【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.799~軽井沢型絵染美術館~】
軽井沢は全国的に屈指の避暑地として知られているのだが、同時に文化・芸術の街と言った側面もある。これには古くから有名な文豪や画伯などが、この地に別荘を持っており、彼らが色々な創作活動や文化的な催しなどを、この地で行った...ということも大いに関係しているのだろう。そして彼らが亡くなった跡地に、美術館や記念館を建てる...といった傾向もあり、美術館で言えば洋画家の脇田和美術館などがその代表格になる。
またこの地の高級感なども考えて、自身の美術館をつくる人も居て、人気の高い日本画家=千住博の美術館などがそれに当たる。その他にも有名画廊が関係しているのだろうが、草間彌生や奈良美智などの現代売れっ子作家の作品を集めた軽井沢現代美術館(残念ながら9月23日で閉館)等など、その他美術館は10幾つかある筈。まあこれらの中で、今最も話題を集めているのが、軽井沢駅からもほど近い軽井沢安東美術館だろう。ここはあの名画伯=藤田嗣治の作品だけを集めた美術館で、元々個人で集めたものを美術館へと昇華させたと言ういささか風変わりだが、その作品選択の的確な眼力でも人気のもの。まあこれらの多種多様な美術館巡りも、この軽井沢と言う地の愉しみの一つであるのは間違いない。
ところで藤田作品を集めた安東美術館の直ぐ側なのに、あまり人が訪れない小さな趣味の良いぼくのお勧め美術館がある。軽井沢型絵染美術館。型絵染とは余り知られていないかも知れないが、日本の民芸技術の一種で、渋紙に模様を彫リ色を指していく、染め物手法のこと。この技法では、人間国宝の故芹沢けい介が最も有名で、ぼくはこの芹沢さんの作品が大好き。昔ラジオたんぱ(ラジオNIKKEI)が赤坂のアメリカ大使館前のビルにあった時、その地下には有名な日本料理屋「ざくろ」が入っていたが、そこが作る年間カレンダーが趣味の良い芹沢作品。ぼくは毎年それを店から貰うのが愉しみの一つだった。その芹沢さんの薫陶を強く受けた一人が、小林今日子さんで、女性誌などにも多くの作品を発表していた知る人ぞ知る染絵作家だった。彼女自身は惜しくも、10数年前に亡くなってしまったのだが、その作品と別荘の建物や土地などを軽井沢の町に寄贈、その地に小さな美術館が建てられたという次第。
ぼくが初めてこの美術館を訪れたのは、美術館が出来て直ぐのこと。軽井沢の駅から旧軽銀座の方へブラブラしていると、別荘地の中に小さな本当に気づかないような、美術館の案内板があり、興味を惹かれて入ってみると、これが大正解。芹沢さんのお弟子さんならではの、素晴らしい作品が並んでおり、それも彼とは大分趣を異にする西洋風なモチーフの作品で、あっと驚かされたものだった。絵柄、彩色などなど、どれも大胆でいて繊細。すっかり気に入ってしまい、大枚3千円強を出し作品集まで購入したものだった。その後近くに大賀ホールも誕生、コンサートなどの跡には時々訪れたりしていたが、ここ数年は車もなく軽井沢に町に出ることも億劫で殆んど訪れていなかった。だがこの夏野暮用の後に、久しぶりにこの型絵染美術館を訪れ、改めて小林今日子さんの素晴らしさに感嘆した。経歴を見ると彼女が芹沢けい介氏に師事したのは、なんと齢40を超えてからのようで、その事実を知って更にその作品に惹かれること多だった。特に今回は音楽関連の作品が良かった。
皆様も軽井沢に行く機会があれば、一度この小さな型絵染美術館を訪れてみて下さい。和と洋が混在した小林型絵染の世界に惹かれること必定です。駅から歩いて10数分、入場料はなんと200円です。お勧めです。
【今週の番組ゲスト:ラテンピアニスト あびる竜太さん】
M1「El Viento de Málaga /あびる竜太」(『El Viento de Málaga』より)
M2 「Quizás, Quizás, Quizás (with NORA SUZUKI)/ あびる竜太」(『El Viento de Málaga』より)
M3「Stella by Starlight / あびる竜太」
M4「HASEKURA~海と時を超えた絆~/ 岸のりこ」※シングルデジタルリリース




