お知らせ:

テイスト・オブ・ジャズ

番組へのお便りはこちら
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜23:00~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.468~エミ・マイヤー】

  今週のゲストはジャズ系のシンガーソングライターのエミ・マイヤー。アメリカ人の父親と日本人の母親を持つハーフで京都生まれだが、幼い頃からシアトルで育ち、大学までアメリカ西海岸。その後日本に戻り歌手活動を展開、結婚して一児の母親になったと言うのが彼女のざっとした経歴。両親はシアトルで出会い結婚したとのことで、アメリカ西海岸の自由闊達な雰囲気を、たっぷりと満喫しながら育った感もあるシンガーだけに、一応ジャズを標榜していてもその枠に止まらない自由さがなんとも心地よい。今年でデビュー10周年を迎えるが、その記念アルバム『ウイングス』は音楽の街=ナッシュビルで録音されたもの。ナッシュビルと言うとカントリーミュージックと言った感じも強いのだが、最近は大いに様変わりしており、カントリー、ジャズ、ポップスなどなんでもありの街で、スタジオや音楽事務所が数多く存在、NYやロス等と並ぶ一大音楽産業タウンだとのこと。


 彼女の新譜もそんな街の雰囲気を写し、自由でオーガニックな雰囲気のあるソウル&ジャズミュージックと言った趣き。自作が中心だがカーペンターズのカバー曲「ア・ソング・フォー・ユー」等も取り上げており、聴き易く心地よいアルバムになっている。番組ではこの新作ともう一枚、数年前に録音された前作『モノクローム』からも2曲取り上げており、こちらはフランスを代表するジャズピアニスト、エリック・レニーニと共演したジャズ・スタンダード集。「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」や「スマイル」等の定番ナンバーを歌ったものだが、ここにも日本の凡百なジャズシンガーなどとは違って、オーガニックで闊達な雰囲気が漂う中々の良品。

 
 彼女エミ・マイヤーの場合は、ジャズシンガーと言う前にシンガーソングライターであると言う点が何よりのポイントなのだが、これは最近の注目ジャズシンガーに共通している。こうしたジャズボーカルの転機はなんと言ってもノラ・ジョーンズの存在だろう。彼女の出現でノラ以前、ノラ以降と言った区分も出来そうなほど。もう一人重要なシンガーがブラック層を代表するカサンドラ・ウイルソン。彼女達は従来のジャズスタンダードを金科玉条の様にして歌う(日本のぽっと出のシンガーは特にその傾向強し)シンガー達とは違い、時にジャズスタンダードも取り上げるが、根本は自身のソングライティングを取り上げる傾向が強い。いわばジャズ系のシンガーソングライターが現在のモダンジャズボーカルの主流を占めている。それも決して狭いジャズの枠に捉われない、自由な歌世界を作り上げることがその大きな特徴だと言えよう。グレッチェン・パーラト、メロディー・ガルド―、サラ・ガザレク等々、どれもそうしたシンガーだし、思えば女性シンガーばかりで、次代を担う男性シンガーは日本だけでなく本場アメリカでも数少ない。

 まあそんなジャズボーカルの新しい波の一端として、わが日本でもこのエミ・マイヤーの存在、もっと注目されても良いのではと思う...。

【今週の番組ゲスト:シンガーソングライターのエミ・マイヤーさん】
今月リリースされたばかりのデビュー10周年記念アルバム『Wings
ジャズスタンダード中心の前作『モノクローム』から
M1Wings
M2A Song For You
M3Nashville Lullaby
M4If I think of you
M5「この素晴らしき世界」



お知らせ

お知らせ一覧