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グローバルヘルス・カフェ

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聴く「第13回「医療は心、保健人材の育成」(2015年6月16日放送分)」


<出演>
マスター:明石 秀親(国立国際医療研究センター)
ヨーコ:香月 よう子(フリーアナウンサー)
三好:三好 知明(国立国際医療研究センター/医師)


■ カフェへようこそ!

ヨーコ:お元気ですか、グローバルヘルス・カフェ、香月よう子です。国際医療協力にかかわる人たちが通うカフェってちょっと変わってませんか。ここのマスターはとても面白いので、わたし気に入って通っています。それではさっそく、カフェに入ってみましょう。

マスター:あ、ヨーコさん、こんにちは。

ヨーコ:こんにちは。マスター、ここにあるこの本は一体何ですか?

マスター:これはね、『南米・ボリビアの青空に舞う 心をむすぶ保健医療協力の歩み』という本なんですけども、ボリビアで働いた人たちが何人かで書いた本です。ボリビアって南米の国で、日本との結びつきも強いんだよ。日本からの移民の人もたくさんいて。

ヨーコ:へえ。

マスター:あそこにいる三好さんはね、90年代にボリビアで頑張ってたんだ。病院で働いていたボリビアのお医者さんたちが、30年たって今はボリビアの医療の屋台骨を担う人たちに育っているんです。なかにはね大臣になった人もいるんだよ。

ヨーコ:すごい!

マスター:いま、人材育成に力を入れていて、国内でも外国でも若い人たちを育てているんだ。

■ 医療は世界の共通言語

ヨーコ:三好さん、こんにちは。
三好:こんにちは。
ヨーコ:三好さんはどうして国際医療協力の道に入ったんですか?
三好:最初はボリビアじゃなくて、カンボジア難民支援で外科医として入ったんですよね。
ヨーコ:ああ、そうなんですか、へえ。
三好:それで、そのときの経験が今の私の道を決めたんです。
ヨーコ:へえ。

三好:どうしてかというと、医療というのは、本当に、英語と同じように世界共通の言語だなというふうに感じたからです。
ヨーコ:医療が英語と同じように世界の共通言語、それってどういうことですか?
三好:最初に持った患者が虫垂炎の腹膜炎だったんですね。
向こうの田舎の病院だったんですけど、若い医者と、向こうのお医者さんと一緒にこう本当にスムーズに治療ができて患者さんも元気になって治せたという達成感があったんですね。それが本当に最初の経験で、その後も胃潰瘍の出血の手術ですとか、そういうのを一緒にやったんですけど、本当に僕らつたない英語でコミュニケーションしながら、これがすごく思った以上に通じるんですね。これはやっぱり、医療というのは世界共通なんだというふうに感じて、そうしたら別に日本だけじゃなくてもいいんじゃないかと、そういうふうに思ったんで、この世界の仕事を今も続けております。
ヨーコ:フィールドは日本だけじゃなくて、医療という共通言語を持って世界で働きたいと、そういうふうに思われたんですね。

■ 「患者さんが一番大事」であることをわかってもらうために

ヨーコ:そして三好さんは、その後どうして人材育成に取り組むようになったんでしょうか?

三好:これはやっぱり、ボリビアの経験が大きな影響を与えてますね。日本が作った新しい病院なんですけど、そこにいたお医者さんたちは、ボリビア一の病院にしよう、南米一の病院にしようという人たちが集まっていて、非常に高い意識を持っていた。そして、もっと若い医者たちと一緒に患者さんの治療をしました。そのとき感じたことが、いまの人材育成が重要ということつながっていると思います。

ヨーコ:なるほど。その患者さんを診ていて気付いたということはどういったことなんでしょうか?

三好:もちろん技術的な話もいっぱいしました。どういう手術をしたほうがいいとか、どういう抗生物を与えたほうがいいとか、そういう議論もするんだけど、それだけじゃなくて、やっぱり薬をあげたらそれはどういうふうに作用しているか、手術をしたらその後どういう経過をしているか、患者中心に医療をするということですね。やっぱり一緒にやりながら背中を見るというか、そういうことができて向こうの若い医者たちもそれに反応してくれたというのが一番大きいと思いますね。

ヨーコ:その背中を見せるというところなんですけれども、日本ではよく言いますよね。そこをもうちょっと具体的にどんなことをしたかというのを教えていただけますか?

三好:一言でいうと、患者さんが一番大事なんだよということをですね、わかってもらうためには、手術の後に熱が出たらどうしたらいいかということを一緒に考えたりとかですね。ドレーンから、ドレーンというのはお腹に入れた管なんですけど、それがどういう状態かを一緒に見たりとかですね、そういうなかで考える、問題を考える、そしてどうするかということを一緒にやるということですね。これは単に講義で教えたりとかだけじゃなくてですね、お互いに自分のすべての知識をその患者さんのために投入するというか、そういう姿を見せるということですね。できるだけのことをその患者さんのためにするという、そういうことだと思いますね。あと1つは、外科のトップというかリーダーというか、その人たちをどう導いていくかということで、一生懸命患者のために働く医者が、ちゃんと仕事ができるような仕組みとか環境をつくる、そういうことが重要と思います。

ヨーコ:すべて三好さんが、自分がこういうふうにやらなければいけない、こういうふうにやれって教えているわけではなくて、やはり現場の人たちが考えていくということが重要なんでしょうね。そこはまさに日本的に背中を見せて育成していったということでしょうか?

三好:いま考えればそうですけどね。まあ、あの頃若かったから、本当に楽しかった。
ヨーコ:楽しくがむしゃらにやっていたということですね。

■ 医療の心が通じた瞬間 

三好:非常に危機的な状況になったことがあります。というのは、病院の給与が出ない、それから政府が約束した人がちゃんと人材が配置されないというような状況で、年に半分くらいストライキが起きるような状況になったんですね。そうすると日本としても、いつ協力できる状態ではないので、ミッションといいますか調査団を送って協議をして解決策を見出したわけです。本当の最後の最後、1時を過ぎた深夜になったんですけれど……

ヨーコ:交渉に交渉を重ねて深夜の1時過ぎて……

三好:それは病院長もいるし、労働組合の人もいるし、県の保健局の人もいるし、保健省の人もいる、そういう全員が集まったなかで、そのときはもう市の病院になってたんですね。市長さんが一番重要だったんです。その市長が「俺はもう帰る」と言ってですね。

ヨーコ:「もう帰る、病院も閉鎖だ」と。
三好:それで、本当に帰ろうとしたんですね。そのときに病院の看護師さんの一人が……
ヨーコ:それはボリビア人の?
三好:ボリビア人です。この人は日本に半年くらい研修に来て日本のことも非常によくわかってですね、非常に熱心な人だったんですけど、その人が泣いてすがって「帰らないでくれ」と、「あなたが帰ったら、この技術協力は終わりで、日本病院」、通称なんですけど、「この病院の将来はない」と、「どうぞ帰らないでくれ」と。本当にこう止めたんですね。で、まあ市長も残ってサインをして、それで政府も約束を守って、ストライキも解消して、技術協力も最後までやることができたというところでですね、これはやっぱりその看護師さんの行った態度は非常に日本を信頼してくれて、やっぱりボリビアのため、患者さんのため必要なんだということで、そういう行動に出たと思うんですね。これやっぱり日本のやり方をずっと見てくれた成果の1つではないかと思うんですけれどね。

ヨーコ:その、これがなくなったら給料とかそういう話の以前に患者さんが困るという心をやっぱり受け取ってくれた瞬間。
三好:たぶん僕はそう理解しているんですね。その人とはいまも交流はありますけどもね。ずっと一生懸命やってくれてます。
ヨーコ:言葉では伝えられなかった何かというのは、こういうふうに伝わるということもあるんですね。

■ 心を伝える人を育てる

ヨーコ:日本が協力を行った施設の多くでは、日本人がいなくなった今も、まるで日本人が働いているかのような状態が続いて、きちっとその仕組みが続いていくとか、そういったことっていうのは非常に大きいことですよね。

三好:そうですね。国際協力のなかでは持続性といいますか、一番重要なこととされるんですね。そして、それのキーポイントはやはり人づくりなんです。我々のマインドをうまく伝えてくれる人がずっと育って、そういう人がいるからこそ続いてくると思います。

ヨーコ:仕組みも非常に大事なんですけれど、それを続けていく心というんでしょうか。

マスター:やっぱりその、技術とか知識じゃない、何かもっと別のものをですね、我々は何か伝えようとしてるのかなと。そういうことを受け取って、自分たちのものとして何か働いてくれるというかね、そのことはうれしいなと思います。
ヨーコ:その心を受け取って、また新たなところに日本人の医療関係者が出かけていくという感じでしょうか?
マスター:そうでしょうね。

ヨーコ:いかがでしたか? 今回は「医療は心、保健人材の育成」をテーマに、国立国際医療研究センターの三好知明さんからお話をうかがいました。お相手は、
マスター:マスターの明石秀親と、
ヨーコ:香月よう子でした。それでは、また来月、第3火曜日午後5時10分にお会いしましょう。

この番組は、生きる力をともに創る国立研究開発法人 NCGM国立国際医療研究センターの協力でお送りしました。

番組内でご紹介しました、三好知明さんも執筆している本『南米・ボリビアの青空に舞う』を、この番組をお聞きの皆様に抽選で10名様にプレゼントいたします。マスターと三好さんのサイン入りです。
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