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グローバルヘルス・カフェ

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聴く「第5回(2013年10月18日放送分)」


<出演>
マスター:明石 秀親(国立国際医療研究センター)
橋本:橋本 千代子(国立国際医療研究センター/看護師)
香月:香月 よう子(フリーアナウンサー)

■ カフェへようこそ!


香月:お元気ですか。グローバルヘルス・カフェ、香月よう子です。

「グローバルヘルス・カフェ」、世界の健康を守る、そんな名前のついたカフェって、ちょっと変わってませんか?

ここのマスターはとっても面白いので、私、気に入って通っているんです!

それでは、さっそくカフェに入ってみましょう。

■ 看護師の仕事って?


香月:マスター、こんばんは。

マスター:あー、こんばんは、よう子さん、いらっしゃい。こちらは橋本千代子さん、ちいさんです。

橋本香月:こんばんは。

マスター:あれ、二人、会うのは初めてかなあ。こちらは看護師さんなんですよ。

香月:え、看護師さん? 看護師さんっていうと白衣の天使っていうイメージだけれど、実際のお仕事ってどんなものなの?

マスター:そうねえ、なんとなく看護師さんっていうと、医者の手伝いのような印象なんですが、看護学っていう学問を修めているんです。

香月:そうなんだ。

マスター:それで看護師さんの仕事っていうと、外来に行くと診療の補助っていう感じなんだけど...そうだ、ちいさんが説明してもらってもいいかもしれないけど。

橋本:診療の補助って、ふつうに考えると、患者さんにお薬をあげたり、注射をしたり、あとは検査のための採血をしたりとか、そういうことでしょうか。

香月:看護師さんのイメージですね。他にもありますか?

マスター:あとは、入院したときに療養上の世話というか、日常生活のお世話をやるわけですけどね。例えばどんなことあったっけ?

橋本:お食事の介助だったり、排泄のお世話だったり、あと移動を手伝ったりとか、私たちがふつうにやっていることが日常生活でできない部分を手助けしているんですよ。

香月:尊いお仕事ですね。

マスター:ちいさんは開発途上国でもたくさん働いた経験があってけっこう話が面白いと思うけどね。

香月:へえ、すごい!

■ 海外では病院協力から人材育成、制度づくりへと変わってきている

香月:海外では、看護師さんの仕事、どんなことをされてきたんですか?

橋本:最初、もう20年も前になってしまうんですけれども、ボリビアという南米の真ん中の国に、青年海外協力隊というシステムで日本の援助で建てられた、その町で一番大きな病院の手術室で、手術室の看護スタッフの人たちと一緒に働きながら、直せるところ、改善できるところはないかを探しつつ、一緒に改善してくるようなお仕事をしていました。

香月:看護師の仕事を伝えるみたいな?

橋本:そうですね。日本とやっていることはだいたい同じような仕事をしていましたね、そのころは。

香月:それが20年前。

橋本:そのころ、病院でのお仕事多かったんですけど、病院に来られる人はとっても恩恵を受けられていいんだけれども、病院に来られないもっと田舎の人たちや、村に住んでいるような人たちにもっと予防の考え方を入れたようなことをやっていかなきゃいけないんじゃないか、という流れにだんだん変わってきました。そのころに私はセネガルやブラジルに行っていたんですが、だいたい村には保健の人材が全体的に少ない。だから教育を3年とか受けなくてはいけない看護師さんでなくて村に住んでいる人が、最低限の予防とか一時的な処置などができるように、村のボランティア、保健ボランティアみたいな人の養成も少ししていました。

香月:お医者さん自体いないし、そういう地域の、地域保健といったものを担う人も誰もいないっていう地域がいっぱいあったということですね。

橋本:そうですね。

香月:そこにボランティアを養成していったんですね。

橋本:一番近い保健医療施設でも、ちゃんと交通のシステムが日本みたいにないので、歩いて2時間かかるとか、そういう状況のなかで実際にもっと村レベルで何かできないかということで、その村での人を育てるということをずっとやって地域をよくしていきましょうという形のこともしていましたね。

香月:大きな都会の病院から、村レベルの保健の人たちを育てる仕事をしてきたということですね。それでだいたいOKな感じがするんですが、実際はどうだったんですか?

橋本:日本で言えば県とか23区の一つの区とかを対象として活動してきたんだけど、それだとその地域しかよくならなくて、ほかの地域にも広げていくためにはどうしたらいいだろうっていうことで、もっと国の制度をつくっていくという形が必要なんじゃないかという流れに変わってきました。ラオスとかカンボジアでもそうですが、看護師さんなり、保健医療人材の教育制度なり、あとは「看護師さんとは何する人ぞ」から始まって、法律をつくり、国家試験の制度を導入して、ちゃんと試験に受かった人を看護師さんにしましょうという形でしていかないと、看護師さんの質を保っていけないんじゃないかということで、大体いまやっていることは、制度づくりみたいなことにだんだん変わってきているんですね。

香月:ボランティアさんたちを育てるのはもちろん大事だけど、ちゃんと国の制度として看護師さんという人たちをつくる制度をつくる。すごいですね。病院で看護師さんの仕事のお手伝いをしてから、それから地域へ、そして国へというふうに移ってきているんですね。

■ 日本人は携帯電話好き?

香月:橋本さんは日本にいらっしゃるときは、どんなことをなさっているんですか?

橋本:日本だと、海外からの研修生として日本のこういういいところを取り入れてほしいということで、日本でいろいろな研修事業をやっているんですね。そういう人たちの対応とかをしているんです。

香月:海外の方から日本の印象って聞かれたことあります?

橋本:この間8月までミャンマー人が4名来ていて、その人たちと研修でずっと回っていたのですが、電車の中で日本人はみんな携帯電話を見てて何もしゃべらない、それはびっくりだということを言っていて...。

香月:それは耳が痛い...。「しゃべらない」というのは?

橋本:ミャンマーだったらもっと電車で一緒に座った人たちとかしゃべるよ!って、日本人ってコミュニケーションとらないの?てことを言われてしまったんですね。

香月:ミャンマーだと隣に座った知らない人とも話をするってことなんですか?

橋本:そうみたいです。

香月:すごいですね。何もしゃべらずに、それぞれが携帯を見ている姿ってのが、ミャンマー人にとってみるとすごくびっくり...。

橋本:とても異様な光景に映ったみたいで、ミャンマーの人から見たら家族とのコミュニケーションよりももっと大事なのに、日本人はそれを忘れちゃっているんじゃないのって言われているような気がちょっとしてしまいましたね。

香月:なるほど。

■ 途上国の病院では家族の果たす役割は大きい

香月:こういうふうに長年、国際協力の看護師という立場で、それこそミャンマーの方のようにいろいろな国の人の話を聞いたり、いろいろな国に行ったりして活動されてきて、いま思うことってどんなことでしょうか?

橋本:ミャンマーの病院でいろいろ見てきて、カンボジアの病院、ラオスの病院でもそうだったんですが、個室とかに入っていると、患者さんの療養上の世話っていう部分が途上国では家族の人がやる役割になっていました。そこが日本との違いでもあるんですが、反対に家族にやってもらったほうがいいんじゃないかなという部分もあって...。

香月:例えばどんなところがいいところですか?

橋本:療養上の世話って、お食事から排泄から全部家族の人がやっているんです。実際日本だとナースコールがあって押せば看護師さんが来てくれますが、途上国だとまだそういうシステムとかもなくてなかなか呼びに行けないけれども、みんなそこに家族が付いていて家族がお世話しているんですね。

香月:家族も割と多いイメージなのかなあ。

橋本:家族も多いです。私この間、新宿区の研修にミャンマーの人と一緒に行ったときに、新宿区の単身世帯が65%だということを知って、やっぱり完全看護じゃないと病院生活を送れないっていう部分が日本はまだたくさんあるので、日本のシステムになってしょうがないのかなあとちょっと思えたんですけど、やっぱりミャンマーだとまだ単身世帯って少なくて家族がみんな一緒に住んでいます。

香月:何人くらいで住んでいるんですか?

橋本:だいたい10人くらいですね。そうなると世話をできる人が家族のなかにいるので、家族が付いて、保健人材が足りないってこともすごく多いから、私たち保健医療従事者として家族に指導していかなくてはいけないと思うけれど、そこでの家族の役割っていうのがすごくあって、途上国に残っているそういういいことってたくさんあると思うんです。それをやっぱり忘れないで、私たち日本がやっていることがすべていいという形ではなく、途上国のいいところを残した形で、やっていければなあって、いつも最近は考えています。

香月:なるほど。その完全看護のよさを取り入れつつ、家族の絆というところはやはり途上国のよさですね。それを、もしかしたら私たちは忘れてしまったのかもしれないですね。看護師という立場で活動されてきて、今後のことで思うことってありますか?

橋本:やっぱり家族のあり方や文化は国によって違うけれど、看護のあり方についても国によってそれぞれ違うから、その国にあったよりよい看護のやり方、活動なりをその国の人たちと一緒に考えて活動していければいいなと考えています。

■ 病院内で患者家族が調理をする

香月:マスター、看護師さんって、私が思っている以上に、本当にいろんな仕事されているんだなあって、すごく感心しちゃいました。その家族の絆とかそういったことで思うことって、マスターある?

マスター:私? 途上国へ行くと、けっこう煮炊きをするところが医療施設の中にあるんですよ。

香月:調理できるってことですね?

マスター:そうそう。だから家族の人もそこで薪とか炭とか持ち込んで患者さんの料理をつくる、当たり前っちゃ当たり前なんですけど。

香月:へえ。

マスター:それこそ病棟に行くと、家族の人がベッドの周りにたくさんいて、あるいはベッドの上にもいてみたいなことがけっこうありますね。 

香月:みなさん、今晩のグローバルヘルス・カフェはいかがでしたか? 今回は、看護、看護師をテーマに、国立国際医療研究センターの橋本さんからお話をうかがいました。それでは、またお会いしましょう。お相手は香月よう子でした。

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