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テイスト・オブ・ジャズ

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テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.374~東京JAZZフェス2017】

 今や日本最大のジャズフェスとも言える「東京ジャズフェス」。夏の終わりの9
月最初の土・日、2日間にわたって行われるこのフェスに、今年も実直に2日間足を運んだ。今回でこのジャズフェスもなんと16回目だが、今年は再出発と言った意味合いもあり、この10数年続いて来た有楽町の東京フォーラム(記念すべき初回は調布の味の素スタジアム)から、今年は主催NHKのおひざ元、渋谷のNHKホールに会場を移しての第1回で、渋谷の街イベントとしての意味合いも含め開催されることになった。まあ一口に渋谷の街と言っても広いので、余り街全体を巻き込んだジャズイベントと言った感じには成り得なかったが、ニューオリーンズから呼んで来たストリートバンドなどの演奏行進などには人も集まったようで、それなりには話題を集めていた。ただ肝心のNHKホールの本公演の方は、ホール周辺事情などかなり疑問符が付く内容。まずホールの脇道=ケヤキ並木での恒例イベントは、外なのに大きな音は禁止とのことで、例年登場していた我らが早稲田ジャズ研のオンステージも実現不可能になり、およそ盛り上がりに欠けた。ホールの中の方も、慇懃無礼でヒラメ主義&半官僚機構のこの放送局らしく、自由度はかなり制限され、ジャズイベントらしい闊達さに欠け、お題目の「渋谷から世界に...(フロム・シブヤ・トゥ・ザ・ワールド)」とはだいぶ雰囲気も実態も違う感じ。更に公共放送のホールと言うこともあり、協賛各社のヴィデオなども昨年までとは違い会場では一切流されず、協賛社メリットはどこに...などと、いらぬ心配迄してしまう程だった。

 
さて昼夜2公演の方だが、山下さんのスペシャルユニットによる「寿限無」セッションの再演で幕を開け、サダオさん(渡辺貞夫)のデイブ・グルーシン、リー・リトナーと言ったかつてのお仲間との「カリフォルニア・シャワー」再演が大ラスを飾ると言う、かつてないラインアップ。J-ジャズ2巨頭の幕開けと大閉め、これが吉だったかどうかは...、聞いた方達それぞれの判断に任せるしかないが、何か今回のジャズイベント全体を象徴しているようで(かなり内向きと言うか縮み傾向)、ぼくは否定的に捉えざるを得ない。観客席はかなり満杯で興行的には成功とも言えそうだし、サダオさんとグルーシン、リトナー再開セッションも、あの時代を良く知るものには胸を打つものもあった(一番観客のリアクションが多かった)としてもなのだが...、全体の運営や仕切り、ステージ起用等々には、疑問符を付けざるを得ない感じがする。

 
さて今回の出し物の目玉になったのは2日目のトップに行われた、話題の才媛、狭間美帆が全体ディレクションとデンマークのフルバンドの編曲(作曲も...)を担当、かなり大掛かりなジャズ史俯瞰ステージ「ジャズ100年プロジェクト」だと思われる。ニューオーリーンズジャズから現代のコンテンポラリージャズまでをスクリーン映像も交え、リー・コニッツ、リー・リトナー、日野皓正、山下洋輔(彼女の師匠)など豪華ゲスト陣をフューチャーした形で、音で綴り上げると言う大胆な企画。彼女はコンパクトに見事にその企画のコアを抉り出し、その才能の豊かさを実証して見せてくれた。
 
この他にぼくが興味を引かれたのは、今年結成されたばかりと言うチック・コリアとスティーブ・ガッドの双頭新バンド(ラテンジャズ色横溢したぼくのお好みの生きのいいバンド)、ユダヤ系に中近東の音要素も加味し、ピアノトリオの新たな展開を提示したイスラエル出身の注目のシャイ・マエストロ・トリオ、そして大トリを彩ったサダオさんのスペシャルユニットの3ステージだった。また狭間セッションのゲストで登場したリー・コニッツは80才を優に超す高齢。さすがにその音はよれてはあったが、意気込みはまことに立派で、胸打たれる所も多々あった。

 これまでは毎回の昼夜公演にはそれぞれなにがしかのお題目(「ブルースの夜」等)が付けられていたのだが、それも今回は無し。いかに編成に苦労したのかが良く分かる訳だが、まあそうは言いつつもそれなりにそれぞれのステージを愉しんだのもまた事実ではある...。
 
特にサダオさんがアンコールに、グルーシンと二人であの復興応援ソング「花は咲く」を吹き始めた時は、いささかグッと来てしまった。やはりあれだけ感動的な場面を演出できるのは、サダオさんならではであった。
  
 
最後に一つ大変に残念だったのは、このジャズイベントを当初から実質的に仕切り、そのPRも兼ね我がジャズ番組にも毎年登場してくれていた、敏腕ジャズプロデューサーの八島敦子女史。その彼女がこの初夏、様々なストレスの為(?)からか病に倒れてしまい、このイベントの新たな立ち上がりを陣頭指揮出来なかったこと。彼女の心境を察すると本当に残念な思いもあるが、今回のジャズフェスはどうにか成功、来年もまた彼女のあの雄姿を見れるはずである。今年以上に真に開かれた素晴らしいフェスを作り上げてくれるに違いない。彼女のカムバックとその健闘を心から望みたい。

【今週の番組ゲスト:ブルーノートジャパン広報の岡田安正さんと、コットンクラブ広報の上神彰子さん】
今年3回目の開催となる「Blue Note JAZZ FESTIVAL」、横浜赤レンガ倉庫特設会場で923日・24日に開催されます。 

M1
FIRE / 上原ひろみ×Edmar Castaneda
M2Change of the Guard /  Kamasi Washington」
M3Holding On / Gregory Porter
M4Rock With You / DANI & DEBORA GURGEL QUARTETO」
 
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