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ラジオiNEWSによく出演してくれるラストアイドルのメンバーたちが演じる舞台「球詠 ~VS影森・梁幽館編~」を栗林さみさんと拝見した。1月20日に番組に出演してくれた白石真菜さん、髙橋美海さん、高橋みのりさんが「絶対観てください」と告知していたので、見逃すわけにはいかない。
亮的閑話 第45回 ラスアイのフレッシュトリオ大健闘の巻 | ラジオiNEWS | ラジオNIKKEI (radionikkei.jp)
以下は帰路、地下鉄中野坂上駅までの栗林さんとの会話だ。
「良かったですね。前作よりも楽しめたくらい」
「そうだね。みんな演技が一段と上手くなっていた」
「最後のお見送りがすごくいいですね」
「あれは素晴らしいアイデアだね」

昨年6月上演の「球詠」第一作は、実に見応えがあった。筆者がこれまでの人生で観た舞台の中で、ナンバーワンだった。
亮的閑話 号外編 ラスアイの舞台「球詠」は素晴らしかった! | ラジオiNEWS | ラジオNIKKEI (radionikkei.jp)
芝居や映画などでよくあるのは、続編やパート2は往々にして初回作を超えられないというアノマリー。しかし球詠は違う。一段と進化していたし、前作を見ていない人でも、十分に楽しめる作りになっていた。

エース武田詠深役の大森莉緒さんは、ますますオーラが強くなっていた。投球フォームが流れるように洗練され、舞台の上から投じる白球の軌跡が見えるようだった。

何より印象的だったのがキャッチャー山崎珠姫役の籾山ひめりさんだ。前作では卒業した長月翠さんが演じていた重要な役どころ。演者交代の違和感は皆無で、素晴らしい演技は賞賛に値する。構えながら打者を打ち取るシミュレーションを繰り返すシーン、籾山さんの表情がきりっと理知的で美しかった。相澤瑠香さん演じる梁幽館の吉川和美と武田詠深との微妙な三角関係を演じるシーンも、捕手という頼れる相棒という役どころを、繊細に演じ切っていた。

クライマックスシーンの1つが、梁幽館戦の終盤、ベンチ裏でのシーンだ。小澤愛実さん演じる中村希と岡村茉奈さん演じる川口芳乃のツーショット。揺れる乙女心と試合に賭けるアスリート魂という、対極する2つの心情を余すところなく表現していた。あの瞬間、2人は間違いなく、会場全体の空気を支配していた。

梁幽館のエース中田奈緒役の鈴木遥夏さんの演技も特筆ものだった。静から動へ、そして陽から陰へ、場面展開に合わせた表現力、見事だった。「ラスアイサバイブを通じて得た自信が。自分の立ち姿に現れるようになった」と語っていた鈴木さん、まったくその通りで、最後の後ろ姿で演じるシーンは、その集大成と言えよう。

高橋みのりさんのキャプテン役も良かったし、大場結女さんのコミカルな演技に、ほっこりさせられた。前回はダブルキャストの関係で拝見できなかった白石真菜さんの演技も見ることができたし、前作に続き対戦相手の捕手役だった髙橋美海さん、長身で脚の長いキャッチャーという現代野球を体現した役どころだった。

アイドルグループのメンバーだけで芝居を構成するという発想は、ちょっとしたコロンブスの卵かもしれない。舞台は通常、キャストはバラバラに招集されるから、チームとしての一体感を作るまでに時間がかかる。演者全員が同じアイドルグループなら気心が知れており、初めから一分の隙もない。日頃からダンスで鍛えているから、舞台の上での身のこなしは、軽やかで美しい。登場人物が全員女性という原作を、アイドルグループが演じるという、ありそうでなかった舞台設定、うまくいかないはずがない。

ましてや幾多の試練を乗り越えてきたラスアイだ。グループの団結力、集中力、一体感はどこにも負けない。多忙な本業の合間を縫っての短期間での稽古だったと思うが、あそこまでの完成度は、ラスアイでないと無理だろう。

筆者が今回、印象的だったのは、一人ひとりのバットスイングがよりシャープになっていたことと、なにより感心したのが、打席での目だった。獲物を射止めるハンターのような鋭い視線、あれこそ戦うアスリートの眼差しだ。

上演時間の1時間40分が、あっという間だった。もう1,2回観たいなと思った。栗林さんが言っていたように、終演後のお見送りがとても良かった。出口ではなく、メンバーは舞台の上から、最前列の前を通って出口へ向かう観客を見送る。こちらも嬉しいし、リスク管理の面からも秀逸だ。大箱のホールでは難しいかもしれないが、お見送りの新しいスタンダードとして、定着してもいいなと思った。

最後に延長戦でのエピソードを披露したい。

終演後、またもや出会ったのが、映画「がっこうぐらし!」の柴田一成監督だ。4周年ライブの会場で席が隣、今回は出口で栗林さんと写真を撮ろうとしていたら、「撮りましょうか」と声をかけてくださった。記事冒頭の1枚は柴田監督撮影によるもの。柴田監督とはよくよくご縁があるようだ。

もうひと方、妙齢のご婦人に「いつもお世話になっております」と声をかけていただいた。なんと篠原望さんのお母様だった。篠原さんは母親似、お母様も実に品のいい美人だったのは言うまでもない。藤原理沙役の篠原さん、繊細で儚げな中に見せる芯の強さは、ラスアイでの篠原さんに通じる。この絶妙な配役は、今回も変わらず光っていた。

きっと素晴らしいだろうと思っていた球詠パート2、期待通りの素晴らしさだった。千秋楽は23日、ぜひご覧いただき、ラスアイメンバーたちの奮闘に大きな拍手を送ってほしい。

(日本経済新聞 編集委員 鈴木亮)

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