【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.797~真夏のライブ鑑賞~】
8月下旬にこの秋実施のジャズイベント打ち合わせなど、野暮用が幾つかあり数日間帰京することにした。信濃追分もそれなりの暑さだが、首都東京の蒸し暑さ...と言うより酷暑...には、チャンジー(爺さん)の身にはなんとも堪えたし参った。但し貴重な数日間なので、酷暑にも負けずにジャズライブにも顔を出した。一つはブルーノート東京での当代きっての女流歌い手、セシル・マクローリン・サルバンドの7年ぶりのライブ公演。そしてもう一つは、日本のラテンジャズ~サルサバンドの草分けにして牽引役、「熱帯JAZZ楽団」の30周年記念コンサートである。特に熱帯の方はリーダーのカルロス菅野が、7月の休日に放送した「テイスト・オブ・ジャズ60周年記念特番」に祝賀メッセージを寄せてくれただけに、何をおいてもコンサートには...と決めていた。それだけに客席にたどり付けてホッとした想いだった。結論から言えば、この2つのライブ、東京の猛暑を吹き飛ばす様な快感・悦楽のステージで、共に十二分に堪能させてもらった。
まずブルーノート東京のセシル・マクローリンの方だが、7年ぶりに来日と紹介したのだが、実はぼくは彼女の歌声を耳にするのは今回が初めて...。前回の公演の3日間は全てソールド・アウト...と言う、大人気振りだったのだが、今回も客席は満杯で、彼女への期待値の大きさが窺えるというもの。彼女はぼくにとって忘れることの出来ない存在で...、と言うのももう30年ほど前のこと、当時ジャズ誌「スイング・ジャーナル」の年間ジャズ優秀作品を選出する、ジャズ選考委員をぼくはやっていた。その折に彼女の本邦デビュー作が、ビクターエンターテインメント社から初めて出され、それに痛く感激したぼくは、年間の最優秀ボーカル作にそのデビュー作を強く推薦したのだが、他の委員の面々は誰も見向きもせず大変に悔しい思いをしたものだった。その彼女が数年後にはグラミー賞を3年連続で受賞、一躍女性ジャズボーカルのトップに躍り出たのだった。それだけにぼくの感性は他の面々を凌駕しているなー、と一人で悦に入っていた。だが肝心の彼女の生の歌唱をこれまでどうにも都合が付かず、聴けていなかった。何とも情けない次第だが、今回ようやくその実力をつぶさに確認、初めて彼女の歌声とその技巧に接した時の感激が、今回くっきりと甦って来たのだった。彼女のレパートリーはスタンダードの「マイ・フェア・レディー」の挿入歌以外は、ほぼ分からなかったが、英語・仏語・クレオール語などを自在に伸びやかに扱い、声のコントロールも抜群。サマラ・ジョイなど、有望な脂質が続々登場の女性ボーカルシーンでも、グレッチェン・パーラトと並び、屈指の存在であることを強く印象付けてくれた。素晴らしいパフォーマンスを展開する彼女を、力強くフォローするサリバン・フォートナー(P)以下の面々も、抜群の腕達者揃い。ベーシストがNYで活躍中の中村恭士なのも嬉しい処だった」。
続いて翌日に行われた、結成30周年のラテンジャズバンド=熱帯JAZZ楽団のコンサートは、ぼくが初めて訪れる「ティアラ江東」という江東区住吉にある公共ホールでの開催。地下鉄の住吉駅を降りると可成りな年配の面々が、同じ方向に歩いて向かう。これに付いて行けば...と思った通りで、ほぼ全員がティアラ江東へ...。会場には難なく到着したが、それにしても客層の年齢高しである。ラテンジャズ=サルサのコンサートなので、もっと生きの良い若者達で溢れ返っているのかと想いきや...。まあ自分自身がもうその年令の真中辺なので、遺憾ともし難いがまあこれも仕方なし。熱帯JAZZ楽団はデビューの時から番組に出演、ラテンジャズでは最も出演回数の多い面々で、リーダーのカルロスを始め、楽団員としてだけでなく個々のプレーヤーとしても、ピアノの森村献を始め多くの面々が良く登場している。
楽団は30周年ということで、我が「テイスト・オブ・ジャズ」の半分の歴史なのだが、その実績は当然彼らの方がはるかに立派。リーダーのカルロス菅野は、自身のボーカルアルバムを出したばかりだけに、今回も「国境の南=サウス・オブ・ザ・ボーダー」などを、ダンディー気質たっぷりに歌い継ぎ、会場からヤンヤの喝采。長年のわが友=森村献も先日物故した帝王=エディー・パルミエリに捧げたオリジナルなど、素晴らしいオリジナルナンバーを紹介、ピアニストとしても大いに気を吐いていた。サックスセクションの一員に、どうしたことか藤陵雅裕の顔が見えないなーと思っていたら。突如ゲストプレーヤーとして登場した。なんと彼は脳溢血を患い半身が余り自由にならないのだと言う。そんな彼だが不屈の努力で、徐々に回復しつつあり、ステージではラテンの銘品「ベッサメ・ムーチョ」を吹き通した。何とも感動的なサックスソロで、思わず涙ぐみそうな心持ちになってしまった。最近のサックスプレーでは、随一とも言える圧巻の渾身プレーだった。
まあこの2つのコンサート、何とも気持ち良い快感ライブで、真夏の灼熱が乗り移ったような、熱くも激しい瞬間の連続に完全に酔い痴れました。やはりジャズって良いよね。
【今週の番組内容:オスカーピーターソン特集】
インタビュー出演
オスカー・ピーターソン・センテニアル・カルテット
ウルフ・ワケーニウス(Guitar)
ジム・ドクサス(Drums)
マイク・ドーンズ(Bass)
ロビ・ボトス(Piano)





