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聴く第22回「新しい事業を生み出す方法」(2017年2月21日放送分)


<出演>
マスター:明石 秀親(国立国際医療研究センター)
藤沢:藤沢久美(シンクタンク・ソフィアバンク代表/常連客)

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【経営者は好奇心旺盛】

マスター:藤沢さんいらっしゃいませ。今日は何にしますか。
藤沢:今日はちょっと紅茶な気分なんですよ。
マスター:実は私、紅茶好きなんです。
藤沢:本当ですか。マスター意外!
じゃあ今日は紅茶で、できればマスターのブレンドの紅茶、ぜひ。
マスター:あとお茶請けにですね、ちょうどザンビアに行ってきた帰りで、ドバイで買ったアラブのお菓子です。
藤沢:ですよね。懐かしのアラビアンなお菓子なので、ザンビアじゃないなぁと思いながら。
わあ、懐かしいです。
マスター:ぜひどうぞ。
藤沢:いただきます。私ね、この丸いのが大好きなんです。

マスター:今日ここに来る前に、ママチャリの前に5歳にもいってないかなあって感じの子供をですね、自転車に乗せて走ってくる人がいまして。
そしてその子供がですね「PPAP」を歌っているんですよね。
それで「PPAP」を歌っているのを聞いた時に、ちょっと思い出したんです。

自分の子が「PPAP」を最初に歌ったのは昨年の夏ぐらいだと思うんですけれど、「今、学校で流行ってる」と。
それを聞いたときに「何だくだらない歌を歌ってるなぁ」と言ってたら、いつの間にかその「PPAP」はアメリカのビルボードのチャートに載って、その後に日本の記者クラブでも会見があって、紅白にも出ると。
それで、自分はそれを聞いた時、何て感度が悪いんだろうと。
くだらない歌って過ごしちゃうのか、それって面白いんじゃないってやるのかで全然違うんだなと思ったんですね。

実はこれ、初めてじゃないんですね。自分が感度悪いなと思ったのは、大学の時。
考えてみるとインベーダーゲームが出てて、その時にまさかパーソナルコンピューターが出てくるとはわからなかった。
大学院アメリカに留学するときは、どうやらEメールというのがあるらしいと。
でもEメールってよくわからないことをやってるなと。
それで過ぎちゃっててね、難しい難しいって。

でも同じ時期にアメリカに留学していた三木谷さんは、これ面白いじゃないかといって楽天を作ってたわけですよね。
それで、自分の中で感度の悪さって、どうしてこうなっちゃうんだろうなと。
逆に、藤沢さんはそういう感度が良くて、なおかつそれを事業化する、そういう方向にいってらっしゃってね。
仮に感度が良くて面白いなと感じても、まあでも事業化するまではたぶん至らないパターンも多いですし。
だから、藤沢さんなんかは、ご自身でその感度の良さ、「あ、これ面白そう」っていうアンテナの立て方とか、あるいはそれをゲットした時にそれをどうやって事業化するのかとか、そういうことをどうしていらっしゃるのか前から聞きたくて、お店にいらっしゃるのをお待ちしてたんです。

藤沢:ありがとうさいます。
感度が良いかどうかはわからないですけど、私自身、いろいろな経営者の方とお話をしていて、起業家の人とか経営者の人って好奇心が旺盛なんですよね。
何でも知りたいというか。
だから、見方によれば節操なく、「専門は何なんだ」みたいなことを言われてしまう浅さみたいなものもあるかもしれないけれども、常に新しいものにはちょっと触れておきたいっていう。
そういうところがスタートな気がしますね。

マスター:好奇心とおっしゃってたけど、ただ同じものを見てはいるんですよね、たぶん。
私がアメリカで見てた光景と、三木谷さんが見てた光景は同じかもしれない。
でもその時に、面白いと思わせるというか、あるいは別のものを面白いと見ているのかもしれないけれど。
それはどこから出てくるのですか。

藤沢:ちなみにマスターは、アメリカとか海外に行かれた時に、どんな目的を持ってらしたんですか。

マスター:その時はですね、災害。医療じゃなくて災害マネジメントを学びたかった。
だからそういう意味では、Eメールを学びたかったから行ったんじゃないかもしれないということはあるかもしれないですけれど。

藤沢:その時に、アメリカが災害マネジメントについてどんなことやっているのかを学んで、それをもしかしたらそのまま輸入しようと思ってらした? 
それともそれを参考にして日本の災害マネジメント、医療のマネジメントを新たに発明しようと思ってらしたか、どっちですかね?

マスター:移植しようと思わなかったかもしれないですけれども、ただ、別に自分自身はインフルエンシャルな人間ではないので。だからまあ、本を翻訳したりとか、そういうのはやったんですけど。
直接、そのまま移植というのはできないんですよね。なぜかというとそれぞれ国情が違うから。
たとえばアメリカのベースボールは日本に持って来たら野球だという感じがするんですよね。
だから、直接アメリカのものを入れようという感じではなかったと思いますけどね。

藤沢:じゃあ、ある意味、アメリカのものを日本向けに改善していくみたいな。
日本に合った形にするための最初のケースをアメリカで探してくるというか、そういう感じだったのかもしれなくて。
たぶん三木谷さんはその時、私もご本人に聞いたわけじゃないからわからないけれど、とにかく何をやりたいかは明確じゃないけど何か新しいことをやりたくて、アメリカの中にあって日本にないものは何だろうと、分野を問わずいろいろアンテナを立ててたら、みんながアメリカで新しい新しいと言っているものを見つけて、これ日本で使うと何ができるだろうって考えたのかもしれないですよね。
なので、最初の制約がマスターほどしっかり狭くなかったのかもしれない。

マスター:あー、なるほどね。


【事業化の課題を解決するために異業種の人を巻き込む】

藤沢:それから、経営者の方とよく話してると、とにかくアンテナがすごくいっぱい出ている。
たとえば1000円床屋さんてあるじゃないですか。
あの床屋さんを始められたら社長さんも、「とにかく1000円でできる床屋さんを日本でやりたい」と。
じゃあ1000円で床屋をやって、かつ利益が出るためにはどうしたらいいかとずっと考え続けてて、いろんな人としゃべったり、新聞を見たりしていると、1000円で利益を出すためにはとにかくコストをどんどん下げていかなければいけない。

それじゃあ、コストを下げる方法ってどんなものがあるんだろうって考える。
たとえばお客さんが床屋さんに来て、「すいません空いてますか」「今、切れますか」って扉を開けて言ったら、その瞬間、切ってる手を止めて「今、いっぱいです」とか「ここでお待ちください」とか説明しなければいけない。
これで10分が12分になっちゃうかもしれない。
これはコストなので、こうしないためにはどうしたらいいだろうなんて考えてテレビ見ていると、工場の映像が流れて、工場だと不具合があるラインでは赤黄緑のランプがくるくる回るというのを見て、「あ、これを店につければいちいち空いてますかって聞かれなくても、赤だといっぱいですといえるからコストが下がるよね」とか。
あとレジとかを作ったらまたレジ担当を置かなきゃいけないから人件費が上がると。
レジを使わないためにどうしたらいいだろう。
定食屋さんに行くと入口に自動販売機があって食券買う。
ああいうのやればいいけれど、床屋なのでそんな何種類もメニューいらないし、新たに機械作ってもらったら高いしって考えてたら、世の中で携帯電話が出てテレホンカードの自動販売機が売れなくなったっていうのを見て、テレホンカード1種類しかないし、この機械売れなくなったんだったら譲ってもらおうみたいな。

常に「これをどうしたらいいんだろう?」って考えて、その解決策を探すということやっていたら、いろんなものが全部扱えるかもって。
その感度というのは、とにかく新しいものを作りたいということも一つあるんだけれども、別にこれどうやったら解決できるだろうっていうのを考え続けて、解決策を何でもいいから見つけちゃおうという。

なのでマスターが関わっていらっしゃる国立国際医療研究センター、NCGMみたいな取り組み、海外に行く日本人の診療だとか、海外から日本に来る人の診療とかいろいろやってらっしゃいますけど、たぶん課題っていっぱいあると思うんですよ。
この課題を解決するために過去の文献とか今まで医療の世界がやってきたこと以外で、他の業界で何か使えるものはないかなということを考えて、まったく今まで付き合ったことない人たちと話してみる。

マスター:なるほど。

藤沢:そうやって問題意識を具体的に持つということも一つかもしれないですよね。

マスター:それが要するに、その積み重ねが事業化にもつながるしということですね。

藤沢:そうです。これ面白い社会現象が起きていて、最近経営者と話してると、昔はいかに儲けるかということで評価されたけれども、今はいかに社会の課題を解決するかということにフォーカスをしてビジネスを作っていかないと人も集まらないし、お客さんも来ないし、株主も集まらないっていうふうな話をされている方が増えていて。
最近の若い世代で1980年代以降に生まれた若者たちをミレニアム世代とかミレニアル世代とかいうんですけども、そういう世代ってとにかく誰かの役に立つことをしたいとか、自分一人じゃなくていろんな人とつながりながら何かをやっていきたいとか、そういうタイプの人が20代、30代の人に増えてきている。
まさに活躍する人たちが、そういう生き方をしている。
なのでこういう国際医療協力なんてドンピシャのど真ん中なんですよ。

マスター:なるほど。

藤沢:マスターが今度、アンテナをたくさん出して感度を上げるというのは一つなんですけど、そういう感度を上げている人たちをいっぱい集めてきて、マスターが持ってるネットワークに若者をどんどんばらまいて、その感度を後ろから「それ面白い」とか言って全部面白がってあげる。
たとえば、海外から日本の国内に感染症が入りこまない対応とか、水際作戦とかやってらっしゃいますけど、こういうのも実は情報発信をしたほうが、水際で止めるということを考えるんじゃなくて、こういうのが今世の中で起きているから気を付けましょうとか、こんな危険性がありますとか発信したほうが一人一人が気を付けたりとか、気を付ける方法を考えてくれたりするし。

こういう国際医療協力のノウハウを海外でやったのを日本に持ち込んで適用するというのも、このNCGMの方々が向こうでいろいろやって持ち帰ってくるのも一つなんですけど、逆に世界中の人たちと「日本ではこんなことがあるんだけどみんな何してるの」みたいな、「あなたたちが海外でやってることを日本に持ち込んでみませんか」みたいに、逆にアイデア大歓迎っていうようなことを逆に発信されると、「日本でやれるの」「日本にもしかたら行けるの」って思ったら、自分が、マスターが海外に行く旅費を払うんじゃなくて相手が来る旅費を払えばいいだけの話だけなんで。
来てくれたほうが楽じゃないですか。日本を見てもらって、どう適用してもらうかとか。

【最後は「やった人が勝つ」】

マスター:NCGMとしてはたしかに国際協力そのものをやっていると、日本国内にも役に立つという場面がやはりあって、それがさっきのありきたりですけれど、日本にいる外国人に対する外国人の診療とか、あるいは日本から海外に行く人たちの渡航者外来とかですね。
あるいは感染症の水際対策、だから感染症も誰かが日本を、言い方がちょっとオーバーですけれど、守らなければいけない部分もあるという意味で、日本に還元ができるし、あるいは災害対応なんかも前もお話したかもしれませんが、災害の場所ってリソースがなくなっちゃうので、結局、途上国と同じようなことが起こって。
それでそこで、行った人たちが、何だこれもないのかあれもないのかって言ってたら、それは被災地にとってはえらい迷惑な話で。
それがないから災害なんですということですよね。
それに対して支援をするということは慣れているということはあるので。
ただそれだけじゃなくて、やはりさっきのトラディショナルというかコンベンショナルな、そういう上等なやり方だけじゃなく。
途上国でリソースがないセッティングでどうやっているかということが、日本のリソースがないところ、たとえばそれは災害のところかもしれないし、あるいはへき地とか、そういうところかもしれないし。
そういうことに役に立つような形が望ましいとは思うんです。
ただ、NCGMはたぶんまだリバース・イノベーションのところはまだ弱いと思うんですよ、正直。
ただ、先程お話があったみたいに、発信としてね、この指とまれじゃないけれども、そういうことやっていかないといけないということですね。

藤沢:そう思います。
マスターはいっぱいアイデアをお持ちだから、マスターのアイデア止まれってこのカフェに来てっていう、そういうのはすごく一つあると思いますし、さっきの限られたなかで医療をしなければならないという途上国の話と被災地の話って、それすごいゲーム作れますよね。
逆に言うと企業の方々って、できるだけコストを少なくして新しいものを作っていく。
なので、欲しいものがないなかでどうやって新しいものを作っていくかというのはすごく大事な能力なんですけど。
そういう意味じゃ、そういう人たちの研修ゲームとして、この被災地にこれだけしか道具がないけれどもどうやってこの人助けますかゲームみたいなのやると、新しい医療の分野の人は思い付かなかったような解決策を他の業界の人が思い付くかもしれなくて。
同時に他の業界の人はそういう限られた道具のなかで新しい解決策を生み出す訓練にもなるので、違う業界同士で目的を原点まで落とした瞬間に、両方が役立つみたいなことも作れたりする。
いろんな人と話していると、そういうふうにNCGMではまだ機能が弱いという話が、実は普通の企業でも弱い機能と一緒のところにつながってるかもしれない。
一緒にその機能を強化する、何かゲームを作りましょうよとか。
そうしたらお金も出してもらえる。
なので、いっぱい悩み事はしゃべったほうがいい。
言ってることは全然難しくなくて、あとはやるかやらないかというだけの話なんですよ、みんな。
最後の壁はやるかやらないか。

マスター:そうですよね。
そこが事業化するかどうかというのも、言うだけはできちゃうと。そこでやるかやらないか。

藤沢:そう。ほとんどやらない人が多いから、やった人が勝てるんです。
なのでマスターは大丈夫です。

マスター:いやいや。これからやらなきゃいけないっていう宿題をいただいたということですね。

藤沢:次回お会いする時は「これを始めた」というのを聞けるのを楽しみにしております。

マスター:わかりました。

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