「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週日曜19:00~19:30で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。
【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.734~私の好きな歌・カッコーのセレナーデ~】
ぼくの住む国立の街(住所は国分寺市だが...)は所謂「武蔵野」の一隅で、なんと今回初めて知ったのだが、東京都のほぼド真ん中に位置するらしい。あの文豪の国木田独歩先生も記した「武蔵野」だけに、宅地が多いとは言え未だ自然も多く残っており~特に駅の南側の一橋大学周辺などは自然豊か~朝などは鳥の囀りもかなりなものである。そんな国立で聞かれる小鳥達の中で、5月から6月のこの時期、この10年ほど気になっているのが、一羽のはぐれ郭公の存在である。毎年この時期になると単身現れ、電柱や屋根や大木の上などで、「クック―...」と異性を求めて(?)自身の存在を誇示する。まあ10数年同じ郭公だとは到底思えないのだが、何時も孤独に鳴き喚いており、その姿はいささかもの悲しくも滑稽でもある。
ところでそんな郭公の鳴き声を耳にすると、いつも思い出すのがあの天才にして異才のマルチインストルメンタリスト、ローランド・カークがフルートを駆使して奏で上げる自作の「カッコーのセレナーデ(セレナーデ・トゥ・ア・クックー)」である。郭公は英語でもその鳴き声からクックーと言うのだが、初夏の季語でやはりこの季節の代表的な鳥である。自身で編み出した楽器など70種類余りの楽器を扱うとも言われる、驚異のジャズプレーヤーのカークだが、この曲の収められているアルバム『アイ・トーク・ウイズ・ザ・スピリッツ』は、もっぱらフルートだけを吹いた異色作。但しそのフルートも普通のフルートの他にノイズフルートなど多種類を使い分けるなど、いかにも鬼才カークらしさを存分に味わわせてくれる。セレナーデとあるだけに、いかにも快活で楽しげなジャズセレナードだが、随所にブラックミュージックの鬼才らしさも表れており、ソウル風なチャントや呟きを織り込んでいる辺りも興味深い。何より冒頭が鳩時計の擬音...、と言うのも彼らしい洒脱さで面白い。
この「カッコーのセレナーデ」は、イギリスの人気ロックグループ「ジェスロ・タル」が、そのデビュー作でカバーしたことにより、ロック畑でも知られることになり一躍有名になった。だがカーク自身は、白人が自身の曲を盗んだと考え、何時も彼らの存在に激怒していたとも伝えられる。いかにもブラックミュージックを体現化したジャズミュージシャンらしい処し方だが、ロック畑のミュージシャン、特にイギリスのミュージシャン達は、カークのことを敬愛している連中も多く、その驚異的な演奏法(管3の本を同時に吹く...)などにより、彼はある種神格化された存在でもあった。この曲はフルート奏者には、教典的ナンバーの一つのようで、日本のフルート奏者も数多く取り上げている。少し変わった処では人気ピアニストの山中千尋が、自身のアルバムで取り上げていること。いかにも愛らしい演奏で、千尋らしさ全開の素敵なプレーが聴かれる。郭公をテーマにした珍しい曲、この時期に聞くと正にぴったりで愉しめると思います。
【今週の番組ゲスト:コアポート主宰 高木洋司さん】
M1「Let You Be / Taylor Eigsti」(『Plot Armor』より)
M2「Look Around You feat. Becca Stevens / Taylor Eigsti」(『Plot Armor』より)
M3「Out The Sun / Frida Touray」(『Mending』より)
M4「Rising / Jasmine Myra 」(『Rising』より)






