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 iPS細胞を用いた再生医療の研究がノーベル賞をとったことは、まだ記憶に新しいのではないでしょうか。このことに、医療の新しい可能性に、夢を感じませんでしたか?

 

 7月15日の「今日の1社」はリボミック(4591、マザーズ)も医薬品に新しい可能性をもたらす創薬ベンチャー企業です。

 核酸医薬品の中でもRNAという物質の性質を利用したアプタマー医薬の研究開発を行っています。「アプタマー」と言われても、今はまだ何のことか分かりません。でも将来的には、iPS細胞などのように、誰もが知っているという状況になるかもしれませんね。

 

 井上哲男の取材後記でも分かりやすく説明しておりますので、ご覧下さい。

 

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取材後記

リボミック (4591) (東証マザーズ)

ラジオNIKKEIスタジオで取材・収録。お相手は代表取締役社長の中村 義一様。

 

「 偉大なRNA 」

 
▼"アプタマー"

 まずは、素晴らしい企業を紹介できたことを嬉しく思っていることを記したい。

「 アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet medical Needs) 」という言葉がある。未だ有効な治療法や医薬品が確立、開発されていない病気、病因をなんとかして欲しいということであり、この最後の「ニーズ」という単語はとても重い意味を持つと思う。

 

 番組の中で、敢えて「難しいことは難しいこととしてきちんと理解することが大切だ」と述べたが、(これも番組の中で述べたが)同社の手掛けている創薬の基本的な部分はとても理解しやすいものである。暫く経ってからでも再度理解できるように記すこととする。

 

 誰もが聞いたことのある、細胞や核のなかに含まれるDNA(デオキシリボ核酸)。これは、五炭糖とリン酸、そして、A、T、C、Gの4つの塩基から構成される。300億個もこの4種類の塩基が組み合わさることにより、遺伝子情報は記憶されているのだが、教科書に出ていたようにこのDNAの形状は2本のらせん状態の鎖である。そして、これが1本鎖でDNAのコピーであるのがRNA(リボ核酸)である。RNAも4つの塩基の組み合わせであるが、この4つの塩基はA、U、C、Gと、DNAのTがUに替わっている。そして、何よりもDNAとRNAで違うことは、RNAは"変化することができる"ということである。

 

 変化するということは"形状を変える"ということ。これにより、病因であるタンパク質に合わせて形状を変えてピタリと抱きつき、その働きを封じ込めることができる。このRNAの「造形力」を利用した医薬品こそが同社の「アプタマー医薬品」であり、"悪玉"タンパク質に抱きつく"アプタマー"と覚えて欲しい。そして、これまで数社紹介したことのある抗体医薬品はタンパク質から精製されるのであるが、RNAはその訳のとおり核酸であることから核酸医薬品というカテゴリーに入るのである。

 
▼"共に戦う"株主

 前期、ライセンスアウト第1号が出た。番組の中でも紹介したこの「RBM004」は「痛い」ということを脳に伝える伝達物質(タンパク質)のNGFに抱きつくことにより、その働きを封じ込めるのである。この「抱きつく」ことから得られる即効性もアプタマー医薬品の優れた点である。

 ライセンスアウトについて、社長は「今期2本」という可能性を示したが、開発ラインナップは8本もあり、今後の安定的な"企業としての"成長が期待される。

 

 しかし、私がリスナーの方に投資家として本当に理解して欲しいのは、この企業としての成長以前の部分である。それは、その企業が何をもって社会的な使命を果たそうとしているのかということである。

 J-REITを購入する目的。それは分配金を得ることの前に、少額ではあるが不動産の大家さんになるということであろう。同様に、リボミックの株主になるということは、アンメット・メディカル・ニーズに応えるため、"共に戦う"ということである。社長が最後の「リスナーへのひとこと」の中で話された"パトロン"というのはこのことである。中世の文化史を紐解くまでもなく、パトロンとスポンサーは違う。

 
▼偉大なRNA

 そして、番組の中では伝え切れなかったが、このアプタマーが山中教授のips細胞の研究においても力を発揮する可能性を秘めている。皮膚細胞から作られたips細胞がその後分化して筋肉や神経、そして心臓といった組織までになるというips細胞の研究であるが、この皮膚細胞からips細胞ができる段階、また、ips細胞が分化を続ける段階で、アプタマーが細胞の"純化"に寄与する可能性が高いのである。そのため、同社は「ipsプロジェクト室」を設置した。

 

 中村義一社長は東大の名誉教授でもある。番組のなかで余談として紹介したが、社会的な使命として「ミドリムシで世界を救うこと」を掲げているユーグレナの出雲社長は中村教授の教え子でもある。Co2問題、子供の飢餓問題に取り組んでいる出雲社長とアンメット・メディカル・ニーズのために戦っている中村社長。東大というDNAはやはり偉大なRNAを生み出したのである。(了)

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 取材後記は以上です。いかがでしたか?

 

 健康や治療へのニーズは、次から次へと出てきますから、同社の長い挑戦に終わりはないのでしょうね。今後も同社の挑戦から目が離せません。

 

 それでは、来週もお楽しみに!

 

(関連ウェブ)

リボミック IRサイト

代表取締役社長 中村さまと
代表取締役社長 中村さまと