「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週日曜19:00~19:30で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。
【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.747~最近のジャズ本~】
この処次々にジャズ関連本が出ており、そのいくつかは以前からの知り合いのもの。番組でもそれぞれの著者にはゲスト出演をお願いしているところだが、このコラムでも其れ等を一寸紹介してみたい。
まず初めのジャズ本だが、この著者はいささか大物過ぎて番組登場は無理なのだが、今をときめく世界的作家の村上春樹。ジャズ本は「デビット・ストーン・マーチの素晴らしい世界」(文藝春秋)である。この本は2月に出たもので、村上春樹の6冊目位のジャズ(音楽)エッセイ本だが、DSM(デビッド・ストーン・マーチ)に焦点を絞った、かなり春樹ならではのマニアックなジャズ本である。手に入れて以来このコラムで紹介しようと思いながら、つい延び延びで今になってしまったが、村上春樹と言う人のジャズへの愛着心がよく表れており、イラストを見ているだけでも愉しいジャズ本でもある。
DSM=デビット・ストーン・マーチとは、1940年代後半から50年代に、印象的なジャズアルバムのジャケットデザインを数多く手掛けた有名イラストレーター。ノーマン・グランツと言う、一世を風靡したジャズ興行主にしてジャズレーベルオーナー、彼のジャズレーベル、「ヴァーブ」や「クレフ」と言ったレーベルのジャケットデザインで名を馳せた人で、ペンによるキリッとしたシンプルな線で描かれる、ジャズミュージシャンの個性的な姿は大変に印象的。それぞれの演奏内容の素晴らしさとともに、その彼の描くイラストの妙に魅了されるファンも多く、彼をメインにしたジャズイラスト本やジャズジャケット集などという、ジャズ豪華本もかつて出されたこともある程の隠れ人気者でもある。そのDSMのイラストアルバムを春樹氏は180枚ほど所有しているとのことだが、チャーリー・パーカーやビリー・ホリデイからアート・テイタム、レスター・ヤングなど、それぞれのアルバムやミュージシャンの魅力などを、ジャズマニアならではの視点で愉しげに語り尽くす。そう言えばあの國分寺のジャズ喫茶「ピーター・キャット」で、物静かにコーヒーを入れたり読者をしていた静かなるマスター、村上春樹のシャイな姿が思い出される。良質で美しいジャズエッセイ集で、DSMのイラストを見ているだけで、心地よい思いがする一作でもある。
続いてはぼくのほぼ同年代(学年1年下)のジャズプロデューサー、伊藤潔の「マイ・ディア・アーティスト」(シンコー・ミュージック)。彼は今や世界に冠たる大レコード会社、ソニー・ミュージック(旧CBSソニー)最初のジャズ担当プロデューサーで、慶応大を卒業して直ぐに当時創業したばかりのCBSソニーに入社、貞夫さん(渡辺貞夫)を初め多くのミュージシャンのアルバムを若くして制作したが、それらのミュージシャン達との交友を綴ったもの。彼とほぼ同時期に色々と活動も共にしただけに、個人的にはすごく興味深い自伝的ジャズエッセイ集だった。帝王マイルスを筆頭に貞夫さん、日野さん(日野皓正)、そしてぼくの仲間=チンさんこと鈴木良雄や増尾好秋、さらには若手の注目株~桑原あい迄全部で22名。その多彩な交遊録は、そのまま日本のモダンジャズ史とも言えるものだし、同じプロデューサーとしてもやり手だった彼の方法論、色々と教えられる処も多々ある興味深いジャズ本。彼は拠点が今は名古屋なので、スタジオに来れるかはなんとも言えないが、来れば面白い話をして貰う予定...。
その他先日亡くなったサックスの巨星、「デイヴィッド・サンボーン~巨星の足跡」(シンコー・ミュージック)とか、石若駿(DS)、井上銘(g)、魚返明未(P)と言う、J-ジャズを牽引する若手3羽烏によるジャズの愉しみ方を教える「ジャズ深堀りセッション」(大修館書房)など、興味深いジャズ本が色々あるが、スペースも尽きたのでそれらについては次の機会に紹介したい。
【今週の番組ゲスト:ジャズ専門誌『Jaz.in』編集長の佐藤俊太郎さん】
M1「The Nearness of You / Kenny Barron」(『Beyond This Place』より)
M2「Aries / 納谷嘉彦」(『Tint』より)
M3「Now Feels Bigger than the Past / Becca Stevens」(『Maple to Paper』より)
M4「Eye Of The Hurricane / V.S.O.P.THE QUINTET」(『ライブ・アンダー・ザ・スカイ伝説』より」
Jaz.in Vol.011




