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第23回AIの可能性と人間の役」(2017年4月25日放送分)

 

<出演>
マスター:明石 秀親(国立国際医療研究センター)
藤沢:藤沢久美(シンクタンク・ソフィアバンク代表/常連客)

 番組では、みなさまからのご意見・ご感想を募集しております。
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 お寄せいただいた内容は、番組内でご紹介させていただく場合がございます。

 

【AIが新聞記事を書く!?】

マスター:あ、藤沢さんいらっしゃい。今日は何にしますか。

藤沢:今日ね、朝からコーヒーたくさん飲んだので、ちょっとハーブティーにしてリラックスしてみます。

マスター:ハハハ、それは新しい注文ですね。それでは特別にお作りします。

藤沢:ありがとうございます。マスターブレンドで。

マスター:新年度が始まって、桜も散っちゃいましたけども、藤沢さんは決算とか大変なのでは?
藤沢:実は4月の頭は2週間ほどアルゼンチンに行ってました。決算作業はなかったんですけれども、決算の取締役会というのがあって、アルゼンチンから電話会議で、スカイプを使って決算役員会に出てました。
マスター:なるほど、それは大変ですね。
藤沢:でも便利になりましたよね。
マスター:そうですよね。決算とか、計算大変そうなんですけど、いまどきの人工知能というんですか、AIとかそういうのは使ってらっしゃるのですか。
藤沢:そうですよね。今日は人工知能の話を盛り上げなければいけないんですよ。最近、いろんな会議に行っても、人工知能話はとっても盛り上がるんです。新聞記事で決算の情報ってありますでしょ。あれって実はもう会社が決算の結果こうなりましたと届け出を出すと、人工知能が自動的にそれを新聞記事にするというのは世界的に動いていて、日本経済新聞社はいよいよそれを日本でも始めたという。
マスター:サービスを?
藤沢:はい、4月から。
マスター:進んでますね、やっぱり経済界は。
藤沢:アメリカの通信社なんかはもう数年前から取り組んでるんですけれども、微妙な数字の違いを微妙な言葉遣いで、ちゃんと人工知能、AIが表現してくれるんです。ちょっとだけ業績が上がった時は微増とか、そういう言葉をちゃんと使うとか学習しているらしいです。

AIによる途上国の医療支援が期待できる】
マスター:私、保健医療の分野にいるので、途上国に行きますけど、途上国にもこれAIがあったほうがいいかなというのもあるわけですよね。

藤沢:例えば?
マスター:病理診断というんですけれども、胃のポリープとか取って、それを切片にして、昔ふうでいうとそれを染色して顕微鏡で見るという形で、これはたとえば悪いものだろうか、悪くないんだろうかとか、そういうような判断をしなきゃいけないんです。
でも途上国では、そもそもそういう病理診断をできる人がいない場合がある。
そういうときにいわゆるAIが、それを見て、これはがんじゃないの、これはがんじゃないんじゃないのというような診断ができるようになってくれれば。
例えば途上国で専門の病理のお医者さんがいなくても、その切片をどこかへ送れば、あるいはそれをコンピューター上でカメラでパチャっと撮ればソフトが起動してこれは何々みたいな、要するに診断がついちゃう。
途上国で病理医の人を養成するのは時間がかかるので、そういうことの代わりにAIがやる。

ただ実際にそれは完全に動いてるとは限らないんです。聞くところによると、要するにブラックボックスですよね、AIって。だからインプットしてそれが例えばがんではありませんと出た時に、このブラックボックスの中でどういうプロセスが起こってるか分からないから、それが出てきたアウトプットが本当なのかどうか、それを考えなくてはいけないというようなこともあるみたいなんですけれどもね。

藤沢:そうですね。去年でしたっけ、ニュースにもなってましたけど、肺がんの診断を画像で見た時に肺がんかどうかというのをAIと普通の生きてる先生とどっちが正しく診断できるかという実験があって、AIのほうが正確だったというのがもうすでに出ているくらいなので、たぶんそういうのが進んでいって、途上国のほうなんかだと、そういう検査に病理をかけるというところまでの作業の人をまず早く育成して、診断は人工知能と。
でもお医者さんと話したときにこうおしゃっていた。確かに画像診断はAIのほうがもう進んじゃっているけれども、生身の先生というのはその時に同時に臭いとか表情とかそういうのを見て深刻度合とか真偽をちゃんと判断するから、やっぱり人間がいないと最後は正しいことはできないんだと。そういう意味じゃ最初の段階で疑いが高いかどうかはAIでやって、疑いの高い人だけ先生のところに行くとかしたほうが、もしくは先生を送るとかしたほうが。途上国だとみんながみんな病院に行くというのは大変ですもんね。

マスター:特に地方だとね、やはり人がいないですし。あと都市部でも医者のところに行けば診断してくれるだろうというのは先進国の感覚です。
ある途上国では、私も直接そこに居合わせたことがあるんですけど、例えば患者さんが「お腹が痛い」と。日本だと普通はちゃんとお腹を診察して所見を取って、これは何々の疑いが強いから、じゃあこういう検査をしたらいいねという話になる。
ところがその国では、お腹が痛いのは分かったと、じゃあ痛み止めを出しておくという。その痛み止めは潰瘍を悪くする薬もあってですね、結局、穴が開いちゃってそれで手術すると、そういうこともあるわけですよね。
だから、そもそもその病理診断みたいな画像診断の部分と、そもそも普通に診察する、あるいは次にどういうことをやったほうがいいんじゃないみたいな。
例えば、お腹が痛いとポチっと押すと、じゃ次に何やったほうがいいんじゃないのとか、インストラクションするとか、そういうことも必要なのかなって、要するにやっぱり人がいない。

藤沢:そういう意味じゃ私達スマホを持っていて、スマホの中でそういうアプリがあって、お腹が痛いって押したら次にじゃあどんなふうに痛いですか、キリキリ痛いとか食前に痛いとか食後に痛いとか聞いてくれたら、食前に痛いとかというと潰瘍の疑いがあるかもしれませんねといって出す薬が変わるとか。そういうのとかあってもいいかもしれないですね。

マスター:そうですよね。

藤沢:途上国とか新興国に行くと、お医者さんまで遠いし、簡単に行って診てもらえないし、診てもらってもさっきみたいに痛み止め出しておきましょうだと怖いので、アプリがまず広がってアプリである程度診断したものを持って、「あなたお医者さんに行ったほうがいいですよ」とか、「家で何とかしましょう」とか、あと薬局はあるのかしら。

マスター:薬局は都市部と地方で違って、やはり地方だと、多くの場合あるのが露店市場みたいなのがこう連なってるところがありますよね。そういうところに薬を売る人がいる。だから必ずしも薬剤師さんが売っているわけではない。

藤沢:でもお医者さんよりは近くに薬局はある。

マスター:そうですね。

藤沢:じゃあ今みたいなアプリがあれば、それ持って行けばお医者さん行くよりちゃんとした薬がもらえるかもしれない。

マスター:サービスであるかもしれないですね。露店だけれども、あそこのあの薬局へ行くと、とりあえずAIで何か聞いてくれるらしいよ、とか。

藤沢:今までよりも当たり外れが少ない薬がとか。

【言葉の壁をなくすためのAIの活用】
藤沢:あと私この間アルゼンチンに行って、アルゼンチンの現地の駐在員の人たちと話していると、みんな困ってたのはやっぱり海外に来ると体の調子が悪くなった時に言葉の壁で説明できない。
マスター:なるほど。
藤沢:これも人工知能、活躍できるんじゃないとか思って。
マスター:そうですよね。今それこそ「Siri」でしたっけ、いろいろありますよね、翻訳ソフトじゃないですけど。

藤沢:「Google 翻訳」とか、マイクロソフトも出しました。「お腹がキリキリと痛みます」と、例えば英語や、アルゼンチンだとスペイン語ですが、言葉を覚えていなくてもそれが伝わる。先生が「それは膵臓がんの疑いがあります」とか、先生が言ってくれたのをそのまま音声で翻訳できたりするから、音声のAIって諸外国で医療支援をするうえではすごく役に立つんじゃないかなって。

マスター:そうですね。日本国内の今インバウンドだ、アウトバウンドだという、インバウンドのところにもあるんでしょうけど、これだけ逆に外国と行き来している時代だから外国でどうアクセスするかというのも重要ですよね。

藤沢:だからマスターみたいに海外に支援に行かれた時にその地域の人がすごい大変なんだけど、お互い言語が英語ではないから伝えるの大変という時にこのAIの翻訳機みたいなのがすごい便利だと思いますね。

マスター:ただ希少言語というか地域の人たちって結局、地域語でしゃべってるじゃないですか。それもできちゃうんですかね。

藤沢:できちゃいますね。今、「Google 翻訳」だと何十種類も言語入ってます。なので、相当な言語まで使えるはずです。

マスター:そうなんですか。

藤沢:なので、本当に方言とかになっちゃうと難しいかもしれないけれども、その地域でその国の言葉をしゃべれる人はいるだろうから、そういう翻訳機とその国の人がいれば何とかなるんじゃないかなと思いますね。

マスター:そうですね、確かに。

藤沢:あと最近、私のベンチャーのお友達たちのお家に行くと、「Amazon Echo」という機械が置いてあって、家じゅうの家電とかにつながる、ただの丸い筒なんですけど、「Alexa」という名前なんですよ。で、「Alexa、電気をつけて」と言うと電気をつけてくれたり、「Alexa、エアコン消して」と言うと消してくれたり。

マスター:日本ではないんですか。

藤沢:日本はまだ、もうすぐ発売だということです。今、英語とドイツ語しか対応しないんですけど、「Alexa、フラメンコの音楽をかけて」と言うと、バーっとネットで探してきてフラメンコの音楽をかけてくれたり。

マスター:それすごいですね。

藤沢:「Alexa、洗剤がなくなったから」と言うと、アマゾンから発注して送ってくれる。

マスター:めったなことは言えない。

藤沢:なのでずっと「Amazon Echo」、「Alexa」はをずっと耳をそばだてていて、「Alexa」と呼ばれるのを待ってるんですね。でも、これって緊急の時とかすごく役に立つなと思って。ちょっと目まいがしてすぐに電話をかけたいけど震えちゃってかけられないという時に、「救急車!」とか。

マスター:「助けて!」って言えばね。

藤沢:「助けて!」と言うと、誰かが来るとか。すごく使えるなと思って。

マスター:なるほど。なんかSFの世界になってきました。

藤沢:でもそれも全部裏はAIですからね。初期的な人間の代わりをこのAIはいろいろやってくれるので、何か遠く離れてマスターのような立派な先生がいらっしゃらないところでも、ちょっと助かる確率がAI使えばあるんじゃないかって。もう本当、いろいろな使い方ってあると思うので、いろいろやってみるといいなと思うんですよね。診断もできるし、緊急で呼び出しもできるし、いろんなことが。でも人間の役割って絶対あるでしょ。

マスター:ありますよね。 

【AIの普及により注目されるのは人間の重要性】

マスター:ハーバード・ビジネス・レビューかなんかでAIの話が出てて。AIのこと考えると、知性のこともそうかもしれないけど、ヒューマンっていうか、人間、先ほど「AIが出てるけど、でも人間のところがあるでしょ」っておっしゃってたじゃないですか。そこのことが何かより重要度が出てくるというかね。

藤沢:まさにそうだと思います。AIはかなり人間の脳のある部分の補助はしてくれるんだけど、心の共感とかそういう部分はまだ置き換えられるような能力は持ってないので、人工知能にできない部分というのはその人の言葉にしてない気持ちをくむとか、言えないことを感じてあげるとか、そういうところは人間しかできないので、ますますこの人工知能、AIが普及していけばいくほど人間の重要性......

マスター:何か試されますね。

藤沢:すごい大変。なので、そこの部分がより光が当たっていくんじゃないですかね。「医は仁術」という言葉がありますけれども、何かそういう部分が。

マスター:何か私、医療だけじゃなくてね、サービス、人と人が接するというか付き合うというか、そういうことそのもの全体が、AI発達してきたよって、でも我々人間だよねって。AIと話してるのと違うよなっていう部分が何か逆にクローズアップされてくるのかもしれない。

藤沢:そう思います。あらゆる分野でそうなっていくと思うので、会社の中でも仕事が100あったら、100のうちどの部分がAIでもできることかというのをすごく今いろんな企業は整理をし始めていて、AIでできることはAIに――AIは最初の初期コストはいりますけど別に給料くださいと言わないので、できるだけそっちに移して。で、AIにできない、人間にしかできないところを人間がやる。その能力を人間に磨いていただいたり、その能力のある人にたくさんお給料を払って、これが企業の差別化ポイントになるという。だから医療支援もそうなるんじゃないですか。どこの国の支援がいいとかっていうときに、AIの性能はみんな一緒になるけど、人としてどのくらい、あの国の医療支援の人が来てくれたほうが、何かみんなハッピーだとか、元気になれるとか、自立できるとか、そこは結構競争力があると思います。

マスター:重要ですね。人間力というか、教育にも響きそうだし、他の技術にも響きそうだし、何かどんどん広がりそうな雰囲気ですね、これ。

藤沢:だから、どこをAIにするかというのは本当、各企業も医療支援の世界も早く取り組んでいたほうがいいと思うんですよ。人工知能にどこが置き換えられるかというのを見極めるのが今、経営者のすごい大事な仕事だと思いますね。何かしばらく、今日はAIの話でしたけど、いろいろなこれからテクノロジーって考えていくとロボットもあるしドローンもあるし、いろんなものをどう医療に使っていくかなんていうのはマスターとこれからも話していきたいなあって思いますけどね。

マスター:私こそ、ぜひお話させていただければと思います。

藤沢:ネタ仕入れておきます。

マスター:またおいしいハーブティーも仕入れておきます。

藤沢:お願いいたします。

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