「企業の求人件数が再増加→金利上昇→米国株下落」
「米国の8月求人件数、約69万人増加の961万人」
「米国長期金利、4.8%台に上昇」
「日本株は"空売り比率"が上昇」
10月3日の米国株は下げました。下落率は、NYダウが1.29%、ナスダック指数は1.87%でした。企業の求人意欲の強さを示す雇用データを受けて「労働賃金の上昇率加速→インフレ長期化」が意識されました。米国10年債利回りは、前の日よりも0.12%P上昇して、4.8%乗せです。
労働省は3日、8月の米国の求人・雇用・離職者調査(JOLTS)を発表しました。求人件数は、7月の892万人に対して、約69万人増加の961万人となりました。時系列で示します。
JOLTS求人件数の推移(単位1000人)
4月 10320
5月 9616
6月 9165
7月 8920
8月 9610
5月以降は明確な減少トレンドを見せていたのですが、8月は一気に増加に転じました。企業からの求人が増加したのですから、企業が多くの労働者を求めていることを示します。企業から労働者に支払う賃金が増加し、賃金の増加がインフレを高止まりさせるとの見方から金利が上昇、株価が下げました。
「Professional and business services」分野の求人数が、前月比で約51万人増加の194万人となりました。全体の増加数の約74%を占めています。「Professional and business services」は直訳すれば、「企業向け専門サービス」です。企業が特殊技能のある労働者を強く求めています。
今週は、労働市場に関連する重要データが発表されます。米国時間水曜日には、ADP雇用調査、木曜日にはチャレンジャー社から9月の企業の人員削減計画数、金曜日は労働省の雇用統計が発表されます。今後の金融政策を考える上で、雇用関連データが注目されます。
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この1週間、日本株が下げています。ここでは「空売り比率の上昇」を取り上げます。
他社から株券を借りて売る取引=空売りが増加しています。これは、個人投資家による信用取引で空売りではありません。個人の信用売りは、株価上昇時につなぎ売りを含めて出ることが多いのですが、ヘッジファンドが行う短期トレーディングの空売りは順張りです。日本株が下がる時に空売りが膨らみます。空売りが膨らむから株価が下がると言い換えても良いでしょう。
空売り比率の推移を以下に示します。
25日 41.2%
26日 42.4%
27日 45.7%
28日 46.6%
29日 47.1%
10月
2日 41.5%
3日 47.8%
先週の半ばから45%以上に膨らみ、今週月曜日に41%台に低下しましたが、日経平均が500円超下げた昨日3日は48%近くまで上昇しました。3日の「47.8%」は7月10日の「48.2%」以来の高水準です。ちなみに7月10日前後の日経平均の動きを以下に記載します。
7月
5日 33338円(-83円)
6日 32773円(-565円)
7日 32388円(-384円)
10日 32189円(-198円)
11日 32203円(+13円)
この間の空売り比率は以下の通りです。
5日 41.6%
6日 45.2%
7日 46.0%
10日 48.2%
11日 45.9%
今年は空売り比率が45%を超えてくると、日本株が下げます。今回の日本株の下げは、株式を借りて日本株を売る取引が増えた結果、日経平均が下げたと考えられます。
短期順張り型ヘッジファンドは、足元の動きが上がりそうなら買い、下がりそうなら売ります。5-6月期はこの種の資金の買いが日本株を押し上げました。現状は、その逆回転が見られています。昨日も書きましたが、株価水準が下がったところで、中長期投資家の買いが入って、いかに底堅さを増すか、そこがポイントです。短期的に下がりそうもなくなると、空売りで儲けにくくなりますので、ヘッジファンドの空売りも鈍化します。
10月4日午前6時15分記