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グローバルヘルス・カフェ

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※第1回「命が生まれる時」 テキストデータです。
音声はこちらからお聴きいただけます。

カフェへようこそ!


香月:みなさんこんばんは。グローバルヘルス・カフェのお時間です。
今晩のお相手の香月よう子です。どうぞよろしくお願いします。
グローバルヘルス・カフェってちょっとめずらしい名前のカフェですね。
いったいどんな喫茶店なのでしょうか。
実はここのマスターはとっても面白い人なので、私すごく気に入って通っているんです!
今日はリスナーのみなさんとご一緒に、このカフェに入ってみましょう。

「グローバルヘルス」って?

香月:こんばんは。
マスター:ああよう子さん、いらっしゃい。
香月:ねぇマスター、このお店って、「グローバルヘルス・カフェ」っていう名前じゃないですか。私よくわかんないんだけど、このグローバルヘルスって、何ですか?
マスター:ああ、これね。世界のというか、特に開発途上国の健康について考えるっていうことかな。
香月:健康について考える?
マスター:それに、先進諸国とのギャップがある。そういうのをどうやって支援をしたらいいか。みたいなことも考える。
香月:なんか難しいです・・・。
マスター:そうですよね。医療協力とか言うと、お医者さんが行って、治療するっていうようなイメージが強いかも知れないけど、まぁ必ずしもそれだけじゃなくて、保健医療システムを強化する、みたいな。
香月:システムって?
マスター:たとえば物とか人とか、お金とか、ないことが多いでしょ?それで、どうやって現場まで、或いは人々まで、医療を届けるか。みたいなことなんですよね。
香月:そういった全部のことを考えることが「グローバルヘルス」?・・・想像するのがちょっと難しいな。
マスター:ああ、丁度いい。今度セネガルに行く杉浦さんがいるから、ちょっと杉浦さんに聞いてみる?

セネガルのお産の現状

香月:こんばんは。杉浦さんは、セネガルに行くんですよね。
杉浦:はい。
香月:セネガルって、アフリカですか?
杉浦:アフリカの西のほうです。まず頭の中にアフリカの地図を思い浮かべていただいて、その真ん中あたりを横に線を引いてください。そうするとそれが赤道です。それよりは北のほうにありますね。北半球にあって、その一番左端。つまり西側のところにセネガルという国があります。
香月:そこに杉浦さんはお手伝いに行くんですね。
杉浦:はい、そうです。
香月:具体的にはどんなことを?
杉浦:私はお母さんと子供の保健を担当しておりますので、そのお手伝いをしに行きます。
香月:お母さんと子供の保健とは?
杉浦:そうですね。特にセネガルでは、お母さんが医療施設で赤ちゃんを産まないことが多く、亡くなってしまうことも非常に多いのです。日本でしたら、お産で何か大変なことが起きたとしても、病院であれば対処できることが多い。しかしセネガルの場合は、大体半分ぐらいの人が医療施設でお産をして、残りの半分の人は自宅で産んだり、或いは正式な助産の資格がなくて、介助の十分でないところで産んでいる。そういう状況にありますので、やはり妊産婦死亡といって、お母さんが出産する時に亡くなることが非常に多いんですね。

命が生まれる瞬間

杉浦:ここにセネガルのお産のビデオがありますから、観てみましょうか。
~ビデオ~
香月:まさにこれ、赤ちゃんが生まれた瞬間のビデオですよね~。
杉浦:そうですね。命が生まれた時ですね。
香月:すごく感動します!これは病院ですか?
杉浦:病院というか、医療施設です。まだこういうところで産むことができるこの方は本当に幸せですね。先ほどお話したように、約半数の人がこういうところで産めないですし、そして見ていただくとわかりますが、分娩台に乗っていないんですね。
香月:床の上に何かを敷いて。
杉浦:そうですね、マットを敷いて。
香月:これはちょっと貧しいからということ?
杉浦:いや、これはですね、このお母さんがこういうところで産みたいと希望されて。私たちはそれを「フリースタイル分娩」と呼んでいます。やはりお産というのは女性にとって非常に大事なイベントですから。新しい命が生まれ、そして家族が作られます。その時に分娩台のようなところでずーっと点滴を受けて、医療として分娩をするのではなく、お産のうちの90%は特に医療の介入なく、自然に分娩ができると言われていますので、それを大切にします。
そしてもし、本当に医療の介入の必要な時には、すぐに介入できると。そうなるとどうしても医療施設でお産をするということが必要になってきます。今回、このお母さんは、医療施設(保健センターと呼んでいるんですが)へ来て、ちょうど生まれるシーンに私たちが立ち合うことができました。

妊婦さんへの指導

香月:まだこういった医療施設で出産することは、セネガルでは少ないということなのですね。
杉浦:そうですね。都市部と地方部とでだいぶ違いますけれども、やはり田舎に行けばいくほど、医療施設で出産することが少ないですね。
香月:なぜなのでしょうか。
杉浦:そうですね。これにはいろいろな理由があります。ひとつはまず医療施設に行くという足が十分でない。
香月:車がないということ。
杉浦:車とかもないですし、実際このビデオを撮ったところでは、車というよりは馬車が日常的に走っている。
香月:じゃあいよいよ産まれるという時も馬車に乗って来るという感じですか!?
杉浦:そうですね。タクシーも走っていますので、なるべく馬車に乗らないように、保健スタッフの人が指導をします。
妊娠をしたらまずやることはお金を貯めること。これはお産の時にどうしてもお金がかかってしまう。そして、タクシーの運転手の番号を控えるようにと。何かあった時にはそこへ連絡して、タクシーで連れていってもらえるように、そういったことも指導しています。
香月:そういった指導も、日本だと自治体からのお知らせだけじゃなくて、妊娠したら読む本とか雑誌とかがいっぱいあるじゃないですか。そういうものもセネガルではまだないという形なのですね?
杉浦:セネガルでは女性の60%ほどが教育をきちんと受けていないというデータがあって、文字が読めない場合もあります。たとえばこのビデオの地域では、それぞれの部族で言葉が違いますので、医療施設へ辿り着いても、そこのスタッフと話をするということにすでに障害があるわけです。その間を取り持つマトロンという人がおりまして、そのマトロンを介してお産をすることもあります。これらの、言葉の問題、そして移動する時の問題、そしてもうひとつは、いつ医療施設に行かないといけないか、それを判断することがなかなか難しいですね。

任務は現地スタッフのサポートやマネジメントを行うこと

香月:ということは、ただ単にお医者さんが行って、医療を充実させるというだけではなくて、教育とか文化とか、いろいろなことが必要になってくる。
杉浦:それがこの仕事の面白いところでもあり、難しいところでもあります。
香月:杉浦さんはセネガルにどのぐらいの期間行くのですか?
杉浦:2年間の予定です。
香月:2年間でどんなお仕事をされるのでしょう?
杉浦:私たちの仕事は、何か私たちが技術を持って直接何かをやるというよりは、相手の人たち、つまりセネガルの保健省の母子保健課の人たちと一緒になって仕事をします。それぞれの国にはそれぞれの方針がありますので、それに対して私たちにどのようなサポートができるかを考えます。
香月:じゃあ杉浦さんが直接、妊婦さんの診察をしたり、手術したりとか、そういうことではないと。
杉浦:私たちは直接医療の介入というものはしません。
香月:ぜひ気をつけて行ってきてくださいね。

本日のコーヒー

香月:ところでマスター。このコーヒーすっごくいい香りだけど、これはどこのコーヒー?
マスター:いいでしょう?これはベトナムのコーヒー。
香月:へぇ、ベトナム。あんまり飲んだことないな。
マスター:そう?これは、なんとなくミルキーな、なんとなくバニラみたいな。
香月:あまーい香り!
マスター:ね?香りがするでしょ?これはね、ベトナムではブリキの濾し器みたいなので淹れるんですよ。
香月:かわいい!おままごとの道具みたい。
マスター:そうですね。これにね、コーヒーを飲むときに、コンデンスミルクを入れて、下に沈殿させといて、それをちょっとずつこう溶くような感じで飲むんですよね。
香月:へぇ。甘いけどクセになりそう。
マスター:ね!いいでしょう?こういう飲み方はベトナムだけじゃなくて、近くのカンボジアとかラオスとかも同じような飲み方をしますね。
香月:マスターって、いろんな国のコーヒーのことよく知っているんですねー。
マスター:まあね。笑。

東日本大震災で活かされた途上国での活動のノウハウ

香月:ねぇマスター。「グローバルヘルス」の「グローバル」って、さっきは途上国というように言っていたけれど、これ日本とかも入るの?
マスター:そうね。昔はこの「グローバルヘルス」ということを「インターナショナルヘルス」と言ったりもしていたのですが、「グローバル」という中には、日本も入ります。
香月:例えばどんな活動があるのかな?
マスター:例えば、東日本大震災。昨年大変でしたね。その中で、市街地の65%が浸水したと言われている、宮城県の東松島市でも支援をしました。そこへ行った杉浦さんたちは、海外での経験が役立ったと言っているので、詳しくは杉浦さんに聞いてみましょう。
香月:海外へ行ったり、国内へ行ったり、すごく忙しいですよね。杉浦さんは東松島にも行ったんですか?
杉浦:そうです。今回やはり大きな地震でしたので、本当はアフリカに行く予定でしたが、急遽変更して東松島へ行きました。
香月:直後に入られた?
杉浦:直後はやはり医療のチームが入りました。その後、私たち国際協力の経験を持った人間が、東松島市という宮城県の仙台市から北東に40kmほど離れた、日本三大景観の松島の東にあたる場所で支援を開始して、今でもまだ続けております。
香月:そこで杉浦さんはじめ国際協力局の人たちはどんな活動をしているのですか?
杉浦:その頃、避難所がたくさんできておりましたので、避難所の人々を巡回して診察をしました。そのあとは避難所にいた人が徐々に仮設住宅に移りましたので、仮設住宅の人々の健康をどのように守るかということを、現場の東松島市の保健師さんたちと共に、まぁ彼女たちが中心となって動いて、そこに私たちはサポートをする、という形で、ずっと支援を続けてきました。
香月:なるほど。つまりセネガルと一緒で、現場で働く人たちが主役。
杉浦:そうですね。震災直後は物もなく、電気も水もなし。そして情報も遮断されている。こういった状況というのは、途上国の状況と非常に似ていました。私たちはいつもそのような状況で仕事していましたので、特に違和感なく。そして、被災地には医療や保健など、いろんな分野のたくさんの人が支援に来るので、調整やマネジメントすることが必要になってきます。そういうことをやる保健師さんたちに、私たちがお手伝いをする。そして今もまだ支援は続いています。

更なる情報はNCGMのサイトで!

香月:今日はとっても勉強になりました!でも、もっといろんなお話聞きたかったな。
杉浦:私たち国立国際医療研究センターはホームページを持っていますので、こちらアクセスしていただければ、いろんなお話が出ています。
香月:ありがとう!さっそくチェックしてみます!

香月:マスター、いろんなお話聞くことができて、すごく楽しかった!じゃあ、そろそろ帰るね。またお話聞かせてください。
マスター:はい。また是非来てください。

香月:みなさん、今晩のグローバルヘルス・カフェはいかがでしたか?今回は母子保健をテーマに、NCGM 国立国際医療研究センターの杉浦さんからお話を伺いました。お相手は香月よう子でした。それでは、またお会いしましょう。


※音声版はこちらからお聴きいただけます。


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