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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、再放送毎週土曜日22:00-などでオンエアー中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.167~タモリ論~】

 「タモリ論(新潮新書)」今売れていると言う。我らがタモリ(森田一義くん)をまな板に載せた評論集が出て、それが売れていると聞けば、なにはともあれ読まざるを得ない。その著者が、あのなんとも表現しがたい恐怖&ハードボイルド小説『民宿雪国』の異才、樋口毅宏と聞いてますます興味が湧く。確か彼はまだ40才台前半のはずだが、その彼がどんな「タモリ論」を展開するのか、大変に興味深いところだった。帯には「やっぱり凄い!革命的芸人論」などと言った刺激的なキャッチが躍るが、内容はまあかなり当たり前の感想集と言った感じで、いささか看板倒れの感あり。かえってタモリよりも、たけちゃんとさんまを扱った章の方がおもしろい気もして、著者は肝心のタモリよりも他の二人に関心があるのでは...、と思わせる辺りが、かえって興味深かったりもした。

 まあ著者は、長年のタモリ・ウオッチャーを自負しているので、それだけに本を書くことも依頼されたのだろうが、40代初めと言う年令では、タモリのあのデビュー当時の密室芸~最もエキセントリックで尖がった狂気芸を、同時代体験していない...。それだけにタモリについて彼に宿る狂気やその神髄に気付いているのだろうか...等と書いても、どうも今いちピンとこない。ぼく自身は未見だが、彼の最も凄かったのは大晦日(?)の軽井沢、放送作家、高平哲郎くんの別荘の庭で雪の中、夜を徹して繰り広げられたと言う、赤塚不二夫とのオールヌードでの狂気の絡み(タモリの仕掛け人、高平くん談)、この2人の凄まじい絡み合いは、伝説の四谷のバー「ホワイト」などで何回か目にしており、およそ放送には載せられないもので、あの森田一義くんが...と心底驚いた時もあった。


 「タモリ論」では、生放送の司会を毎日30年も続けて何故気が狂わない...と言う章もあるが、彼は別段芸人志望ではなく、本質的には大学出のサラリーマン気質の人。大学時代の彼は確かに面白い奴だったが、それだけにテレビの主役に祭り上げられるようになってからは、その仕事が終了する~切られる迄は、生真面目に全うするのは至極当然で、サラリーンだったら当り前のことである。それにしても異色の際物芸人から、お笑い界の中間管理職、そしてお笑いビッグ3の一人にして社長とは、まさにリーマン出世話だ。
 まあ彼がいつまで「いいとも」を続けるのかはわからないが、このところあの中洲産業大学タモリ教授に再び自身も関心が向いているようで、早稲田大ジャズ研主催で本格的なジャズ講座を、やってもらおうじゃないかと言う話も持ち上がっているとも聞く。

 それにしても彼は実に義理堅い男。ぼくの同期で夭逝してしまった瓜坂君(本職は業界紙の社長で片手間にジャズ・マネージャーもやっていたが、続けていればジャズ界切っての名マネージャーになった筈)に、タモリは色々なことを教えてもらい成長した訳で、「ウリ」は頭が上がらない大きな存在。それだけに10年ほど前の早稲田学報の2回連続インタビュー記事では、早稲田時代の思い出としてその殆どをウリの想い出だけを語っていたのが大変に印象的、感動的で泣けた。
 そう言えばタモリのラジオ・デビューが、ラジオ短波でのピアニスト、中村紘子インタビューだということを知っている人は、業界でもあまり多くはないだろう。中村さんへのインタビューアーとして、当時上京直後の無名時代のタモリを推薦したのは良かったのだが、中村さんを前にすっかりあがってしまい、ほとんどインタビューにならなかったようで、当時の先輩の担当ディレクターからぼくがお叱りを受けた(タモリもしょげ返っていたが...)のも、懐かしくも楽しい想い出だ。

 森田一義君、何時までも元気で頑張ってほしいもの...。貴方は直ぐに狂気に自身を変身させられる大天才にして、偉大なサラリーマン芸人なのだから...。

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