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テイスト・オブ・ジャズ

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テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.366~丹波焼探訪】

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月の最初の週は大忙しだった。まず数日追分の山荘に行き、軽井沢ジャズなどの用件処理、その次の2日間は山梨県の韮崎、その間8月夏休みの為の録り貯めを東京のスタジオに戻って行い、その後直ぐに兵庫県の丹波と但馬地方に5日ほど滞在と...、オールドボーイとしては海外取材と同じくらいに目一杯動き回った。まあ疲れながらも結構愉しい発見も多い旅だったが、ラストの兵庫旅行は以前から誘われていた娘の旦那の実家訪問がメイン。旦那の実家は丹波篠山市の郊外、立杭(たちくい)と言う地区にある丹波焼の窯元の一つで、もう1006代も続いている銘家。現在は旦那のお父さんとお兄さんの二人で陶勝窯と言う名称の窯を続けており、実家と作業場を持ち立派な登り窯まで付いている由緒正しき家系。この丹波焼、日本六古窯の一つとされるもので、50を超える多くの窯元が並んでおり観光客も多い焼き物の里。前から山深い辺鄙な所と聞かされ続けていたのだが、行ってみるとそんなに山深い感じも無く、静かで落ち着きのある山里だった。丹波焼は古くからの伝統を守り、シンプルながらも長く楽しめるデザインの日用食器を多く作っており、ぼくも茶碗などいくつか買ってきた。

 
古い歴史を持つこの陶器の里には、市野、大西、大上と言った姓が多く、中でも市野が3分の2ほど。旦那の実家もその市野姓で、丹波焼の窯元を代表する一人として叙勲を受けたりもしている。この里にはまた兵庫県の県立陶芸美術館も設置されており、それが市野家から小川を隔てた真ん前の山中にある。当然そこに見学に行ったのだが、そこでの催し物が装飾性の強いドイツのマイセン陶芸展とはシンプルさが売りの丹波焼の里としてはいささか皮肉な感じもしたが、中々に立派な建物で当然丹波焼コーナーもあり、歴史・沿革などが理解できる仕組み。陶勝窯の作業場には作品の展示場や静かな池を借景にしたテラスなども設置されており、まさに癒しの空間で、作業場では簡単な陶芸体験も出来、娘夫婦は茶碗などを作っていた。ぼくはその間を利用してこの里の端にある温泉施設「こんだ薬師温泉(この地域の総称が"こんだ"である)」で湯あみを愉しんだが、これが自噴の仲々のお湯でなにより湧出量が多いのが嬉しい所。たっぷり楽しませてもらいました。

 
丹波篠山市はあの、でかんしょ節で知られる古い城下町で、もともとは徳川家康が豊臣を攻めるために作った出城。武家屋敷街や商人地域などかつての街並みも一部保存されており、大阪からも1時間ちょっとと言う便利さもあり、結構関西圏からの観光客も多く、小洒落た喫茶店などもいくつか見掛けた。閑静で落ち着いた魅力的な街だが、半面いささか活気に欠ける所でもあった。

 
ところで今回の旅の目的はもう一つ、我が父母の郷里を久々に訪ねる旅でもあった。父は但馬の中心地、豊岡市。母はその豊岡市から但馬を代表する河川・円山川を30分ほどさかのぼった八鹿(ようか/今は養父(やぶ)市)と言う街の出身で、共に山陰・但馬地域の出身だけに、折角の機会なので丹波訪問の前に久々に立ち寄ることとし、泊りはこの地域を代表する城崎温泉、あの志賀直哉の「城崎にて」で知られる温泉街とした。小西、小出(母の実家)共に昔は子沢山で、小西が8人、母の小出の方は何と13人。うちの上の姉貴のが母方の一番下の叔母さんよりも年上と言った奇妙なねじれ現象も起きているが、まあ子供が多い。しかしその実家を継ぐ人はおらず、残念なことに荒れ放題。特に小出家は代々医者の家系で、祖父は但馬地域で最初の総合病院(小出医院)を明治半ばに開設、建物は県の文化財指定を受けるほどのもので、10数年前に訪れた時は県指定文化財などと言う看板も仰々しく立っていたが、今はそれも隅に押しやられ建物はガラスも割れいささか悲惨な有様。従弟は八鹿の公立病院のお偉いさんのはずだが殆ど実家には戻っていないようで、家もかなりな広さだけに管理も出来かねる様子...。広い敷地(中庭にあった松の大木は国の天然記念物だった)・建物、これを維持管理するのは家計的にも大変なことと同情はするが、反面寂しくあったのもまた事実。

 
まあこんな寂しい思いを吹っ切ろうと、丹波の小京都として今一寸したブームにもなっているらしい城下町、出石町を訪ねることにした。円山川の支流、出石川が街の真ん中を流れるこの城下町は、八鹿から峠を越えた先にあり車で20分ほど。丹波篠山市と同じくここにも出石焼と言う古い焼き物があり、また「皿そば」と言う独自のそば(これが美味)でも知られ、江戸時代からの芝居小屋も再現されるなど見どころも一杯、城跡も作り直されており平日にも関わらず観光客も多かったが、この城下町の最大ポイント~時計塔が修理中で全貌を拝めなかったのは残念だった。そして城崎温泉。立ち寄り湯だけで7つもあると言うこの古湯、各旅館では派手な色合いの貸浴衣を用意、これを着て温泉街を練り歩くのが若い連中に受けているようで、学生や若い会社員など数多くの若者グループが街を歩いており、その賑やかさにいささか圧倒された。これならば当分城崎温泉は大丈夫そうでホッともしたものだった。

 
丹波を出てからは加古川市に住む大学時代の友人(早大ワンゲル部)を訪ね一泊、隣町の姫路市のお城、改装なった白鷺城や、古寺である書写山円教寺(これが聞きしに勝る、比叡山延暦寺にも匹敵す素晴らしい山寺だった)などを慌ただしく見学後、一路東京に帰ることにした。疲れてはいたがその足でスタジオに向かいジャズ番組の収録(名花ギラ・ジルカがゲスト登場)をこなし、深夜に帰宅した。まあ愉しくも厳しいオールドボーイ奮闘のおよそ10日間でした。
【今週の番組ゲスト:NY在住のピアニスト 大林武司さん】
アルバム『Manhattan』から
M1
Cill My Landlord
M2
Heart
M3
Steal Heel
M4
In Walked Bim

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