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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日22:00-22:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.220~東京ジャズ2014~】

 もう10年以上前のことになってしまったが、あの頃は毎年真夏から夏の終わりにかけて、インターナショナル規模のジャズフェスが、東京およびその周辺で幾つか開かれていた。「ライブ・ウンダー・ザ・スカイ」「マウント・フジ・フェス」「斑尾ジャズ・フェス」等々である。しかし今はもうそれらは跡形も無い。これを受けて21世紀に入りスタートを切ったのが、NHK主催の「東京ジャズ」。9月最初の土曜と日曜に開かれる。今や東京周辺でジャズフェスと言えばこれだけになってしまった。ロックフェスは数も増え、どんどん隆盛を極めていると言うのに寂しい限りである。しかしこれが、現在のジャズ状況を如実に物語っている訳だから致し方ないのだが、ジャズの場合には余りに収益にこだわり過ぎる。それも主催者側からすれば至極当然ではあるのだが、これまでもそうだったがジャズフェスの場合どうもチケット販売より大口の企業スポンサーを見付け出し、その収入でフェスの損益分岐を考える~即ちフェス開催時には元を取れるシステムが何よりの条件に思えてならない。ここら辺が数あるロックフェスとは違い、かなりつらい所でもある。ただ屋外広場での無料コンサートの実施、これは英断で今やこちらの方にこそ、今のジャズ状況が写し出されていると言う評価も高いのだが...。

 さてそんな詮索は置いておくとして、今年の「東京ジャズ」本体だが、概ねチケット販売も良好で、最も高い席などはソールドアウト状態。ぼくが聴いたのは土曜の昼の部と日曜の昼・夜の部、3ステージだったが、やはり今回も女王、上原ひろみのオンステージと言った印象も強かった。ある意味この「東京ジャズ」は、彼女の凱旋の場所と言った趣きもあるのだが、それにしても3年振りにこのステージに戻ってきたと言う彼女、かなり強烈だった。今回は自身のスーパートリオと同時に、あの世界屈指の弾き手、ドミニカ出身のスーパーテクニシャン、ミッシェル・カミロとのスペシャル・デュオという豪華なステージも用意されており、その上屋外ステージにも飛び入り、また彼女を世に送り出した恩師の一人でもある、レジェンドピアニスト、アーマッド・ジャマルに花束を渡したりと、八面六臂の活躍。カミロとの10年振り近いデュオでは、業師の彼に拮抗する充分なテクニシャン振りを、ファンに強烈に印象付けてくれた。よほどの自信が無ければ彼とピアノデュオを再度実施するとは考えられないのだが、それにしても素晴らしい。激突・融和、反発・親和、迫力・優美等々、動と静のアンビバレンツな感情・技巧を、そのデュオの中に全て注ぎ込んだ、ダイナミズムでセンシティブな究極のデュオプレーを展開、聴く者を魅了し尽くした。「キャラバン」や「べサメムーチョ」と言ったお馴染みの銘品も、全く新たな息吹を持ったナンバーへとして仕立て直されるなど、もう語る言葉も無いと言った感じもある。日本人として初めて本格的インターナショナルプレーヤーが立ち表れたと言う感じなのだが、ただサイモン・フィリップとアンソニー・ジャクソンとのスーパートリオは期待したほどでもなかった。このトリオプロジェクトももう結成3年余り。世界を駆け巡って来た訳だが、何事も前に突き進む、前進あるのみの彼女、そろそろこのプロジェクトも終焉に向かいつつあるのでは...という感じもした。まあそれにしてもあのバイタリティー、凄いの一言。

 その他で興味深かったのは、クリスチャン・マクブライドと小曽根真のフルバンド競演。大編成のフルバンドが2つもステージに上がるだけで迫力充分。その上両方がそれぞれの持ち味を出した演奏曲目(小曽根の「ノーネーム・ホーセズ」は「ラプソディー・イン・ブルー」のジャズ版)で競うだけに、日米双方の実力も分かる趣向。客席にいたケネディー駐日大使も小曽根から紹介され、一杯のブラボーを両方に送っていたが、最後は両者の共演。トランペット陣が全員フロントに出てきて、ソロを交換する、愉しくも微笑ましい光景だった。 今や首都圏唯一のジャズフェス。是非これからも続行して行ってほしいもの。大NHKに大日経新聞も協賛しているのだから、15~20回と回を重ねて欲しいものと、心から願う次第です。
【今週の番組ゲスト:ボーカリストでピアニスト、コンポーザーの蜂谷真紀さん】
M1『竜骨』
M2『おっ死に男との旅』
M3『ラジオね風』
M4『もう怒った!』
M5『If You Could See Me Now』

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