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テイスト・オブ・ジャズ

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テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.592~チャーリー・ワッツ死す~】

 ビートルズと並び、世界のロックシーンの頂点に君臨するローリング・ストーンズ。ビートルズがポップ史に残るレジェンドユニットなのに対し、ストーンズの方は今なお現役の存在と言う大きな違いがあるし、ミック・ジャガーを筆頭とした永遠のチャンジー悪ガキ集団と言ったイメージを保ち続けている、言うなればロックの本源的な部分を体現化し続けたこのグループ、本当に凄いの一言。その上ストーンズのアルバムには、バックでソニー・ロリンズやウエイン・ショーターなどと言った大物ジャズメンも参加したりもしている。そんな悪ガキ集団(?)の中にあって異色の存在と言うか、ただ一人大人の渋さを保ったスーツの似合うロック紳士...、それも独特な妖しげな渋さなのだが、それを誇っていたのがドラマーのチャーリー・ワッツだった。その彼が8月末、享年80才で亡くなってしまった。

 高校生の頃からジャズに親しみ始めたぼくにとって、ロックはそう馴染あるものではないのだが、この2つのグループはほぼ同世代のもの。それだけに残念な感はあるが、やはり向こうの存在だと言う感も否めない。ただこのワッツと言うドラマーだけは、何か不思議な愛着がわいてしまうのだ。と言うのも彼はあのストーンズの基底部をがっちりと固め、ストーンズならではのグルーブを叩き出していたロックドラマー(音楽誌で世界のドラマーの3位とか12位にも選出さたこともある)だが、ジャズドラマーを自任し他でも広言もしていたと言う、変わり種のジャズフリークでもある。彼のご贔屓はトニー・ウイリアムス等のジャズドラマーで、実際に彼が単独リーダーとしての来日公演は、大編成のジャズバンドを率いてのもの。それもトラッドやスイング色の濃いものだったとも聞く。また彼には7枚ほどのリーダーアルバムが残されており、その中にはジャズの始祖とも言うべきバードことチャーリー・パーカーに捧げられたものを始め、そのほとんどが純生ジャズアルバムなのである。彼はあるインタビューで「俺にとってビートルズ、エルビス(プレスリー)はノー、マイルスはイエス」だとも答えているが、「ロックで稼ぎジャズに貢ぐ」。まあこんな男まず他にはいない筈だ。

 ぼくは彼のリーダー作2枚持っているが、当然2枚ともジャズ色の濃いもの。そのうちの1枚は『ロング・アゴー&ファー・アウエー』(96年)スタンダード曲をタイトルにしたこのアルバム、「アイ・シュッド・ケア」「ワッツ・ニュー」などのスタンダードの歌ものを取り上げたある種のボーカル作品。黒人シンガーがフルオーケストラとワッツのジャズユニット(ブライアン・レモン(p)ピート・キング(as)等のイギリス有名ジャズメンを含む)をバックに唄うと言う趣向のもの。リーダーのワッツはブラッシュやスティックワークを巧みに扱い、実に気持ち良さそうにドラムを優しく叩き上げる。いかにも金を掛けたと言った感じの、ある意味単なる彼の道楽アルバムなのだが、そこに不思議なワッツのジャズ命と言う感情が滲み出ており、また何とも言えない。
 再度言おう こんな男(ジャズ・フリーク)そうめったにいないと... 合掌!

【今週の番組ゲスト:トランペッターの島裕介さん】
新譜『Silent Jazz  Case4』から
M1「Adhesion」
M2「Grand Central NY」
M3「Japan Beauty」
M4「Never Die Miles」

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