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グローバルヘルス・カフェ

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聴く「第6回「病院から青空の下へ~地域とつなぐHIV治療~」(2014年1月10日放送分)」


<出演>
マスター:明石 秀親(国立国際医療研究センター)
宮野:宮野 真輔(国立国際医療研究センター/医師)
ヨーコ:香月 よう子(フリーアナウンサー)

■ カフェへようこそ!

ヨーコ:お元気ですか。グローバルヘルス・カフェの香月よう子です。

世界の健康を守る「グローバルヘルス・カフェ」、そんな名前のついたカフェって、ちょっと変わってませんか?

ここのマスターはとっても面白いので、私気に入って通っているんです!

それでは、さっそくカフェに入ってみましょう。


■ エイズはいまだに世界的な問題

ヨーコ:こんばんは! マスター、今日の格好どう?

マスター:すごいね、ヨーコさん。それって、ザンビアの布のチテンゲでしょ?

ヨーコ:よく知ってるね。この前ね、アフリカのイベントで買ってきたんです。

マスター:本当? ザンビアといえば、あそこに座っている宮野さん、彼はねエイズの仕事でザンビアに行ってたんだよ。

ヨーコ:へえ。エイズって、なんか懐かしい響き。

マスター:懐かしいってのはちょっとねえ...。いま世界的にエイズというのはまだ大きな問題で、日本でも新規の、新しい患者さんが増え続けてて、世界的にまだまだ問題なんだ。

ヨーコ:へえ。その対策をやっているお医者さん?

マスター:そうそう。

ヨーコ:てことですね。

マスター:ねえ、宮野さん。ちょっと話してあげて。

■ ザンビアの村々にHIV/エイズの治療を届ける仕事

宮野:はじめまして、宮野です。

ヨーコ:海外ではどんなお仕事をされてきたんですか?

宮野:そうですね、主にアフリカやアジアの国で、結核という病気や、いま出たHIV/エイズ、といった病気の対策をしてきました。

ヨーコ:具体的には、どんなお仕事になるんですか?

宮野:そうですね、ザンビア、アフリカの南部にある1つの国ですけど、そこでは7人に1人くらいHIV/エイズといわれている......

ヨーコ:そんなにたくさんの人が......

宮野:それくらいHIV/エイズが大きな問題の国なんですね、ザンビアという国が。そこで、村にHIV/エイズの治療を届けるという仕組みづくりの仕事を現地の人と一緒にやってきました。

ヨーコ:仕組みづくりということなんだけれども、これはどういう仕組みをつくったんですか?

宮野:そうですね。主に村には診療所というものがあるんですけれども、そこには看護師さんが1人だけというような状況で、薬も十分でなかったり、スタッフが少なかったり、いろいろ問題があるんですね。
街の中心に病院があるんですが、そこには割とスタッフが多く、薬も十分揃っているので、そこからそういうスタッフや薬を村の診療所に定期的に届けるという仕組みを一緒につくってきました。
そうすると、村の人々が簡単にHIV/エイズの治療を村の診療所で受けられるようになって、みなさん治療を続けられるというメリットが出てくるんですね。


■ モバイルARTサービスで現地スタッフを支援

ヨーコ:この活動を何と呼んでいるんですか?

宮野:モバイルARTサービスといいます。

ヨーコ:モバイルARTサービス?

宮野:モバイルというのは移動式、ARTというのはHIVの治療のことをいうんですが、街の病院から移動式でスタッフや薬が村の診療所へ、治療、HIVの治療のARTを届けるというので、モバイルARTサービスといいます。

ヨーコ:モバイルというととってもわかりやすいですね。

宮野:格好いいでしょ?

ヨーコ:村から街の病院というのは、やっぱり遠いんですか?

宮野:そうですね、街から村の病院、だいたい車でいうと3時間くらい、それもガタガタ道ですね、舗装されてないガタガタ道を行くような。

ヨーコ:高速で3時間とかじゃなくて。

宮野:全く違います。

ヨーコ:ガタガタした道を。

宮野:ガタガタした道です。

ヨーコ:それを村の人たちは車ではなくて、歩いて行くことにもなるわけですよね。

宮野:そうですね。村の診療所に薬がないので、山を越え、谷を越え、一晩越えて街の病院に行く方もいらっしゃいます。

ヨーコ:それだとなかなか検査を受けようとか、それから治療を続けようという気にはならなくなりますよね。

宮野:そうですよね。

ヨーコ:宮野さんは、このモバイルARTサービスの活動を広めてきたんですね。

宮野:そうですね。これをザンビアの厚生労働省であるとか、街の保健所だとか、そういう方々と一緒にやってつくってきました。
だいたい医者がこういう現地に行くと患者さんを直接診療して、現地の人を支援するということをイメージしがちなんですが、やはり現地の人に中心になってもらって、こういった仕組みをつくるということが海外の支援では大事なんですね。

ヨーコ:それはどうしてですか?

宮野:やはり我々みたいな、外からの国の来た人々が、その現地にずっといるということはなかなか難しいですよね。ということは、現地の人がそういった仕組みのなかで患者さんを診たりであるとか、薬を届けたりということができないと長く続けられないわけですよね。
それをうまく続けられるように、私は黒子となって仕組みをサポートするという感じになりますね。

ヨーコ:ちゃんとやっているかどうかとか、そういうのも見たりするわけですね。大変なこととかってやはりあるんですか?

宮野:大変ですよ、やはり。そういうガタガタ道で行くのも、私も日本で育っているので、慣れていないですし、村の偉い人々との関係であるとか、なかなかその仕組みをうまく活かせるのに人との付き合いも、やはりアジア人とアフリカ人でやはりカルチャーも違いますから、そういったところでの苦労はやはりありますね。

ヨーコ:全然違うなと思ったところって?

宮野:そうですね、たとえば、日本だと医者なり看護師さんて病院に何時に来なさいと来ますよね。なかなかそういう時間の観念も難しいですよね。
8時から診療所が開いているはずなのに、実際に開くのは10時だったりとか。患者さんは山を越え、谷を越え、朝早く来ているんですが、そういったスタッフの遅れを待っているということもあったりして。

ヨーコ:そういったところは、「どうなってるんだ!」というのはないんですね?

宮野:最初はもちろんイライラしたんですけれども、やはり現地の時間の流れというのが独特なのがあって、そういうふうに遅れて来ることも、患者さんが待たされることも当たり前になっているので、あまりそのへんはガミガミは言わないようにしてましたね。

ヨーコ:患者さんのほうも特にそこは気にせずに待っている?

宮野:そうですね、それがふつうの状況になっている、現地の文化ですよね。

ヨーコ:自分の、日本の文化を押しつけないということも非常に大事なことなんですね。

宮野:たいへん大事だと思いますね。


■ 歓喜の踊りに感動!

ヨーコ:一番うれしかった、いいな、これは大変だったけどやりがいがあったなと思うことはどういうことでしょうか?

宮野:いま言った仕組みづくりというのがザンビアの厚生労働省という、大きな役所ですよね、そういうところとつくったのですが、そういったつくった仕組みが本当に患者さんに村で届いているというのを見られたとき、
要するに国の中心で働いている立場と現地で実際にそういう仕組みが届いたときの両方がつながって見られたときに、やっぱりこの仕事をやっていてよかったなというふうに感じました。

ヨーコ:村に届いた患者さんたちはすごく喜ぶんですか?

宮野:そうですね。実はサービスが初めて届けられた日にヘルスセンター、診療所にいることがあったんですが、泣きだす患者さんもいたりとか。逆に現地の踊りですよね、奇声を上げて、身体を激しく動かすような、歓喜の踊りを披露してくださったりしてとか、「あ、よかったな」と。一番私が感動した瞬間の1つでもあります。

ヨーコ:この長期の派遣から帰って改めて思うことってどんなことですか?

宮野:そうですね。アフリカという違う文化のなかで3年半いたわけですが、それぐらい、3年半でも足りないかな、やはり現地に一緒に暮らして毎日新たに見えてくることがいっぱいあるんですね。
そのなかで現地の人と一緒にこういったHIV/エイズの問題を見つけ出したりとか、次に何をやればいいかとか考えたりいろいろするわけで、長期にわたって現地の人々と一緒に何かをするということが一番大事かなと今回思いましたね。


■ 暮らしや社会から病気を考えていく

ヨーコ:これまでいろいろな経験をされてきたんですが、今後は何を目指して仕事をしたいなと思っていますか?

宮野:そうですね、まだ世界にはいろいろな国があって、その国々でいろいろな状況の問題があって、私が医師という立場があるので、あくまで保健医療中心ですが、医療が社会につながった形でもう少しその国に役立てるように、いろいろなことをやっていきたいですし、まだ長期で住んだのはこのザンビアという国だけなのでほかの国でもこういった経験をして現地のために何かできればなあと思っています。
もともと私は病院、いわゆる一般の病院で呼吸器内科という肺の病気を診る医師をしていたのですが、そちらで肺の感染症ということで結核、まだまだ実は日本でもHIV/エイズとは別ですが問題なんですね。
結核という治療は、やはり社会的に弱い人々がなりやすい病気だったりして、たとえば在日の外国人の方とか、またホームレスの方とか、そういった方がなりやすい病気の1つなのですが、そういう方をやはり社会でケアしていく、守っていく仕組みはすごい大事で、それも実は国際の支援にもつながるところがあってですね...。

ヨーコ:結局、そういった結核とかエイズというのは、社会的にマイノリティーな方々がなりやすい病気でもあるということなのですか?

宮野:そうですね。そういうふうに社会では注目されている。より注目したケアといいますか、社会的な仕組みで人々を守ってあげるということが大事だと思いますね。

ヨーコ:今回みたいにガタガタ道を通って病院の外に飛び出してみて、何か気持ちが変わった部分てありますか?

宮野:そうですね、月並みですけれど、病気ってその人の一部分でしかないんですよね。
その病気を起こす背景がその人の家にあったりとか、その人が住んでいる村にあったりとか、ということが、実は病気を診るうえですごい大事だなと改めて感じましたね。
そういった、病気、プラスその人の暮らし、社会ということをつなげていかないと、なかなかこういった感染症、HIV/エイズや結核といった感染症が世の中からなくならないなというのを改めて強く感じましたね。


■ 地域に出ていく医療活動が重要

ヨーコ:ねえ、マスター、お医者さんが働くってどうしても病院の中ってイメージなんだけど、必ずしもそうじゃないのね?

マスター:そうだよね、病院とか医療に限らず、宮野さんみたいに地域に出かけていく、それでより地域の状況がわかってよりよい政策とかに役立つ、だから現地の人に役立つってことが大切なんだよね。
企業もそうだし、教育とかいろいろな分野でそういうことが必要なんじゃないかと思います。


ヨーコ:みなさん、今晩のグローバルヘルス・カフェはいかがでしたか? 今回は、HIV/エイズ対策をテーマに、国立国際医療研究センターの宮野さんからお話をうかがいました。お相手は香月よう子でした。それでは、またお会いしましょう。

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