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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.256~TOKU】

 このコラムでも再三書いて来たが、ジャズアルバムが売れない~そこで新譜も出ないと言った、無い々ずくしの負のスパイラルに落ち込んでしまっている。これはジャズだけでなく音楽ソフト界全体の問題で、CDや配信も本当に良くない。かえってかつてのアナログ盤が若い音楽ファンの関心を集め、アナログ盤専門店誕生と言ったニュースも聞く。
 そんな音楽~ジャズ業界だが、少し毛色が変っているのがジャズボーカルの世界で、次々と新人も登場し、アルバムセールスはどうか判らないが、奇妙な活況状態にあるとも言える。これには若い女性達の自分探しの一環としてのジャズボーカル教室の盛況。そこの卒業生がセミプロ化し、名刺代わりにアルバムを制作と言った言いにくい側面も確かにあるのだが、元気が無いよりはあった方がはるかに良いのは言うまでもないこと。しかしこの奇妙な活況は女性ボーカルに限ったことで、若い男性ボーカリストはほとんど皆無といった状態。一時脚光を浴びた小林桂も、最近ではその動向すら余り耳にしなくなってしまった。そんな中にあって一人気を吐いているのが、プロ歴15年に及び、今や中堅になってしまった感もあるTOKU。

 彼はボーカリストであると同時に、日本を代表するフリューゲルホーン奏者。これはいまだ根強い人気を誇る故チェット・ベイカーと同じ。と言うよりもTOKUはチェットの影響で、この2刀流に手を染め始めた訳で、そのボーカルスタイルもチェット流の囁くようなウイスパーボーカルなのである。そのTOKUが今回、ジャズボーカルの大御所、故フランク・シナトラ追悼のジャズアルバム『ディア・ミスター・シナトラ』を発表した。折しも今年は「ザ・ヴォイス」ことシナトラ生誕100周年と言う記念年。それだけに以前から敬愛して止まないシナトラ追悼集を...と言う事になったのだが、今年は自身も15周年と言うメモリアルイヤー。それだけに好個の企画になったと言う感じだ。
 そこでTOKUに久しぶりにスタジオに遊びに来てもらうことにした。なんと10数年振りの登場である。ものともとTOKUは出身大学は違うが、早稲田大モダンジャズ研究会=ダンモ研OBで、ぼくの後輩にあたる(後で知ったことだが...)。早稲田生のクラブ員がほとんどいなかった低迷期に、彼はクラブを盛り立ててくれた陰の功労者だとも、デビュー後に聞かされたが、もし彼が居なければクラブは消滅したかも知れない...などと言われると、自ずと頭が下がるし、その彼の周年作品とあれば、番組で取り上げざるを得ない。

 そのTOKUくんのボーカリストとしての才を見つけ、レコーディングに引っ張り出したのは、ソニーレコードのディレクターで、今や早大ダンモ研OB会会長と言う重責を担っている渡部康蔵君。彼がデビュー間近の彼をスタジオに連れて来て、それ以降も何回かスタジオには来ているのだが、この所はとんとご無沙汰で、今回はなんと10数年振りの登場。彼は新潟県三条市の出身で、番組の山本アナも新潟弥彦出身で三条の高校に通っていたのだと言う。初対面の2人はその地域のローカルな話で収録前に盛り上がっていた。
 アルバムはロン・カーターや別所哲也などの豪華ゲストを迎え、TOKUが御大の持ち歌を楽しそうに披露している優れものなのだが、なんとシナトラの十八番とも言えるあの究極のバラード「マイ・ウエイ」は、人気ヒップホップアーティストのZeebraを迎え、ヒップホップ・マイウエイに作り替えられている。この辺りも興味深い所なのである。

 その語り口・雰囲気などがタレントの「DAIGO」に似ているなーと、山本アナと収録後に意見が一致したのだが,今や男性ボーカルの世界を一人で背負って立っている感も強い彼。「ジャズボーカルの王道アルバムにしたかった」と語っていたが、そのとおりの好アルバム。これからも大いに男性ボーカルの為、気を吐いて欲しいものです。

【今週の番組ゲストヴォーカル&フリューゲルホルン奏者のTOKUさん】
今年生誕100年を迎えるフランク・シナトラをトリビュートしたアルバム『Dear Mr.SINATORA』からご紹介します。
M1『I've Got You Under My Skin featuring Advanced Music Gallery』
M2『The Lady Is A Tramp featuing 別所哲也』
M3『Strangers In The Night』

M4『My Way featuring Zeebra』


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