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ザ・マネー~西山孝四郎のマーケットスクエア

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今年2月、夏真っ盛りの豪州パースを訪れました。ワタクシを含めFX投資に日々邁進していらっしゃる皆さまとって(ワタクシの場合はまだまだ「迷進」ですが)「豪ドル」はお馴染みの通貨かと思います。以下のグラフは2010年以降の「通貨ペア別取引金額」を示したものです。2011年から「豪ドル円」は「ポンド円」の取引を上回っており、FX取引の中ではドル、ユーロに次いで取引金額の多い通貨となっていることが分かります。先進国の中でも相対的に金利が高く、政治的にも経済的にも安定していることが人気の理由と言われています。その政策金利は2015年に2度の利下げ(0.25%ずつ)が行われ、現在は過去最低の2.0%です。

 

(「一般社団法人金融先物取引業協会」のデータ[i]より作成)

次に豪州の基本的なデータを日本と比較してみましょう。国土は日本の約20倍、アラスカを除く米国とほぼ同じ大きさです。人口は約2,390万人(2015年10月)と日本の約5分の1 程度[ii]。GDP(名目)は、2014年時点でカナダに次ぐ世界12位で、一人当たりGDPはUS$61,066(日本円で約671万円)とスイスに次ぐ世界5位となっています。ちなみに日本の一人当たりGDPはUS$36,222(約398万円)と世界27位です[iii]


豊かな自然と天然資源に恵まれているという印象通り、エネルギー・鉱業関連が主要産業の一つであり、オーストラリア証券取引所に上場している時価総額上位20銘柄のうちBHPビリトン、リオティント、フォーテスキュー、ニュークレスト、オリジンエナジーと5銘柄が資源エネルギーに関連する企業です。

(「ASXオーストラリア証券取引所」データ2016年4月22日)[iv]


日本とは資源エネルギー分野での関わりの他、食料安全保障の面でも強いつながりを持っています。2015年の日本の農産物の輸入相手国はトップが米国、2位が中国、そして3位は豪州です。豪州からどんな農産物を輸入しているのか品目別に見てみると、牛肉、チーズ、小麦が上位です[v]。日本の小麦の最大の輸入先は米国で、豪州はカナダに次ぐ3位ですが、実は讃岐うどんの原料となる小麦のほとんどは西豪州で生産されている「ASW(オーストラリアン・スタンダード・ホワイト)」[vi]なんだそうです。また、豪州では90年代前半より「WAGYU」というブランド名のついた牛の生産が始まっており、現在ではその80-90%が輸出され世界的にも人気[vii]になっているとか。

先日「豪州最大のビーフメーカーS・キッドマンは、所有している土地を中国系企業に売却することで合意した」というニュースがありました。このディールについては、豪州政府が安全保障の観点から昨年一度却下した経緯があるのですが、再度、売却する土地の範囲を見直し、売却額を3億7,100万ドル(408億円)に引き上げ合意に至ったようです。今後、この取引が成立するためには改めて政府の承認が必要になってきますが、驚いたのはその売却する予定の土地が豪州の約1.3%にあたり、韓国とほぼ同じ面積だということ。豪州の畜産産業の規模の違い、日本の想像を遥かに超えるレベルで行われているということが実感されます。日本の畜産業にとっては大変な脅威であり、この桁違いの相手とどのように戦っていくのかかなりの難題です。

さて、今回訪問したのは豪州の西の端にあるパースです。パースはシドニー、メルボルン、ブリスベンに次ぐ豪州第4の都市ですが、その割にはシドニーのオペラハウスやゴールドコーストのように「コレ」と言った象徴、特徴が思い浮かばず、どんな街なのかピンと来ないという方も多いかもしれません。

(google map)


先日ある記事を見ていたところ、パースについて"the most isolated city on earth" (地球上で最も隔絶された都市)」とありました。どうやら欧米の主要都市から世界で最も距離が離れている都市の一つで、豪州国内の中でも他の都市から遠く離れているのがその謂れのようです。パースに住む友人は「他の街からパースは田舎だと思われている。」と笑っていましたが、豪州の主要都市の中で唯一西にありインド洋に面していることから、インド洋に沈む美しい夕陽を眺めることが出来ます。これは他の街では決して観ることができない光景です。


この写真はパースの中心部から車で30分ほど行ったところにある古い港町・フリーマントルでの光景です。



こんな風にお酒や飲み物、食事を楽しみながら、おしゃべりをして、ゆっくり日が沈んで行くのを眺めます。パースは年間を通じて天候に恵まれたところで、冬でも雨が降って寒いという日は数日しかないそうです。レストランやカフェのほとんどにオープンエアのスペースがあり、店内よりもむしろ混雑しているくらい。
Bathers Beach House Fremantle

他の都市から遠く離れちょっぴりダサい(?)と思われているパースですが、英誌エコノミストの調査部門「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)」が発表している世界140都市の住みやすさを比較したランキングでは毎年上位に入っており、2015年の調査ではフィンランドのヘルシンキに次いで9位にランクイン。さらに投資が活発に行われており、街は大きく変容を遂げつつあります。先日のブログでもご紹介したように、多くの新規ホテル建設が行われている他、リバーサイドの整備も進んでいます。2018年にはパーススタジアムも完成し、座席数6 万、最先端の国際競技場も完成する予定です。さらにパース空港の拡張工事も行われており、2020年までには新生パース空港が誕生します。

人口は増加傾向にあり、パース市の人口は2014年に過去最高の200万人超に達しました。2004年から10年間の累計増加人数は約50万人、1日当たり137人ずつ増えたことになります。人口が増えれば必要になるのが住宅です。では、パースの住宅市場はどうなっているのでしょうか。パースの不動産会社のデータによると、パース市内の住宅価格(中央値)は2014年にかけて上昇し、2015年後半には再び上昇に転じてきていることが分かります。また土地の価格(中央値)は一時伸び悩んだものの、再び上昇してきています。

 



 (http://reiwa.com.au/のデータ)

こちらは、パースの街で見かけた販売中のアパートメントの広告です。

98室が売りに出されており、AU$550,000(約4,675万円)から。
HPを見てみると価格は以下のようになっています。http://aureliasouthperth.com.au/

2ベッドルーム(2バス付き)が、AU$725,000(約6,162万円)、3ベッドルーム(2バス付き)がAU$990,000(約8,415万円)[viii]

ご覧のように対岸にパース中心街を眺めることができるスワン川沿いのアパートメントは人気が高く、他の場所に比べても若干割高だそうです。

 

月曜の夕方から夜にかけてシティツアー(パースの中心部を歩いて回るツアー)に参加しました。午後4時くらいのスタートでしたが、その時間には多くの人々が帰宅の途に着いており、さらにツアーが終わる午後6時過ぎ頃にはオフィス街はガランとした様子に。アテンドしてくれた現地の担当者に「月曜のまだ6時なのにオフィス街に人が全然いないね。」と尋ねたところ「週末で遊び疲れて、月曜日は皆、早く家に帰るの。」との返答。「月曜日は一週間の始まり、翌日から続く平日4日間に向けて早めに帰宅」なんてのは野暮ですね。平日のために週末があるのではなく、週末のために平日はあるのです。


今回のメディアツアーに参加したメンバーと「自分の国以外で住むならどこの国に住みたいか」という話をしていたところ、アイルランドから来た参加者が「同じ言葉を話す国で、その中でも豪州は選択肢のNO.1だ。」と言っていましたが、さて、もし皆さまが世界のどこに住んでも良いとしたら、どの国のどの街を選びますか。ワタクシは今回その候補の一つに初めて訪れたパースを加えました。海は綺麗だし、天気はいいし、美味しいワインはあるし、空港は近いしナドナド・・・次回はそんなワインやレストラン、宿泊したホテルについてもご紹介したいと思います。

「地球上で最も隔絶された都市の幸せの秘密〜パース訪問記②」に続く。




[i] 店頭外国為替証拠金取引取扱会員(50社以上の会員)からの報告を元に作成されたデータより。
http://www.ffaj.or.jp/

[ii] 外務省HPより。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/australia/data.html#section1

[iii] IMFのデータより。US$1=110円で換算。
http://www.imf.org/external/index.htm

[iv] http://www.asx.com.au/index.htm

[v] 「農林水産物輸出入概況2015年(平成27年)確定値」農林水産省HPより。http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/kokusai/pdf/yusyutu_gaikyo_15.pdf

[vi]「さぬきの夢物語」香川県農政水産部農業生産流通課HPより。http://www.pref.kagawa.jp/menpaku/03_ayumi/index.html

[viii] AU$1=85円で換算。