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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日22:00-22:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.214~新宿のボス~中平穂積~】

 今でこそ新宿と言う街、大陸系を中心としたアジアンマフィアが闊歩する歌舞伎町を始め、暗黒都市として凋落の一途のようにも語られ、若者文化のリーディングシティとしても、渋谷に相当後れを取ってしまった。だがかつてぼく等の若かりし頃、ジャズが元気だった時代=60~80年代初め頃までは、文化にしろファッションにしろ、「じゅく」無くしては新文化は考えられなかった。「じゅく」はアナーキーな街にしてファッション先端タウンでもあったのだ。当時の文化をリードする先端=ジャズタウンの新宿には、「木馬」「きーよ」「ヨット」等々、数多くの個性的ジャズ喫茶が林立し、そこから寺山修司を筆頭に、中上健二、北野武、篠山紀信等々、数々の文化人が巣立っていった。しかしあれから半世紀弱、今はそれらのジャズ喫茶はひとつも残っていない。僅かにその時代から続いているのが、「ダグ(当時は"ディグ"と言ったが、場所を変えその後継店として存続している)」だけであり、オーナーの中平穂積氏は、新宿の生き字引として、新宿について特集をするとなれば、必ず登場と言うのが業界のお約束事である。

 そんな中平さんは、新宿「ダグ」オーナー(店は今は息子さんがやっているが...)と同時に、世界的なジャズ・フォトグラファーとしての顔も持っている。和歌山県新宮市出身の彼は(中上健二は高校の後輩)、日大芸術学部の出身で写真専攻。大学を出てすぐにジャズ喫茶を始めたが、傍らジャズメンの写真も撮り始め、その交友の広さも相俟って、写真家としても知られるようになる。ぼくの敬友で演出家・放送作家の高平哲郎氏がかつて「銀座の学校・新宿の授業」と言う本を出し、その中で「ディグ」での人生授業を記しているが、ぼくなども彼と同じく「ディグ」で様々に学ばせてもらったし、助けて貰ったりもした。あれからほぼ半世紀。もう本当に長い付き合いである。 その彼が今回自身の集大成としてジャズ写真集を発表、有名ジャズ喫茶の親父が選ぶジャズベストシリーズの第一弾として「ダグ~中平穂積編」もこのほど登場。更には長年の新宿文化発信の功績を称え、和歌山県の文化人を顕彰する賞にも選ばれる等、今年に入って様々に注目を集めることになる。と言う事でここはひとつ中平御大に登場してもらわなければならない...、と言う事で声をかけると、忙しいスケジュールの中、気安く引き受けてくれた。もう80才近いはずだが相変わらずダンディ-な紳士。かつての最盛期のジャズタウン、新宿の話や主体性の写真集の話など興味深い話が続いた。写真集の出版を記念しての写真展も、東京は終了したが、出身地の和歌山や北海道、秋田、名古屋、福岡など全国各地で行われる予定。「中平さん、少しはお年も考えられて、無理しない方が...」と言うと「頼まれると断れなくてね...」と飄々として答えてくれる。あまり無理しない方がいいですよ、新宿の大ボスなんですから、中平さん!なお中平氏の放送は8月2日です。

【今週の番組ゲスト】新宿DUGのオーナーでフォトグラファーの中平穂積さん
M1『ララバイ オブ ザ リーブス/ジェリー・マリガン』
M2『ブルーサンズ/チコ・ハミルトン』
M3『オープン・スペース/アルバート・マンゲルスドルフ』

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