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聴く第26回「途上国の高齢化を考える」(2017年11月21日放送分)


<出演>
マスター:明石 秀親(国立国際医療研究センター)
藤沢:藤沢久美(シンクタンク・ソフィアバンク代表/常連客)

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【NCDsと高齢化は表裏の関係】

マスター:あ、藤沢さん、いらっしゃいませ。今日は何にしますか。

藤沢:今日は外寒いんですけれども、このお店入ったらとってもあったかいので、ちょっと冷たいもので。

マスター:じゃあ、アイスコーヒーですか。

藤沢:いやあ、アイスチャイでもいいですか。

マスター:アイスチャイ、珍しい。

藤沢:インドの気分で。

マスター:インドの気分。じゃあマハラジャな感じで。

藤沢:前回はヨルダンのお話とか、日野原重明先生のお話から、NCDsって私も初めて聞いた言葉でしたけれど、非感染性疾患というんですか、感染病ではない病気。このお話を伺って、成人病とかああいうものだというお話でしたよね。

これが先進国、私達日本とか、先進国だけじゃなくて、途上国にも問題になっているというお話を伺って、私もびっくりしたんですけど、リスナーさんからもびっくりしましたというメールをいっぱい頂いていて。

例えば"ぼこちゃん"50代、男性ですけれども、「楽しく拝聴しております。先進国だけでなく、肥満などの生活習慣病は、発展途上国でも問題になっているのですね。その反対に貧困層は栄養失調という現実があり、とても考えさせられる深い内容でした。これからも頑張ってください」って。

マスター:ありがとうございます。

藤沢:ありがとうございます。ほかにも"どきんちゃん"とか"まつさん"とか"みゆたろうさん"とか"マスカットさん"とか。みんな「途上国にも生活習慣病があるってびっくりしました」という。

マスター:ああ、そうですか。そうですよね。

藤沢:意外なことだったんですけど。このNCDs、こういう感染性ではない病気で人が亡くなっちゃうというのはどういう背景があるのでしょうか。

マスター:もともとは前の時もお話したかもしれませんが、感染症だからばい菌とかにうつって病気になって亡くなってしまう。というか、あるいはお母さんと子供がよく亡くなる。とか、事故とかそういうので亡くなるというパターンが多かったわけですけれども、逆にそういうのがだんだん予防接種とかですね、母子保健のいろいろな介入というかな、支援でだんだん良くなってくる。
早く亡くなる命が減ってきて、その分だんだん長生きになってくる。
長生きになってくるに従ってだんだん生活習慣病ですね。糖尿病とか高血圧とか、がんとかもありますが、そういうのがだんだん比率として増えてくる、ということが起こっている。
その背景には逆にいうと高齢化が起こってきているということの裏返しだとは思いますけれどもね。


藤沢
:つまり高齢化が起きているということも含めて、結局、医療の技術とか保健医療とか、要するに医療技術、公衆衛生とかもあるんでしょうけれども、医療に関わる技術がすごく進んで治っちゃうよというか、治すことができるようになったというのも大きい理由ですね。

マスター:あとはその治すだけではなくて予防、例えば予防接種を広げるとか、そういう公衆衛生的なもの、あるいは水、綺麗な水とかですね、トイレの話とか、そういうことも含めて医療と公衆衛生的なそういうのがだんだん効いてきたというか、効果が出てきた。その背景があってこういうことが起きてきていると思いますけれどもね。

藤沢:そうするとますます高齢化って、結構大きなテーマ、医療の世界で。

マスター:そうですね。ご存じのように日本は超高齢化社会になってきて、世界的に見ても高齢化のトップランナーだというのは皆さんよくご存じだと思いますけれども、それが日本だけじゃなくていろんな国々で次々に起こってきているという。

だから日本よりも場合や国によっては速いスピードで高齢化が起きているということになりますよね。

【高齢者が活躍すると健康につながる】

藤沢:そうすると高齢者の人たちというのは、どういうふうにこれから生きていったらいいのか、社会でどんなふうに活躍していったらいいのかとか、いろいろなテーマがあると思うんですけれども、先に速いスピードで高齢化が進み始めている国があるとするならば、そういう国では一体何が起きているかって、ご覧になっていていい例ありますか。

マスター:それがね、途上国によく行ってるんですけど、そこの高齢者たちをきっちり見てるかというとあんまりちゃんと見てなかったなって。逆にこれ反省なんです。
ただいえるのは、例えばご高齢の方たちの居場所がある世界も多々ありますよね。

日本の昔もそうかもしれませんけれども、例えば技術を次から次に伝えるような職業であればご高齢の方が技術をすごく持っていて、あるいは経験を持っていて、それを子供に伝えていくという意味で一番技術がある人たちだし、仮にそうじゃなくても家の中であるいは社会の中でコミュニティの中で、高齢者の方が役割を与えられている、それは村を見る人かもしれないし、子供を見る人かもしれないし、そういうところがありますよね。

藤沢:やっぱり高齢社会になっていくと考えると、いくつになっても社会もしくは家、地域で役割がないかあるかというのはすごい大事になってきますよね。

マスター:そうですよね。
だからある年齢で定年、定年の後は役割がないというか、「はい、あなたリタイアですよね」ということがいいのかどうかね。
それはちょっと考えなきゃいけないのかなっていう気もしますけれどね。

藤沢:そうですよね。
最近、日本政府が人の働き方の改革とかいろいろな話のなかで、人生長くなってるので、リカレント教育という言葉を使っていて、大人になってからもう一回大学に行って勉強して、次にまた活躍できる人生を拓きましょうみたいなこと言っている。
今まで働いてきた会社で身に付けたものをずっと使って定年後も生きていくっていうんじゃなくて、また途中で新しい知識とかスキルを身に付けてもう一回活躍をする場を作りませんかとかいうのもやってますよね。


マスター
:そうですね。あとそれに近いのかもしれないですが、リンダ・グラットンさんの『ライフ・シフト』でしたっけ。

いついつまでが働く年齢で、いつからはリタイアでみたい分け方じゃなくて、あいだあいだに子育が入ったり、あいだあいだに休みが入ったりみたいな形で、定年という形じゃなくて、言い方変ですけれどもサンドイッチみたいにいろんなものが入ってくる、そういうような生き方みたいなのも確かに提唱されてますよね。

藤沢:リンダ・グラットンさんとかね「人生100年」みたいなことおっしゃってる。長くなるということはきっとそうやっていろんな人生にチャレンジしたり、いろんな役割を担うようになるとやっぱり健康にも気を遣うし。
暴飲暴食して太っちゃうと人とのお約束に間に合わなかったとか、病気になっちゃって休まなきゃいけなくなっちゃうとか、結果的にあるから自分で予防するというか。


マスター
:私は医者で、我々医療従事者って、個人の人が病気になりました。
それで、病気を治してほしいと個人個人は思いますよね。
あるいは痛みを軽減してほしいんだとか。結果として長生きしたいとかいうことに対して対応しようとする。集団にとっての健康にとってよかれと思ってやる。
そのことの結果として、高齢社会が出てくる。

高齢社会になって長生きしたんだけど、気持ちは不幸なんですという社会を目指して医療をやってるのか、保健をやってるのかというとそうじゃないだろうなと。

じゃあその先に何を見るのか。
あるいはその先にどういう世界を描くのかという、そのことが今問われてるような気がするんですよね。
そうすると、それこそ藤沢さんの広い知識なりご経験で「こういう社会もあるんじゃないの」あるいは「こういう未来像がいいんじゃないの」とか、もしあればお聞かせいただければと思います。

藤沢:丸投げされてどうしようという感じがありましたけど。

でも、ぜひリスナーの皆さんにも、ずっと現役でいれるというか、死ぬまで幸せにいるために、どんなこと考えてらっしゃるかとか、それからどうあるべきかとか、アイデアあったらぜひ聞かせていかせていただきたいと思います。
あと私なんかいろいろな会社で役員とかアドバイザーとかやってると、会社の中には一回お辞めになった方々が実はいっぱい知恵を持ち、実はこの何十年かの間に機械化とかシステム化が進んでしまって、何でこういうシステムを作ったのかとか、どういう理由でこういう機械化になったかという、原理がわからないまんま機械システムを使ってる人たちがいて、トラブルが起きた時にもしくは新しい技術新しいものを作ろうと思った時に根本原理がわからないからできないということがある。

それで退職された方に「すいません、もう一回持って戻って来ていただいて、もともと何があったのかというようなところから一緒に新しいシステムとか機械を考えてくれませんか」というのもあったりするんですね。
そうやって再び昔の知恵とかを使いながら会社で活躍していただくというのをもっといろいろな会社がチャレンジするというのもあると思いますね。

【高齢者が自分で健康を考える仕掛け作りが必要】

マスター:国際保健をやって病気が少なくなって、結果として人口はどんどん増えてくるし、みたいな話もあるわけですよね。
それで、そのことが結果として例えば目先のって言い方変ですけれども、良かれと思ってやっていることが積み重なってきて、全体としてどうなんだろうという、そういう見え方をしてくる時代になってきている。

だから、高齢化って結果としてそういうふうになってきているんだけど、そのことを超えてかなきゃいけないという言い方は変ですけれども。何て言ったらいいのかな。

藤沢:マスターのおっしゃってることってすごい深い問いで、良かれと思って人のためになることをしていくんだけれども、結局、してもらってる人自身がやっぱりしてもらってることを意識し、そして自分の力でどうやって健康に豊かに生きていくかということにコンシャスになるというか、よく自分のこととして考えるようにならないと。
結局、周りがどんなに助けても本人が意識を変えていかないと、結局良かれと思ってやったことがマイナスに働くというか。それはわざとやってるんじゃなくて、たぶん教育とか知識とかがなくてそうなっているというのもあるんだと思うんですよね。
生き物って基本的に怠惰だと思うんです。

マスター:なるほど。

藤沢:タンザニアのサファリに行った時のはなしなんですが、サファリの真ん中にすごい道路が通ったんですね。
その道路を通った時に「交通事故でシマウマとか死んじゃうんですよ」とおっしゃってて、ああそうなんですかと言いながらサファリを見ていると、ライオンが一生懸命シマウマを追っかけていて、「ライオンとかもシマウマを追っかけて大変ですね食べるのに」と言ったら、「いや最近ああいう走るラインは珍しいんですよ」って。

高速道路の脇でみんな待機してて、轢かれる動物を待っている。
待ってたほうが走らないで獲物を捕れるので走るライオンは減ったんですって。

生き物というのはみんな怠惰なんだと、楽できるんだったら楽しようと思うんだ、だから人間だけじゃないんだなって。

遺伝子に組み込まれている。なので周りがどんどんその人たちのためと思って安全地帯を作ると遺伝子がじゃああまり努力しなくていいかなってなるのかなぁって。

マスター:なるほどね。ライオンも生活習慣病になりそうですね。

藤沢:これからはサファリの動物もNCDsですか、可能性があるんじゃないかぐらい。

マスター:それは面白いな。

藤沢:そう考えるとずっと自分が元気でいるために何をしなきゃいけないか、一人一人の本人が考えるようなきっかけ作り、また環境作りというのがすごく大事になってくるのかなと。

マスター:先ほど、ホープソープという石鹸のお話をお聞きして、それは南アフリカで子供たちに石鹸で手を洗ってほしいと、石鹸を透明にして中におもちゃを入れて、洗っていくとだんだんこれが減ってきておもちゃが出てくる。
結果として手はよく洗うようになるということで感染症が減るというアプローチをしているというふうに聞いたんです。

それは要するに、手を洗うという行為そのものに熱心になるというよりは、もしかするとおもちゃを得たいということに熱心にはなるあまり、結果として手を洗う。
ゲーミフィケーションみたいな考え方ですよね。だから、怠惰もそうかもしれないけれども、たぶん楽しげなことには一生懸命になる。
だから、もしかしたらライオンも楽しげな狩りだったら走るかもしれない、わからないけど。


藤沢
:確かにそうですよね。それもあるかもしれない。
そういう意味じゃ高齢社会で高齢者の人たちが楽しいと思えるようなゲーミフィケーションだったり、環境作りだったり、システム作りしないと、恐怖を語って、そのままいくと成人病になるから運動しなければいけませんとか言われると、何かそれで人は動かない気がしますよね。

あとは「高齢者」という言葉もたぶん変えたほうがいい気がして。
私ね、実は50歳になったんですよ。そうしたら映画館に行くとシニア割というのがあって。

何か言葉でも「あなたは必要です」って言われているような感じがすごく必要じゃないか。
だんだん自分事になってきてどうしようって思ってるんですけど。

マスター:よくわかりますね、その感じ。

藤沢:言葉の使い方、ネーミング、それからおっしゃるように楽しいと思えるような仕掛け。役割がある感じ。誰かのためになっているっていう感じ。
そういうのをいろいろなところで考えれば。
これからの時代って、たぶんいろんな人が一緒に楽しめる仕掛けっていろんな人が考え始めてると思うんで、大募集したいですよね。

マスター:大募集しますかね。

藤沢:大募集したら、またマスターからお土産もらえるかもしれないですね。

マスター:その時は準備します。

藤沢:よろしくお願いいたします。

マスター:今日はありがとうございました。

藤沢:ありがとうございました。

 
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