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聴く第25回「途上国の生活習慣病(NCD)について」(2017年9月19日放送分)


<出演>
マスター:明石 秀親(国立国際医療研究センター)
藤沢:藤沢久美(シンクタンク・ソフィアバンク代表/常連客)

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【途上国で生活習慣病が問題になっている?】

マスター:いらっしゃい、藤沢さん。いつもありがとうございます。
藤沢:こちらこそ、こんにちは。
マスター:こんにちは、いかがですか。
藤沢:いやちょっと涼しくなってきたかなと思ったら、また暑くなってという感じ。今日はちょっとすっきりするミントティーをいただこうかなって。
マスター:それはまた初めてのご注文な気がします。
どうもありがとうございます。早速作らせていただきます。

藤沢:マスターも最近またどこか行ってこられたって。
マスター:そうなんですよ。ヨルダンに行ってきたので、お土産を持ってきました。
藤沢:すごいかわいい。これ何ですか。お財布?
マスター:そうですね。お財布ですね。
藤沢:コインケースって書いてある。しかもすごい手作り感があって、でもヨルダンの民族感もあって。
マスター:これね、女性のエンパワメントの助けになるっていうのと、ヨルダンのヘリテージ(遺跡)の保存に寄与するというので、思わず買っちゃったんです。
藤沢:女性たちが伝統的なヨルダンの模様、文化を守りながら物作りをされている。
何か雰囲気があってすてきですし、やさしい感じがしますね。
マスター:ありがとうございます。
藤沢:これ、私もとってもうれしいけれども、このカフェにいらっしゃる常連さんにプレゼントされたら喜ばれるんじゃないんですか。
マスター:じゃあそうしましょう。それはいい案です。
藤沢:お客さん殺到しちゃうかもしれない。
マスター:ありがとうございます。

藤沢:最近、私はとっても残念だったニュースがありました。
ラジオNIKKEIでもずっと番組を持っていらっしゃって、私もよく聴いていたんですけれども、聖路加国際病院の名誉院長でいらした日野原重明さんが、7月にお亡くなりになった。
いつもお声を聞くだけで元気をいただいてたので、本当に残念だなと思いました。
日野原先生は、医療の世界ではイノベーティブな方だったんですよね。
マスター:そうですよね。やはり生活習慣病っていうお名前もそうでしょうけれども、そういう考え方を導入されたということでね、素晴らしいことだと思いますね。
終末期医療にも貢献されて、たいへん見事な亡くなり方だと思います。
藤沢:そうですね。でも、この生活習慣病。成人病とかいろいろ言い方があると思いますが、私自身そういったものは遠い存在だと思っていたのに、だんだん近付いてきたのを実感しています。
高血圧とか糖尿病とかそういうものですよね。
マスター:実はこの生活習慣病。国際保健の分野では、感染症、細菌とかウイルスにかかる感染症に対して、非感染性疾患、Non-Communicable Diseases、NCDという言い方をするんです。
そういったカテゴリーとして、今、世界的に問題になっているんですね。
生活習慣病というと何となくそれは先進国の病気と捉えがちですが、今はいわゆる途上国といわれてる国々でもそれが問題になってきているというのが事実です。

【途上国のNCDの原因は?】

藤沢:私たちがいう生活習慣病は、世界ではNCDと言われているんですね。
途上国でも、というのがすごく違和感があります。
食べ過ぎとか飲み過ぎ、運動不足、まあたばこを吸う、確かに途上国は吸ってらっしゃるかなあ。
マスター:吸ってますね。
藤沢:そういう意味では先進国病みたいな気がするんですけれども。原因は同じなんですか。

マスター:原因はやはり食生活ですね。
途上国で何が起こってるかというと、食べられる人と食べられない人がいる。
昔からいう低栄養とか感染症が多く、母子の健康も害されるということで、母子保健と感染症と低栄養も含めて問題になっています。
先進国であれば、それらがかなり減ってから生活習慣病が増えてくるというパターンなんですが、それが同時に起きている。
Double Burden(二重負荷)の状態ですね。食べられない人もいるし、むちゃくちゃに食べる人もいる。
例えば途上国へ行くと、ご存じでしょうけれども、お金持ちの人は普通に車でガンガン動いている。
日本みたいに、例えば駅の階段を上るということをまずしないという感じですよね。
そうはいっても、ずっと歩き続けなければいけない、そういう人たちもいて。
結局、背景としては生活習慣病が起こる背景は似ているといえば似ていると思います。

藤沢:なるほど。しかも考えてみればグローバル化しているから、途上国にもグローバルで高カロリーで安い食がどんどん入っているのも一つあるんでしょうね。
マスター:そうですよね。

【NCDの解決には国境とセクターを越えた対応が必要】

藤沢:今どのくらいの人がこのNCDで亡くなってるのかという統計はあるんですか。
マスター:WHO、世界保健機関が各国の統計を出しております。
ちょうどこの7月に日本で、ASEANプラス日本の保健大臣会合というのがありました。
それに関連してASEANプラス3という、ASEANの国プラス中国、日本、韓国の3カ国で、保健医療課題について話しましょうという会議があったんですよね。
ASEANのなかには開発途上国といわれている国々もある一方、日本みたいな先進国もあります。
だいたい途上国といわれている国の名前を挙げてもいいのかわからないですが、例えばラオスとかカンボジアとかミャンマーとかそういうところでも、 NCDという先ほどの非感染性疾患は5割から6割を占める段階になってきました。
もちろん先進国は8割になってますけれども、そういう意味でもどんどん増えてますね。

藤沢:先ほどDouble Burdenとおっしゃいましたけれども、半分の方がNCDで、半分の人が感染症というのはすごく大変なことですよね。
マスター:そうですね。それらが同時に起こってきてる。
WHOでも2008年だと世界の死亡数5,700万人のうち63%がNCDというふうにいわれていて、いずれにしろ問題になってきている。
それはある種、世界の問題なんだという、そういう時代になってるわけですね。
藤沢:私が行く機会があるダボス会議でも、やっぱりNCDは話題になっています。
どんどん増えていくということ、特に途上国やアフリカなどが非常に深刻だということがいわれていて、そのなかでさらに議論になっていたのは、一つの国で自分の国でのNCDを減らそうと頑張ってもなかなか難しいと。
先ほどのように世界が繋がっちゃってるので、いろんなものが入ってくるし、かつ一つの医療分野だけで頑張っても解決できない。
グローバルに、いろんな国が連携して、そしていろんな業界、医療だけじゃなくて産業界とか教育業界とか、みんなが手を携えていかないと解決できないのではないかなんていう。
マスター:生活習慣病だけ考えてみると、普通に生活をしてる時に、例えばファーストフードとかね、もともと日本とか途上国に無かったものがどんどん輸入とかされてきてそういうのが普通になってくる。
例えば南太平洋諸国では、結構太った方が多かったんですが、昔はそれでも生活習慣病じゃなかったらしいんですよ。
それがファーストフードが入ってきて、同じような体型なんだけど、脂肪の付き方が変わってしまい、いわゆる生活習慣病になってくるということも起こってきてるわけですね。
それは食生活もそうですけども、その人たちがそういうのを食べるようになってきているということは、子供の時からどういう生活をしてるかが問題になる。
子供の時にある種の栄養に関する知識とか、運動って大事よとか、そういう教育がないと予防にはならないわけですよね。
一方、予防するにしても実際にどういう病気があるとか、それに対してどうしなきゃいけないかという知識が必要です。
大人にとっても、生活インフラがどういうふうにあらねばならぬのかと考え出すと、おっしゃるようにセクターをまたいで考えないといけないということですよね。
藤沢:そういう意味じゃ、医療の政策でどうしていかなきゃいけないかというのと同時に、都市計画をどうしたらいいかとか、学校教育でどんな教育をしたらいいかも、全部入ってきちゃうということですよね。
マスター:ですから、そのダボス会議でおしゃってるのは間違いなく必要なことでしょうね。

藤沢:そうすると、マスターがご縁を持ってらっしゃる国立国際医療研究センター、NCGMのように国際貢献をされている、国際医療協力をされているようなところというのは、途上国に対してNCDを減らしていくためにどんな対策を打っていかれるんですかね。

マスター:一つは保健医療の分野から。
保健医療の分野というと何となく医療を思い描きがちで、それって何か病気の検査します、治療します、っていう医療に目がいっちゃうんですけども。
保健について考えるとき、実は予防はどうするのかということが大切です。
例えばNCGMのある部署は、途上国でも使えるようなアプリを作って、食べ物の習慣と体重とかの管理をする。
それでそれに医療従事者のアドバイスをもらえるようなシステムを考えたり実際に試してみたりもしているんです。
ただそうはいっても多分ね、先ほどのお話から考えると、それやっぱり保健医療の分野ですよねっていう。

藤沢:でも、今の話面白いなと思いました。
アプリを作って持って行かれたら、逆にそのアプリの中でいろんな食の会社と繋げておいて、その人にとってプラスになる食を食べるとポイントが企業からもらえるとか、企業がその人に合ったメニュー提案をしてくれるとか。
企業から見るとうちのお店に来てもらえるプロモーションにもなるし、その人の健康にもなる。
NCGMさんみたいに各国の保健省とかとネットワークをお持ちのところが、「そういうことをあなたの国でやったらどうですか」とか言ってくださったら、ただアプリを持っていくよりもみんな幸せになるかもしれない。

マスター:すごいですね。さすがですね。その発想は非常に大事だと思いますね。
藤沢:そして今、NCDはSDGs(持続可能な開発目標)にも入ってるので、世界中の企業がSDGsのために何かやらなきゃいけないと思っているから、たぶん関わりたいという会社も多いでしょうし、「みんなでこのアプリをどうやって生かすかを考えませんか」なんていうと、アイデアがいっぱい出てくるかもしれないですね。
マスター:そうですね。やっぱりこれ保健医療というより、それこそ藤沢さんみたいなプロデュースというのか何ていうのか。
藤沢:いやいや、それをNCGMさんがやればいいじゃないですか。NCGMさんが日本の企業の皆さんと。
そして現地の保健局の方との間に入って、一緒に作りましょうとやれたら、現地の人たちはお金も日本の企業から出してもらえればいいじゃないですか。
で、その国の子供たちも大人たちもNCDを防ぐことができて、日本企業はそれによってその国にもしかしたら進出できるかもしれないし、会社の名前を知ってもらえるかもしれないし、そしてSDGsもちゃんと取り組んでるということで株主からの評価も上がるということで、みんなハッピー。
マスター:素晴らしい。
藤沢:なのでカギはやはりNCGM、国立国際医療研究センターさんにかかってるのかもしれないですね。
マスター:何かいつも話してると宿題をもらうという感じがするんですが。
藤沢:でも、やれることがいっぱいあるってことで。
こういうところで国際医療協力のお仕事されてる方っていろんな分野の人と関わっていろんな世界と関われてとってもすてきな仕事だなっていつも思って、ちょっとうらやましいな。
マスター:いやいやいや。

【リスナーの方からもアイデアを募集します】

藤沢:あとはこのカフェにいらっしゃってる方もいろんな方いらっしゃると思うので、今日のNCD、私たちからいうと生活習慣病ですけど、これを途上国で解決するためにどんなアイデアがあるのかとか、ぜひ教えていただいて、それでいいアイデアをいただいたらこのコインケースを差し上げようかなとか、みんな一緒に考えたら面白いかもしれない。
マスター:ちょっと前から知りたかったことがあって。
この番組を聴いてらっしゃるリスナーの方は一体どういう方なのかなと。
俺聴いてるよ、私聴いてるよ、私はこういう分野で働いてるのよとか、私こういうアイデアあるのよとか。
リスナーの方は何万人、何十万人いらっしゃるわけじゃないんですけれども。
アイデアを持ち寄る何かイベントとか、そういうのもあってもいいのかもしれないですね。
藤沢:グローバルヘルス・カフェでアイデアソンとか。
どうやってNCDを減らしていくか、アイデア大会とかをマスターのお茶を飲みながらできたらとっても楽しいかもしれないですね。
マスター:それいいアイデアですね。
もしかするとNCDだけじゃなくてもいいのかもしれないんですけど。この番組の活用の仕方というか、あるいはリスナーの方に参加していただくという、ただ単に参加じゃなくて何か世界にとっていいものをプロデュースするというかね。
みんなで作り上げるという、そういうアプローチも面白いかなと思いますね。
藤沢:面白いですよね。そういう皆さんも一緒にこのカフェに出ていただけたら楽しいですよね。
勝手に妄想が始まってますけれどもね。怒られちゃうかもしれない。
マスター:いつも素晴らしい。本当にインスパイアされます。
藤沢:じゃあまたカフェに来て宿題がどこまで進んでるかを聞くのが楽しみにしております。
マスター:だんだん私、身が細っていきそうな気がしますけれど。
藤沢:そうは見えませんね。どんどんお元気になっている気がしますので、またお話が聞けるの楽しみにしています。
マスター:こちらこそ、本当にありがとうございます、いつも。

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