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グローバルヘルス・カフェ

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聴く第16回「未来の看護に向かって」(2015年12月15日放送分)


<出演>
マスター:明石 秀親(国立国際医療研究センター)
メグミ:五十嵐 恵(国立国際医療研究センター/看護師)
ヨーコ:香月 よう子(フリーアナウンサー)


■ カンボジアで看護学を学ぶ人を増やす活動

ヨーコ:お元気ですか、グローバルヘルス・カフェ、香月よう子です。国際医療協力にかかわる人たちが通うカフェってちょっと変わってませんか。ここのマスターはとっても面白いので、わたし気に入って通っています。それではさっそく、カフェに入ってみましょう。

マスター:グローバルヘルス・カフェ、マスターの明石です。あ、あそこにいるのはメグミさんだ。国際協力に携わりたくて看護を勉強して、今、カンボジアとか途上国に行って頑張っているんです。
ヨーコ:マスター、何ぶつぶつ言ってるの?
マスター:あ、ヨーコさん、こんにちは。
ヨーコ:こんにちは。
マスター:メグミさんはカンボジアで看護学を学ぶ人を増やして、未来の看護師さんを増やそうということに頑張っている若手なんだ。
ヨーコ:へえ、看護学というのがあるんですね。
マスター:そう、看護学。看護師さんって、どうしても何かね病院の現場で仕事をするというところがよく見られちゃうんだけども、実は医療のなかでたいへん重要な役割を果たしてて、そういう意味で看護をもっと高めましょうということで看護学の大学とか大学院がどんどん出てきてます。カンボジアはね、ちょっと前までは看護学の大学ってなかったんです。それがまあ最近出てきたということですね。

■ カンボジアの看護師と勉強会を開いた

ヨーコ:メグミさん、こんにちは。
メグミ:こんにちは。
ヨーコ:メグミさんは長くカンボジアに行ってたんですか?
メグミ:いえ、短期で行っていました。1回目は1カ月、カンボジアの国立病院で働く看護師の支援に行ってきました。2回目は2カ月間、将来カンボジアの看護を担うリーダー育成の支援に行ってきました。
ヨーコ:じゃあ1回目のことからちょっと聞いていきたいなと思うのですが、実際のそのカンボジアの看護師さんってどんな感じだったんですか?
メグミ:私が働いてきたカンボジアの国立病院というのは、小さく生まれたり、あとは少し元気がなくて様子を見なければいけない、病気を持った赤ちゃんたちが入院してくる病棟だったんですが、生まれてくる赤ちゃんの数もとても多くて、入院する赤ちゃんも多いので看護師さんだけでは十分にケアをすることができなくて、家族と一緒に看護を提供しているという状況です。
ヨーコ:なるほど。日本とはだいぶ違うと思うんですが、そこでの看護とかケアというんですか、そういったものというのはどんなことをやられていたんでしょうか?
メグミ:看護師の仕事はたくさんあるんですけれど、やはり熱を測ったり、脈を測ったり、血圧を測ったり。そういうことを正しくできないと、赤ちゃんたちを正しく見てあげることができないので、きちんと異常があるのか、そうでないのかというのを判断できるように、そういうことを一緒に考える勉強会を開きました。
ヨーコ:それってふつうにやれることのような気がするんですけど、看護師さんなら。
メグミ:そうですね。やはり私たちも学校でそういうことをきちんと先生に教えてもらいながら身に付けていく技術です。そういう教育を受けてない看護師さんたちはそういったものの考え方をするのはやはり苦手ですし、もうちょっと強化していかないと赤ちゃんを救ってあげることができないんじゃないかなと思いました。
ヨーコ:要するに、ちゃんと測って、それで調べていくみたいなことっていうことを全然やってないということになるのかしら?
メグミ:そうですね。実際はなかなか難しいと思います。
ヨーコ:そこでどんなことをメグミさんはやってきたのでしょうか?
メグミ:最初は何を考えて看護師さんたちがケアを行っているかというのを、一緒にケアを通して観察するようにしました。
ヨーコ:観察というのは何でしょう、看護師さんと話し合うみたいな、「どうして、それやってるの?」って聞いたりする感じですか?
メグミ:そうですね。あと一緒に赤ちゃんの熱を測るのもやらせていただいたり、身体を拭いたりするのも一緒にやらせていただいて、どんなことに看護師さんたちが困っていて、どんなことを支援してあげたらもっとよい看護が提供できるのかなというのを一緒に活動しながら探していった感じですね。
ヨーコ:一緒に活動していってわかったことってどんなことあります?
メグミ:まず1つは、もっと看護師として赤ちゃんにやさしくして、赤ちゃんたちが早くよくなってほしいと思う気持ちというのは、そこで働く看護師さんたちも一緒で、お母さんたちが心配でお母さんたちもいい看護を提供してあげたいと思っていることがすごくわかりました。
ヨーコ:反対に、ここはもう少し何とかしたいなと思ったところはどういったところですか?
メグミ:先ほども話したように、どうしても勉強していないからなんですけれど、たとえばお熱が上がったときにただ冷やせばいいということでなくて、その原因は何なのか考えて必要な治療につなげられる看護というのを提供していってほしいなということは思いました。
ヨーコ:一緒に活動して、一緒に考えていくなかで、看護師さんが変わったなと思ったところって何かありますか?
メグミ:1回目のときは、勉強会を開いたら、たとえば呼吸を測るときは時計を使って1分間にどれくらい呼吸をしているのかというのを測るんですけど、お部屋にも時計はないんですが、看護師さんたちも時計をして働くということがなかったんですね。ですが、その勉強会の後、ある看護師さんが腕時計を着けて病棟に来てくれたんですね。それで一生懸命やっているとこを見せてくれて、「やろう」という気持ちがとてもうれしかったです。

■ タイの看護を目指すようになった

ヨーコ:そして2回目はカンボジアの看護師さんをタイに連れて行ってリーダーを養成していくというようなプロジェクトに関わられたということなんですけれど、これちょっと難しいですよね。どういうことなのかな、マスター?
マスター:ああ、これね。カンボジアというのは、学士、いわゆる大学教育が看護学で行われてなくて、そのなかで看護学校を出た看護師さんがいる。看護学校を出た看護師さんたちを学士、大学卒という形に、そういう教育を施してくれるところがタイの大学でやってくれるということで。
ヨーコ:要は編入みたいな形で学士になれるというような、そんなようなコースを作ってくれるプロジェクトということ。
マスター:日本でもあるんですけど、准看護師さんを看護師にするとか、それとはちょっと形は違うのですが、そういう看護学校出の看護師さんを大学卒という形にしてくれる。
ヨーコ:学問としての看護学ということが、看護の現場には必要だということを身をもって感じたメグミさんですよね。このプロジェクトに関わってみていかがでしたか?
メグミ:このプロジェクトで、タイで学んできた看護師さんたちが本当に自分たちの職場を見直してもっとよくしたい、もっといい看護を目指したいという強い思いを持って活動されているのが本当に印象的でした。
ヨーコ:いつも現場にいて自分がやることはすごい忙しいしわかってると思ってるわけじゃないですか、看護師さんたちは。タイの看護学というのを学ぶとやはり衝撃はあるんですかね。
メグミ:卒業生の皆さんは本当に衝撃を受けて帰って来ました。私も、この卒業生たちが何が一番変わったのかなと思って、私は短期間で2カ月しか関われなかったんですけれども、ずっと長く彼らに関わっていた先生に聞いてみたところ、彼らたちがタイから帰ってきて自分たちで言った言葉が「これまでの自分たちの看護は何だったんだろう」ということを自分たちの口で述べたようです。それを聞いて、タイでの看護というのが目指すべきものになってきたんだなということがわかりました。
ヨーコ:やはり、どうしてこうなるのかなという気持ちというのは生まれてると感じました?
メグミ:感じましたね。まず、モデルになる看護師さんたちが側にいてくれるということは、やっぱりそうなりたい、そういう看護が提供したいという環境にきっといたと思うので、自分たちがもっといい看護を目指したいという気持ちに変わっていったんだと思います。

■ カンボジアでの経験が自らの看護について考えるきっかけになった

ヨーコ:メグミさんは国際協力に関わってまだ日が浅いというか、新人という感じなのかもしれないんですけれど、そういった新人の目から見て、国際医療協力、国際協力ってどんなふうに思われますか?
メグミ:一番最初に、初めてカンボジアに1カ月活動させてもらったんですけれども、一番最初に思ったのが、自分一人で何かができるなんて本当におこがましいなと思ったのが正直な気持ちです。ただ、自分の経験と支援させていただく人たち、看護職の皆さんがこれから目指すところに何か一緒にできることがあるというのは、支援していくにはとても重要なことではないかと思っています。
ヨーコ:まだやっぱり自分も負けられない、勉強しなきゃと思ったりしました?
メグミ:そうですね。カンボジアのリーダーになっていくだろう彼らを見て、自分がその立場だったら、本当にこんなふうに自ら看護を変えていこうという気持ちになって行動に移すことができたかなあってそんなふうに思って、彼らたちの側で見ながら、自分もこれからの看護についてもっと考えていきたいなと思いました。

■ 国際協力を通して日本での当事者意識が芽生える

ヨーコ:ねえ、マスター、メグミさんはやっぱり海外に行って、途上国に行って、途上国を支援する立場にありながらそこで日本を見つめ直して自分とか日本ということをもう1回考えたりしていますけれど、そういうことってやはり国際医療協力ってあることなんですか?
マスター:すごくありますね。何となく支援というと、何か上の人から下の人に与える、あるいは指導するという側面が強く見られてしまうかもしれませんけども、教育全般なのかもしれませんが、相手が伸びる過程で、こちらも実は伸びてきている、あるいは相手が悩む過程で自分も悩んでいる。そういうことがお互い、単に支援を受ける側だけじゃなくて、支援する側も伸びていく、成長していくというところもあると思いますよね。何となくたとえば看護教育を改善する、学士になるということは何となく知識が増えればいいというふうに見られちゃうかもしれませんけれど、さっきのロールモデルを見つけたとか、自分のその、たとえば知っててもやらないということもあり得るわけですよ。面倒だからやらないとか。でもそうじゃなくて、これをやるということが重要だ、あるいはそれが規範として何というか身に付く。あるいはそういうことをやっている人を見て、「ああ、こういうふうになりたいな」と、そういうことが伝わってくる。そうすると、カンボジアの看護もそうかもしれないし、我々自身もそういうふうになってくるんじゃないかなと。そういう意味で我々も当事者。カンボジアの看護師さんのリーダーたちが頑張ってるように、我々も日本という国で当事者なんじゃないかなという気がしますけれどね。
ヨーコ:なるほどね。日本に戻って日本の当事者として頑張らなければという気持ちがやっぱり生まれてくるということですね。
マスター:そう思いますね。

ヨーコ:いかがでしたか? 今回は「未来の看護に向かって」をテーマに、国立国際医療研究センターの五十嵐恵さんからお話をうかがいました。お相手は、
マスター:マスターの明石秀親と、
ヨーコ:香月よう子でした。それではまた来月、第3火曜日午後5時10分にお会いしましょう。この番組は、生きる力をともに創る、国立研究開発法人 NCGM国立国際医療研究センターの協力でお送りしました。

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