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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日22:00-22:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.216~追分通信14年②~】

 1週間ほど東京にいてまた山荘に戻って来たら、降雨のせいもあってか酷暑の東京とは一変、8月半ばと言うのに肌寒い感じすらする。こうなると外に出るのも億劫、必然的に部屋で読書かCD鑑賞となる。読書は軽井沢の町立図書館から借りてきたハードボイルドもの数冊と前々から読みたかった御ひいき、西村健の大作『地の底のヤマ』など。前にも書いたと思うが軽井沢の図書館は以前は駅からかなり離れていたのだが、しなの鉄道の中軽井沢駅の真上に移転した。明るく見易く、使い易くなった。これも新館長の青木裕子さんの功績大と言わなければならない。青木さんはもともとNHKのアナウンサーだった人で、数年前に軽井沢に移住、別荘に「朗読館」という朗読を聞かせる小ホールを作り、自身の朗読やコンサートなどを企画していた。その努力が認められ新しい館長に抜擢されたようだが、熱心に展示スペースの改善や広報活動に励み、一躍多くの人を集めるようになった。彼女は年2回ほど坂ちゃん(アルト・サックス奏者、坂田明)のコンサートを開催、そんな縁で朗読館にもお邪魔したこともあったのだが、熱意の人でもある。こちらに来るとこの軽井沢と御代田の図書館に通い詰め状態、両方とも東京の図書館を凌駕するだけの内容を誇っており、信州侮るべからずと言った感じでもある。

 さて御ひいきの西村健だが、この大作「地の底のヤマ」、ざっくり言えば社会派推理小説となるのだろうが、凄い小説で労作、期待通りの出来栄えだった。ヤマとは炭鉱のことで、このヤマは大牟田の三池炭鉱。あの日本の労働史のエポックにもなった三池炭鉱の歴史が絡んだ推理・刑事物で、彼の地元だけにその炭鉱の歴史に通じており、凄まじい熱気に溢れている。確か吉川英二賞と日本冒険作家大賞を両賞を受賞した筈で、それも当然と言える圧倒的な迫力を有した作品でもある。
 西村健は東大の工学部出身で労働省の役人を数年勤め、それを辞めて作家になったという異色の経歴。今は亡きスーパー・エディターにして熱狂的ジャズ愛好家・ライター「ヤスケン」こと安原顕の作家教室に通い、作家を目指したという面白い男。デビュー作の「ビンゴ」のオフ・ビート感、止められない面白さに満ちた快作で、ヤスケンさんから名前は聞いていたが、すぐに大ファンになってしまい、以降「劫火」等など彼の作品は全て読破しているが、どれも期待を裏切らない。中でもこの「地の果てのヤマ」は圧巻。ぜひ皆様にも御一読をお勧めしたい。

 ところで炭鉱と言えば坂ちゃん繋がりではないが、あの山下洋輔さんも炭鉱町育ちだというのは、あまり知られていないかも知れない。彼が育ったのは筑豊の中心、田川の筈だが、ここは井上陽水、リリー・フランキーなどを生んだ荒くれの街だったようで、山下さんの小学生時代の話も実に興味深い。そう言えばタモリも福岡、山下さんとの心の接点はそんな辺りにあったのかもしれないですね。 と言ったところで今日は山下&坂田トリオの「砂山」を聴いてみることにしました。「砂山」はあの有名な童謡ですが、それがハシャメシャな山下ジャズに作り替えられている所、かなり興奮しますよね。

【今週の番組ゲスト】トランペッターの原朋直さんとピアニストのユキアリマサさん。2年ぶりにお越し頂きました。お二人のデュオ作品第二弾、6月16日発売の『The Days of Wine and Roses』から4曲お送りします。
M1『In Your Own Sweet Way』
M2『April in Paris』
M3『Conception』
M4『The Days of wine and Roses』

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