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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.487~ラグビーの宴終わる】

  異様とも言える盛り上がりをみせたRWC(ラグビーワールドカップ)が終了して数週間、何とも言えない高揚感と何か物寂しい感時のない混ざった不思議な感覚に今なお拭い切れない。これがラグビーロスと言う感情なのだろう。RWCの44日という1か月以上の期間、長いようでいてあっという間でもあった。数々の試合も観戦させてもらいましたし、インタビューなど取材もさせてもらいました。今は協会や局へ...感謝・感謝の想いしかありません。

 何回か前のこのコラムで、ブレーブ・ブロッサムズ=ラグビー・ジャパンの狂騒曲は終焉したが、ラグビーの世界的な宴は続く...などと書いたばかりだが、それも遂に終焉を迎えてしまった。いささか前のことだが少し前の様にも思える、南アフリカ(スプリングボックス)とイングランドの南北対決による決勝戦。7万を超す大観衆が集まったこの試合、マスコミ関係者でも両国の試合にこれほどの客が集まる(外人と日本のファンの比率はざっと見て4対6)とは...一様に驚いていたが、びっしり埋まった観客席は見事の一言。結果は皆様ご存じの通り、32対12でスプリングボックスの圧勝。しかし後半途中までどちらに転ぶかわからない緊迫感ある試合が続き、後半途中から南アの執拗なボディーブローが効き、最後はかなりな差がついてしまったが、決勝に相応しいグッドゲームだった。前半イングランドが執拗に攻め続ける場面があったが、称賛に値する秩序あるディフェンスでその危機を凌ぎ、ゴールを割らさせず、力量差が出たフォワード力で南ア=スプリングボックスが、見事に前評判を覆しイングランドをねじ伏せた。スポーツ史上最大のアップセットと言われた、前回大会のジャパン戦での屈辱負けの一大ダメージを払拭する快勝だった。

 ぼく自身は久々に思い入れ強く、スプリングボックスを応援していたのだが、勝利の瞬間ホッとすると同時に嬉しさも募った。前にも書いた通りスプリングボックスの主将は、初の黒人プレーヤーのシヤ・コリシ。彼がゲットーと言ういかにひどい境遇で育ち(食事もとれない幼少時代だったと記者会見でぽつりと漏らした)苦労してラグビープレーヤーになったかは、あのラグビー界のレジェンド(彼も南ア黒人)、ブライアン・ハバナから早稲田大の上井草グランドで直接に聞いていただけに、コリシが優勝杯のエリスカップを高々と掲げるところをぜひ見たいと思っていた。そしてそれこそが今回のRWCの象徴、ダイバーシティー&インクルージョンスポーツとしてのラグビーRWCの意味合い...とも思っていただけに、かつてない大成功をこの大会が収めた最後のピースが、彼のエリスカップ獲得の瞬間だったのだと僕は信じている。本当に素晴らしい大会でした。
  それにしても我らのラグビー番組の主、藤島大さんが試合後いみじくも言ったように、この決勝戦はまた如何にジャパンのフォワードが強かった(=頑張ったか...)ということのはっきりとした証明でもあった。前半からイングランドのFW陣は南アに押されまくっていたのだが、ジャパンはなんと前半はほぼ互角に、この強烈FW陣に伍していたのだから...。本当にご苦労でした、ジャパンの選手の皆さん。特にFWの皆さん。

 ただこの決勝戦、いささか残念なことが2つほど。試合が終わっての表彰式で、なんと2位のイングランドの選手の何人かが銀メダルの授与を拒否したのだという。ピッチから遠い記者席では詳細は分からなかったが、記者の間でもそんな話が出ており、ネットニュースにも載ってかなりな問題になっており、はなはだ残念と言わざるを得ない。そしてこのイングランド、監督のエディーは記者会見ではブスッと無口だったのだが、ミックスゾーンでは(監督がこの場に出ることも珍しいのだが...)至って明るく雄弁。どうやらこの後は母国オーストラリアの監督就任の話もあるようだが、どうやらそれが本当なのかとも推測されそうな快活さだった。
 もう一つぼく個人として残念だったのは、試合後のミックスゾーンで南アの主将、シヤ・コリシのインタビューを取れなかったこと。ほかの何人かの選手には聞けたのだが、肝心の彼の感激の声はダメ。祝勝会などでついに時間までにゾーンに現れなかったのだ。直接この感激の想いを聞きたかっただけに、至極残念なことだった。しかし本当におめでとう、南アフリカ=スプリングボックス、そしてシヤ・コリシ主将。
 そして新生ジャパンは、来年イングランドと日本で対戦、遠征してスコットランドとアイルランドとの試合を行う。「ティア1」と同等の扱いを受けることに決まった。頑張れ新生ジャパン。それにしても監督は誰がなるのか...。ジェーミーは新生オールブラックスの監督候補と言うではないか...。心配の限りですね。

 さて最後に今回RWC関連のジャズお勧めアルバムは、南ア出身のジャズキング、トランぺッターにしてボーカリスト、作曲家の故ヒュー・マセケラ(18年没。享年78才)の『レコンストラクション』。クルセイダーズと共に吹き込んだアルバム(77年)で、邦盤も出ていたもの。彼は未だアパルトヘイト政策(人種隔離)が続く時代にあって、果敢にそれに対峙し遂に外国亡命を余儀なくされた悲運のミュージシャン・シンガー。カミさんは黒人運動家としても知られるシンガーのミリアン・マケバ。夫妻ともにジャズ&ポップスの世界で世界に知られているが、アルバムも数多く、どれもなかなかのものだが、アメリカ吹込みでクルセイダーズとの共演などと言う話題性も買ってこのアルバムにした。この偉才が亡くなってしまったのは本当に惜しい。

【今週の番組ゲスト:シンガーで心療内科医の海原純子さん】
初のジャズアルバム『RONDO』から
M1Give Me The Simple Life
M2O Conto das Nuvens(雲の物語)
M3Everything Happens To Me 」
M4Ordinary Fool

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