「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週日曜19:00~19:30で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。
【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.742~MPBとバッハ~】
このコラムでもこれ迄に何回か書いて来たと思うが、ぼくの音楽愛好の原点は「MPB」である。こう書くと、やはり南方指向...、ブラジル好きなんですね...と思われるかも知れないし、「MPB」が分からない方にはなんのことやらかも...。このMPBとは、音楽用語でムジカ・ブラジレイラ(ミュージック・ブラジリアン)、陽気なサンバの国=ブラジルのポップミュージックを指し、そこにはミルトン・ナシメントやカルロス・ジョビン等の大物達から、マリーザ・モンティなどの若手迄、多くの素晴らしい音楽家が含まれおり、ぼくも大好きな面々なのだが、ここでのMPBはそれではない。
ぼくのMPBとは、マイルス・デイビス、アントン・ピアソラ、そしてJSバッハと言う、ぼくの音楽原点とも言える3偉人の略称。これさえあれば音楽は...とも言える、ぼくにとっての宝物なのである。バッハは当然歴史上の音楽偉人だが、マイルスもピアソラもモダンジャズとモダンタンゴ、それぞれの分野での帝王にして今は亡きレジェンド。その3巨星の中でも、至高の存在とも言えるのが「音楽の父」バッハ。その音楽をチェンバロとピアノで奏でそのうえ楽曲解説まで...という企画が、軽井沢の大賀ホールである...ということを知り、軽井沢の町にも野暮用ありだったし、大賀ホールもかつてぼくも少し関わりのあった、軽井沢ジャズフェス以降は余り顔を出していないこともあり、夏の暑い中に追分の山荘から出向くことにした。
チェンバロの方は加久間朋子、ピアノは清水朋子と言う余り聞いたことのない面々。加久間さんは日本チェンバロ界の大御所、故鍋島元子に師事した人で、一方の清水さんは桐朋学園卒業後IT業界で長年働き、音楽活動を再開したのはつい最近、仕事を辞め軽井沢に移住してからのことだと言う。いかにもキャリアウーマンという感じで、ピアニストと言う優雅さは無いのも興味深い。チェンバロの方は、バッハの平均律クラビーア曲集など6曲ほど。一方のピアノはあのゴールドベルグ変奏曲の全曲披露。両方演奏と解説も合わせ2時間強の内容で、まあそれなりに愉しむことは出来た。
チェンバロの演奏会、実はぼくはこれまで殆ど聴いたことがなかった。それだけにある意味新鮮ではあったし、その優雅さには心惹かれるところもあったが、予想以上に音が小さく細部まで聞きとれず、結構フラストレーションも溜まったものだった。 一方のピアノによるゴールドベルグ全曲披露は、やはりピアノ演奏のブランク期間も長く、いささか荒い演奏ではあったが、それなりに愉しめた。何より弾きたい...と言う彼女の強い意思が表れた演奏で、細部は問題ありでもそれなりの訴えかけもあった。このゴールドベルグ変奏曲はあの天才グレン・グールドの強烈な演奏(デビュー時と晩年の2回アルバム化)によって、現代に蘇った感ありとも言える訳で、清水さんも再度ピアノ演奏を再開した後、テンポ、フレージング、ダイナミクス等、このグールドの演奏を参考にこの曲を毎日弾いていたと言うが、ようやく最近になってあるストーリーを作り上げることで、自身のビジョンを見出すことが出来た...のだとも語っていた。
そう言えばバッハのジャズ化といえば、ジャック・ルーシェ(仏)のピアノアルバムが一時大ヒットしたが、ぼくのお勧めはMJQのリーダー、ジョン・ルイスのもの。全部で4枚程残されているが、チェンバロも弾いており彼のバッハへの傾倒の念が良く出た仲々の作品だと思うし、今でも時々聴くこともある銘盤だ。まあそれにしても大賀ホール、相変わらず響きの良いホールでした。
【今週の番組ゲスト:パーカショニスト 大儀見元さん】
初のソロ名義でギター弾き語り二部作『VERY PRESENT shaft』『VERY PRESENT ring』から
M1「Sweet little darling」
M2「Happy birthday」
M3「Eleggua」
M4「I want to hold your hand」





