11月8日の「アサザイ 今日の1社」は、eWeLL(5038・東証グロース)を放送しました。
今回は、代表取締役社長 中野 剛人 様にお越しいただき、事業内容や強み、成長戦略等についてお話を伺いました。
井上哲男より取材後記が届いております。ぜひご覧ください。
----------------------------------------------------------
取材後記
eWeLL(5038)(東証グロース市場)
ラジオNIKKEIにて収録
お相手は、代表取締役社長の 中野 剛人(なかの のりと)様
「電子カルテ、そしてPHRへ」
▼訪問看護専用のクラウド型電子カルテ『iBow』
上場されたのが、昨年2022年9月。「在宅療養に新しい価値の創造を行い、全ての人々が安心して暮らせる社会を実現します」とビジョンに謳われているが、実際の事業領域は在宅医療DXで、その在宅医療の要である訪問看護ステーション向けにクラウド型訪問看護専用電子カルテ『iBow(アイボウ)』を開発・提供している。
ここで注意しなくてはならないのは、「訪問介護」と「訪問看護」は違うということだ。
前者はヘルパーさんによって日常生活のサポートを行うことが中心であるが、後者は看護師が、国家資格を持つ医療従事者として患者の自宅に行き、点滴などの看護ケアを行う行為である。
そして、訪問看護は未だ8割が紙に手書きで業務を行っている業界だという。『iBow』は、訪問看護専用のクラウド型電子カルテで、看護師のオペレーション業務を網羅しており、これを用いることによって訪問看護業務が効率化され、一人当たりの訪問件数が増加し、労働生産性の向上に繋がる。
医療の現場のDXというと、その請求業務であるレセプトの部分には多くの企業が参入しているものの、より複雑な実際の看護カルテの領域でそのサービスを提供している会社は極めて少ない。そして、同社の『iBow』は『iBowレセプト』と完全連動し、看護を実施した記録から自動でレセプト作成までが行えるという。また、『iBow KINTAI』は、スタッフ管理、シフト管理を効率化するクラウド型勤怠管理システムであり、複雑なシフトや1日数回の勤務、直行・直帰の対応、オンコール当番表の作成などを行うとともに、出退勤状況の一覧表示、常勤換算表の自動作成などを行うことができる。
つまり、看護ステーション、そして実際に看護の現場に出られる看護師という在宅看護の領域に、同社のシステムはワンストップでその効率化というソリューションを提供しているのだ。
▼看護ステーション間で口コミが広がり契約件数は増加
その利便性が看護ステーション間で、口コミで広がったこともあり、契約件数は増加を続け、現在は全国47都道府県で2,400ステーションが利用しているという。シェアは15.3%であるが、「紙→DX」の方向性は確固たるものがあり、その数字は今後も上昇することが容易に想像できる。
そして、その収益モデルであるが、まず、看護ステーションとの基本契約が月額1万8000円で、看護師が患者宅へ1回訪問するごとに100円を従量課金している。この1回の訪問で看護ステーションが国から支払われる金額は約8,400円。そこから100円支払うことによってこの便利なシステムが使えるのだ。当然、解約率が極めて低い。直近の解約率はレベニューMRRで0.14%だという。これはSaaS全体を見ても、極めて低い数値である。そして、この解約率の低さが、同社が提供しているプラットフォームの"満足度"を示していることは誰もが理解できるだろう。
医療の領域は、「健診・予防」、「急性期医療」、「慢性期医療」、「終末期医療」の4つに区分され、これまで、最後まで病院で行っていたものが、政府の方針もあり、最後の2つのステージは在宅医療に徐々に移行している。そして、この2つの領域の時間軸は、遥かに「急性期医療」よりも長い。その長い時間軸を同社の『iBow』はカバーしているのである。
▼今後は「慢性期医療」、「終末期医療」という時間軸の長い期間のビッグデータを活用
そんな同社の成長戦略として、社長は「患者と患者の家族のためのPHR(Personal Health Record)を中心とした新しい価値の提供」を掲げられた。
訪問看護で蓄積された長期的で継続的な医療カルテを同社は既に2022年12月期で3,700万件集積しているという。今後PHRを展開することで患者個人からの同意を得ることができ、将来的には個人も利用できるビッグデータを活用した領域の事業を行いたいという。
目からうろこであった。
これまでの医療データはそれぞれの病院で持ち、大学の付属病院であればそれらの分析は行われていたであろうが、製薬会社や病院相互のデータの連携は十分であったかと言えば疑問が残る。同社は、「急性期医療」でなく、「慢性期医療」、「終末期医療」という上記の通り時間軸の長い期間のビッグデータを保有しているのである。
その活用領域は極めて大きなものがある。それを理解したうえで私は同社に希望を伝えたい。
それは、「慢性期医療」、「終末期医療」の看護データを、最終的に病院が行う「急性期医療」の現場にまでフィードバックするところまで行って欲しいということだ。そこまで辿りついた時、冒頭の「在宅療養に新しい価値の創造を行い」の部分が「医療全体に新しい価値の創造を行い」に置き換わる。
レセプトのDX化に多くの企業が走ったなか、敢えて困難な訪問看護の医療カルテ領域のDX化という道を選んだ同社のDNAであれば、それは可能だ。待ったなしの喫緊の社会問題に正面からぶつかっているこの企業を、私はずっと見守っていく。
----------------------------------------------------------
取材後記は以上です。いかがでしたか。
本日の放送はPodcast配信にて早速アップされております。
それでは来週もお楽しみに!
(関連ウェブ)
■eWeLL IRサイト https://ewell.co.jp/ir/
代表取締役社長 中野 剛人 様と