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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、再放送毎週土曜日23:00-、毎週日曜21:30-、などでオンエアー中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.106~アップルコアの日本人ピアニスト~】

 江戸っ子と言うのは3代続いて初めてこの名称を名乗れるのだが、そうなると歴史の浅いアメリカ、その中心都市のニューヨーカーとは、果して何年・何代アップル・コア=NYに住んでいれば、それに該当するのだろうか。その正解をぼくは知らないが、移民の国アメリカの象徴都市だけに、少なくとも10年近くこの街で生活し、自身がニューヨーカーだと信じていれば、その資格は充分にあるのではと、ぼくは思っているのだが…。

 さてそうした意味でのニューヨーカー・ピアニストが、この前突如スタジオにやって来た。今日の“ジャズ”の時間に登場する、ピアニスト百々徹(どどとおる)である。彼が本場NYに渡ってもう15年余り。先ほどのぼくの定義で行けば、もう十分なニューヨーカーの一人である。その彼が新作のトリオ・アルバムを引っ提げてスタジオを訪れてくれたのである。
 
 彼が番組に登場するのは、前作を出した5年前以来のこと。彼一人かと思ったら、今回のアルバムのメンバー3人で来社、日本ツアーを行う面々である。みんな生粋の日本人だが、同時にニューヨーカーでもある。ベースの中村恭士とパーカッションの小川慶太。百々君より10歳ほど若い面々だが、アメリカ歴は彼よりも長い本場での若き匠たちである。中村君などはアメリカ生まれで数年日本に居てまたアメリカに渡ったという経歴。“もうアメリカ人じゃないの”と水を向けると“いや日本人です”と毅然として答えてくれたのが印象深かった。

 さてそんな百々トリオの新作(彼にとって5枚目のアルバム)のタイトルは“JAfro”。日本で育った百々徹が、地理的にもっとも遠いアフリカに出会って書いた音楽と言う意味合いで、Japanese+Afroと言う意味合いの彼の造語だと言う。彼は現在SOMIと言うアフリカ出身の歌手のバックを務めており、彼女と一緒にナイジェリアやウガンダなどアフリカ各国を訪れ、その音楽にも大きな変化が表れたと言うが、確かにその通り。今回スタジオで初めて彼の新作を聴いたが、実に力強いアフロの香りが充満しており、かつての繊細さから大きな転換を示していた。ただ嬉しいことに日本もアルバム・テーマの一つで、なんとあの八代亜紀の“舟唄”をジャズ化してくれている。これもなかなかの絶品で感激した。ジャズ・アルバムの売れ行き減少で、残念ながらこのアルバムは彼自身のレーベルから出されることになったが、“ディスク・ユニオン”や“山野楽器”などジャズ・アルバム販売に熱心なCDショップでは、積極的にこのアルバムを推薦しているようで、彼もほっとしていますと語ってくれた。この春に待望の子供もできたという百々君。
ますますその世界を拡げつつあり、頼もしい限りである。


ピアニスト百々徹さん(左)、パーカッショニスト小川慶太さん(中)、べーシスト中村恭士さん(右)


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