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6月30日、小雨混じりの東京・九段で、12人の乙女の夢が実現した。おめでとう≠ME。ノイミーの全国ツアー2023「We shout I am me」を拝見した。三国志の一節、「男子3日会わざれば刮目して見よ」ではないが、1年半ぶりにライブを拝見し、あまりの進化に驚いた。

入口での旧知のスタッフの方と話した。「(武道館ライブの実現)早かったですね」。「皆さんのおかげです。でもあの子たちの力からすれば当然です」。デビューから4年、メジャーデビューからわずか2年での武道館。異例の早さと言っていい。

ラジオiNEWSとノイミーの付き合いは長い。2019年のデビュー年からご出演いただき、リーダーの蟹沢萌子さんはこれまで10回近く、来ていただいているはずだ。メジャーデビューが決まった直後の21年3月にもマンスリーゲストでお呼びしており、本コラムの記念すべき第1回はノイミーだ。亮的閑話 第1回 メジャーデビューを祝う

初めてノイミーのステージを見たのは21年7月、栗林さみさんとお邪魔した=LOVEの横浜でのライブだった。当時はまだ、イコラブの前座的な位置づけだった。単独ライブを初めて見たのが22年2月、3周年記念ライブだ。3枚目シングルの「チョコレートメランコリー」のリリース直後だった。この時もマンスリーゲストに来ていただいた。ライブはそれ以来なので1年半ぶりだ。久々に拝見したライブ、あまりの完成度の高さに、ただただ驚愕した。

冨田菜々風さんも番組に多く来ていただいている。この日のライブで久々に「絶対的センター」という言葉を思い出した。今はもうない、筆者が応援していたグループにも、絶対的センターと呼ばれる人がいた。ノイミーより大人数のグループを中核となって支えていた。この日のセンター冨田さんの「絶対」ぶりは、あのレベルを大きく超えていた。かわいい歌声のメンバーが多い中、冨田さんのパンチ力のある歌は突出しているし、「天使は何処へ」で見せたダンスの切れ味にも惚れぼれした。 筆者が最も印象に残った曲は、蟹沢さんと2人で登場した「ピオニーズ」だ。深紅の衣装とスポットライト。会場を埋め尽くすペンライトも瞬時に赤に変わった。妖艶な雰囲気、歌の上手い2人の醸し出す幻想的なステージに、すっかり魅了された。2人の年齢を確認したら22歳と23歳だ。その若さで、よくぞあれだけの大人の女性の世界観を演出できるものだと、うなるしかなかった。

武道館ライブ、演出も秀逸だった。生バンドが入り、披露した「はにかみショート」。冒頭から衝撃だった。ピアノをバックにアカペラで独唱する冨田さん。カラオケではありえない、生バンドだからこその演出だ。途中でバンドメンバーの紹介があり、一瞬ステージが暗転、スポットライトが当たったドラム席にいたのが、なんと櫻井ももさん。軽やかに、それでいて力強く、実に巧みなステックさばきを披露し、会場中にどよめきが広がった。次々と驚かされるうち曲に戻り、そこでようやく気が付いた。まだ「はにかみショート」の途中だったと。なんとも楽しく不思議な感覚を味わった。

アンコールの最後は、冒頭で披露したデビュー曲「≠ME」。冨田さんが「私たちにとって一番大切な曲」と呼びかけ、8000人のファンがシンボルカラーであるエメラルドグリーンのペンライトで応えた。ノイミーファンの熱気はすさまじく、ライブの冒頭からすさまじいコールが飛び交い、それが妙に心地よかった。最後の挨拶で谷崎早耶さんの「終わりたくないよ」に、蟹沢さんが「またここに立とう」と答えるシーンも美しかった。

それで思い出した。以前にご出演いただいた時、ノイミーのメンバーたちは、「私たちの夢は東京ドームでのライブ」と声を揃えていた。亮的閑話 第48回 ノイミーの超特急東京ドーム行き

ノイミーにとって、武道館は通過点だ。

21年3月のラジオiNEWS初出演の時、緊張のあまり声が出なくなってしまった当時15歳の川中子奈月心さんの、堂々たる歌いっぷりにも心動かされた。「君はスパークル」で魅せた、よく通る声量たっぷりの声は、次世代のエース誕生を予感させるインパクトがあった。 筆者はノイミーの楽曲の中でも、この日聞けなかった本田珠由記さんの「てゆーか、みるてんって何?」が好きなので、またライブ会場に足を運びたい。ラジオiNEWSへのご出演も昨年12月が最後なので、この日一緒に拝見した番組プロデューサーと「近々、またお呼びしよう」と話しながら、武道館を後にした。

翌日に名古屋で講演の仕事があるため、ライブ終了後、名古屋行き最終のぞみに乗った。名古屋駅に到着し、改札を出たところで、≠MEと描かれたトートバッグを肩からかけた男性がいた。そうか、わざわざ名古屋から武道館に駆け付けたのか、きっとこの人も満足して帰路についたに違いないと、親近感が湧いた。まったく知らない人の背中に「ノイミーのライブ良かったですね。名古屋から足を運んだかいがあったでしょう」と心の中で話しかけていた。

(日本経済新聞 編集委員 鈴木亮)

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