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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.271~映画「バードマン」】

 今年の夏はほとんど長野の追分に居たので、テレビどころかヴィデオも見られず、映像作品には飢えていた。これは毎年のことなのだが、こうしたTV、ビデオなど映像と無縁で、ある意味落ち着いた生活もまあ悪いものでは無い。しかし東京に戻ってくると、その反動で直にヴィデオ屋に直行、作品を借りまくると言うのも例年と同じである。このヴィデオ作品も、読書と同じくPI(私立探偵)が登場するハードボイルドものなら何でもと言った感じで、サスペンス・アクション・ミステリーなどが主なフィールド。東直己原作で大泉洋&松田龍平主演の札幌探偵シリーズなどは、ぼくの最近のお勧めの一つ。今回もそうしたものを幾つか探したが、なんと言っても一番見たかったのはアカデミー賞作品賞を受賞した、話題の作品「バードマン」。

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バードマン」と言えば我らが大学時代からのジャズ仲間で、今や中平穂積氏と並び新宿のジャズ文化に生き証人となった感もあるライブハウス「J」のマスター、幸田稔くんの別名。バードだからあのチャーリー・パーカーに関係した名前かと思ったら、これはバットマンやスーパーマン等と同じく、マイケル・キートン演ずる主役がかつて大ヒットさせた映画のスーパーヒーロー名。この大ヒットを飛ばした売れっ子が落ち目になり、ブロードウエイの舞台に立つと言う設定の映画で、ダークファンタジー、ブラックコメディー、人間ドラマなど様々な要素を含んだ大変に面白い映画で、アカデミー作品賞も当然と言った充実な内容。監督はメキシコ出身で『バベル』などを撮った気鋭のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ。

 
映画は一般の映画と違い、カット割りがほとんど無く、一回の長回しで撮影されたように感じる手法で撮られた、かなりな意欲作。この手法が主役の心理と見事にシンクロし、観るものをスクリーンに釘付けにすると言った趣向なのだが、そのために音楽をどうするか...、と言うところで監督が選んだのが「わたしは閃いた。これはドラムムムスススだ!映画の持つ内なるリズムを探し出し、見るものを引きずり込むのにはドラムソロが最適」と言う訳。そして選ばれたドラマーが、監督と同じメキシコ出身の俊才アントニオ・サンチェス。
 サンチェスは今やジャズ界で人気、実力とも№1ユニット、パット・メセニー・グループのドラマーで、この9月末にもメセニーと一緒に横浜での「ブルーノート・ジャズフェス」に登場するはずだが、圧倒的な力量を誇る天才肌のドラマー。その彼がいくつかのシーンでドラムソロにより、主役の心理を描きだ出す。激しくしかも寂しげに...。全体に独特な浮遊感に包まれたこの映画で、彼のドラムスは強烈なアクセントをプラスし、映画を見事に盛り上げる。映画の中でもソロで無心にドラムを叩いているドラマーが短く何回か登場するが、之は彼自身なのか...。ドラムといえば『セッション』というドラマー養成映画も評判になっており、これもぜひ観たいのだがまだヴィデオ化されていない。しかしこの「バードマン」はかなり見がいののある映画で皆さんにもぜひお勧めしたい。サンチェスのソロおよび映画スコア以外にも、マーラーやラベル、そしてミニマル・ミュージックの鬼才、ジョン・アダムスの局なども使われており、それらも作品に見事にフィットしている。当然主役のマイケル・キートンの演技も見事の一言。ヴィデオを見ている間、キートンの名前が出てこずそれがずっと引っかかって、今イチ作品にのめり込めなかったところもあった。年をとるってやはりかなりヤバイですね。

【今週の番組ゲスト:ハシャ・フォーラーのリーダーで、フルート、ウインドシンセサイザー奏者のヒロ・ホンシュクさん】
M1「Milestones」
M2「E.S.P」
M3「Door8」
M4「Wood Row


 

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