのに応募する企業が多いわけですよね。そういうなかでJAICAさんが途上国を中心にいろいろな事業をなさっているんですけれども、どちらかというと保健医療の専門分野は専門機関に任せるという形が多いので、そのなかでNCGMはその専門機関だと思います。そういう意味ではJAICAさんの民間連携スキームに相談に行ってその事務所からうちに紹介されていらっしゃる企業さんとか、あとJETROさんもいろいろやってらっしゃいますけれど、JETROさんも貿易についてはお強いですけども、途上国の医療についてはちょっとわかりませんみたいなことで、JETROさんと一緒にいらっしゃったりという場合もありますね。

藤沢:私たちは日本の医療のイメージを持っているけれども、やはり医療も国ごとにずいぶん違うってことなんですかね。

マスター:そうですね。かなり似ている部分もあるし、その国ならではの環境もありますよね。もちろん文化もあるし、社会構造も含めて。ですから、言い方が変ですけれど、医療機材を持って行って売る場所というよりは、そこがどうやって良くなるか、そのことに貢献できるということが、企業さんにとっては自分たちの進出する機会であるでしょうし、日本にとっても、日本の企業について、あるいは日本人について良いイメージを持っていただく、そういう機会になるのではないかなと思います。

藤沢:そうですね。

マスター:特に中小企業さんは自分のところですべてできるわけではないので、そういうところに対して日本としても支援をすると、より日本の経済も結果として改善する。我々は医療従事者なので、どちらかというと国による健康ギャップを埋めるとかそういうほうに我々の視点はあるんですけれども、多面的に日本が出ていくという機会が最近は昔よりも増えている。それに対して、NCGMも何とか貢献できたらいいなという感じですね。

藤沢:私なんか、はじめはNCGMさんというとものすごい公的なイメージもあったし、それから医療協力、国際医療協力とか聞くと、がちがちな昔ながらの公的援助のイメージがあったんですけれど、今日はすごいお話を聞いていて、もうそういうBOP、Bottom Of PyramidとかBase Of Pyramidといわれるビジネスとうまく連携してやられているんだというのを聞いて、医療の世界もそういうのが始まっているんだなと、今日はすごく勉強になりました。

■ 「企業」に「社会性」が伴って始めて「社会企業家」となる

藤沢:でも、そういう観点からいくと、先ほどちらりと中小企業さんなんかもそういう援助プラスビジネスみたいな感じで海外に行かれているというお話がありましたけれども、最近、何か事例があったら聞いてみたいです。

マスター:たとえばですね、埼玉県の中小企業さん、社員13名というふうに聞いていますけれど、そこがベトナムにビリルビン測定器を売り込むというか、試験的に運用するというのをJICAの中小企業の予算をもらって始めているみたいです。そこに対してうちが支援する。相談にのって、最終的にその会社さんはそのベトナムに現地工場を作るということになり、今、また別の会社のお話を持ってきていますね。

藤沢:じゃあ、もう本当完全に企業のビジネス進出というもののお手伝い。

マスター:その進出する、企業さんにとっては進出が目的なんでしょうけれど、かなりこちらとしてはアドバイスして、先ほどお話したように先方の健康レベルを、健康ギャップを減らすというほうに動いていますね。

藤沢:だから社会起業家という言葉がありますけれど、その起業家のビジネスのところはまさに日本の中小企業さんとかがまさに日々やってらっしゃることで、そこに社会性というところを役割分担としてやってくださって、2つ合わせてまさに社会起業家みたいな。

マスター:ああ、それは初めて聞きました。それは面白い視点ですね。

藤沢:企業にとっても良いことして儲けるという実感が湧くと、よりみんながんばれるじゃないですか。

マスター:それは面白い視点ですね。すごい勉強になります。

藤沢:とんでもないです。出ていくというのは、みんな勇気がいることだから。誰かのためだとがんばれるかもしれないですよね。

マスター:なるほどね。それ面白いですね。

藤沢:そうですか。

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