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グローバルヘルス・カフェ

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※音声はこちらからお聴きいただけます。

■ カフェへようこそ!

香月:お元気ですか。グローバルヘルス・カフェ、香月よう子です。

「グローバルヘルス・カフェ」、世界の健康を守る、そんな名前のついたカフェって、ちょっと変わってませんか?

ここのマスターはとっても面白いので、私、気に入って通っているんです!

それでは、さっそくカフェに入ってみましょう。

■ "5Sカイゼン"って知ってる?

香月:マスター、こんばんは。

マスター:あー、こんばんは、よう子さん、いらっしゃい。どうしたの、いつもより遅いんじゃない。

香月:そうなの。今日、お友達のお見舞いで病院に寄ってから来たんだけど、少し遅くなっちゃった。病院といえば、マスター、日本は開発途上国の病院に専門家を派遣したり、機械を寄付したりしていますよね。それってお金がたくさんかかるよね?

マスター:そりゃそうだね。でも、国際協力はお金をかけないっていうのもあるわけ。たとえば、"5Sカイゼン"って知っているでしょ? 5Sというのは、整理、整頓、清掃、清潔、躾の頭文字を取ったSだけど、それを改善と組み合わせて外の国でやっていくということもあるわけ。

香月:それって、病院が清潔になってきれいになるってそういうことだよね。

マスター:まあそれもそうだけど、それだけじゃないんだよね。あ、そうだ、ちょうどいいところにいるからね、今日、池田さんと木多村さんが来ているから、彼らに聞いてみたらいいよ。

■ 開発途上国での"5Sカイゼン"

香月:池田さん、木多村さん、こんにちは。

池田木多村:こんにちは。

香月:いまマスターから聞いたんですけれども、お二人は途上国の5Sカイゼン、整理・整頓に詳しいらしいんですけれど、池田さん、整理・整頓すれば病院がきれいになって、利用者の気分がいいってそういうことだけではないんですか?

池田:そうですね、それももちろん一番大事なことですよね。でもそれだけじゃないんですよ。開発途上国の病院ってどういうイメージがあります?

香月:何かちょっと患者さんがあふれていて、あとは何にもなくて、薬とかもなくて。

池田:そういうイメージなんですね。本当に物がない、人がいない、でも患者さんは押し寄せる。そういうなかでどういうふうにして良い治療をするか。それを考える一つのきっかけが、5Sということなんですね。

香月:つまり、5Sを導入することによって、患者さんの気分がよくなる、そういう感じですか。

池田:そうですね。でもその前にスタッフですね、お医者さんや看護師さん、助産師さんのやる気がまず出るというのが5Sの一番の効果なんですね。整理、整頓、清掃、そして清潔にしていると、たとえば子供がちゃんと手を洗って、感染しづらくなったりとか、片付けられるから転ばなくなる、自分の身を守るということなんですね。自分の身を守る、命を守る、一つのシンプルなライフスキルというふうに考えてもいいんじゃないかな。

香月:なるほどね。そういったことをスタッフ全員で進めていくという感じになるのかしら?

池田:そうなんですよ。全員というのが大事で、みんなで一緒に参加する、運動のようなものなんですね。

■ 楽しく整理・整頓

池田:この5Sを病院に使ってみたのは、日本でもやっているんですけど、スリランカがけっこう盛んなんです。この病院を木多村さんが見てきたので。どうですか、見てきた感じは?

木多村:そうですね、最初スリランカの病院に行ったときは、さっき池田さんがおっしゃったみたいに、みんなでできるシンプルな簡単なことから、机を並べるとか、カルテを整頓するというようなことを、本当に毎日少しずつ、5分くらいというふうに進めていって、ある部署がきれいになることによって、それを見た他のスタッフさんが「僕たちもやりたい」ということになって、病院全体に広がっていったんですけれど、実際、見に行ったときにはもう病院全体がすごくきれいになっていて、一番印象的だったのは、働いているスタッフさん一人一人が自分たちが病院をつくって病院を守っているんだという気持ちが本当にすごくあふれていて、しかも廊下で会うスタッフさんがみんな笑顔なんですね。思わず、私、すごいそこで働きたくなってしまったりしたことがあります。

池田:この5Sは日本から生まれた文化なんですけれども、自分たちでやっぱり何かしようと、まずは身体を動かしてやろうという、そういうものですから。ちょうどアフリカのビデオがあります。これはアフリカの母子病院のスタッフが、私たちが行ったときにサプライズで歌ってくれたんですね。これは5Sの歌で、自分たちでつくったんです。自分たちでつくって、それをみんなで歌っているんですね。そのなかに、よく聴くと、整理、整頓、清掃という言葉が出てきますから。

♪~歌~♪

 

池田:整理、整頓と言っていますよね。

香月:これ、歌っているのは?

池田:この病院で5Sを進めている、5S推進委員会の人たち。だいたい、病棟の師長さんだとか、お医者さんも入っていますね、このなかに入っています。木多村さんがマダガスカルに行っていたこともあるので、マダガスカルの病院、どうだったですか?

木多村:そうですね。マダガスカルも本当にベナンと同じように、こうやって歌をつくったりとか劇をやったりとか、本当にみなさん上手なんですけれど、あとはマダガスカル、特にアフリカの方たちはすごく想像力というか色使いとかがすごく上手で、整理・整頓とかもいろいろな色分けをして整理・整頓するんですけれど、その色の使い方に国旗の色を使ったりとか、すごくみなさん楽しそうにやっているんですね。やっぱり人から言われたのではなくて自発的にやっているというのは、こんなに長続きして続いていくんだなって思いますよね。

池田:自発的というのがすごく大事です。

香月:なるほど。

■ "お客様専用"のマダガスカルのコーヒー

香月:ところでマスター、今日の飲み物は何ですか?

マスター:今日はね、珍しいマダガスカルのコーヒーです。

香月:木多村さんね、マダガスカルから帰ってきたばっかりなんですよね。

マスター:そうそう、コーヒーがあんまり採れない、貴重なコーヒーなんですよね。

香月:えー。

木多村:そうですね。コーヒーは高地でないと採れないのですごく貴重なんですよね。

マスター:だから、ふつう現地の人はあんまり口にできない。

木多村:お客様専用のコーヒーです。

香月:では特別にその貴重なコーヒーをいただいてみたいと思います。

マスター:どうぞお召し上がりください。

池田:向こうではコーヒーメーカーとかないから、杵でコーヒー豆をついてそれをフライパンで煎ってそれをまた濾すんだね。

木多村:水草でできたカゴみたいなの使って、コーヒーフィルターがないので、それを使って。

香月:そんな貴重なコーヒーをいただいたんですが、とてもコクがありますね。

池田:そうですね。

■ お金かけずにできる"5Sカイゼン"

香月:5Sという運動を開発途上国の病院で始めて、その結果、具体的にここがよくなったとか、あそこが改善したとか、そういった例をもうちょっと聞いてみたいなと思うんですが、これアフリカにも広がっているんですよね、木多村さん。

木多村:そうですね。さっきご紹介したマダガスカル以外にも、もうアフリカ何カ国でしたっけ、池田さん?

池田:15カ国ですけれども、いまもっと広がっていますかね。

香月:もうすごく広がっているということなんですが、これ広がっていったというのはどうしてなんですかね。

池田:まず5Sの、特に整理、整頓、清掃というのが簡単なことだし、明日からすぐできる。

香月:お金かけないでできる。

池田:お金がかからないというのが一番ですね。

木多村:お金がなくてあきらめていたことが、

池田:できるようになる。

香月:スタッフとかも、お金がないから無理だ、うちはちょっとこういうことは無理だと、やる気がなくなっていることがあるんですね。

池田:それを1カ月くらいやってみると、何か仕事がやりやすくなったり、みんなが笑顔になったり、それから院長先生からほめられたりして、ちょっとしたことで、その小さな小さな一つの成功体験ですね、そういう積み重ねが広がった大きな理由だと思いますよ。

■ 5Sにより新しい価値が生まれる

香月:モチベーションが上がって、そしてもっともっと患者さんに対するサービスというかそういったものも変わってくるわけですか?

池田:そうですね。たとえばセネガルなんかでも、なかなかスタッフの時間が取れなくて、仕事ばっかりしているんだけども、だんだん5Sをやることによって患者さんをちゃんと見ようという文化、空気が出てきて、たとえば患者さんをちゃんと見ているといろんな事故やなんかも防げるということが実際観察されていますけれども。

木多村:やっぱり5Sが入ると働く環境がよくなるので、そうするとスタッフの方にもちょっと時間ができてきて、患者さんに目が行くようになって、たとえば陣痛で苦しんでいるお母さんを一生懸命見るようになる。見ることによって医療的なミスも減るんですけれども、最後に赤ちゃんを産んだお母さんから感謝の言葉があったりすると、すごいスタッフの方もうれしいみたいで、それを励みにますます5Sをがんばっていこうとか、もうちょっと患者さんを見ようなんていう気持ちがスタッフに育ってくるというのが5Sの醍醐味の一つかなと思うんですけれども。

池田:実は新しい価値なんですよね。いままで自分たちが感じてなかったこととか、実現していなかったことが自分たちでできるようになったということですよね。そういう新しい価値がアフリカで生まれている。自分たちでつくった価値なんですね。

香月:なるほどね。

木多村:日本で生まれた価値に、発展してまた新しい価値を見つけてくれるということはとってもうれしいことですね。

池田:それをだからこれからどういう風になっていくのかを見るのが楽しいですね。

木多村:そうですね。

■ 詳しい情報は"国際医療協力局"のサイトで!

香月:ねえマスター、今日の池田さん、木多村さんの話のなかでもね、「病院のスタッフと患者さん両方の笑顔が行き来する」みたいな、そんなところがあってとても印象的だったんだけど、日本の病院ってどうなのかな?

マスター:日本人そのものが、整理・整頓を子供のときから親しんできたという意味で、5Sカイゼンにつながる活動というのは自然とやっている部分もあると思いますね。

今日の話の詳しいこととか写真は、国立国際医療研究センターのホームページを見るといいですよ。そのなかの国際医療協力局のページにいろいろ載っています。

香月:国際医療協力局のページですね。帰ったらさっそく家でチェックしてみたいなと思います。それからマスター、私ももっともっと整理・整頓やらなきゃなと思っちゃった。

 

香月:みなさん、今晩のグローバルヘルス・カフェはいかがでしたか? 今回は、整理・整頓をテーマに国立国際医療研究センターの池田さん、木多村さんからお話をうかがいました。

お相手は香月よう子でした。それでは、またお会いしましょう。

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