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テイスト・オブ・ジャズ

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テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.356~ブルージャイアント新展開】

 ジャズやジャズメンを素材にしたコミック~ジャズコミックではおそらく世界最高峰とも言える石塚真一の「ブルージャイアント」。文化庁の漫画大賞も受賞しているこのジャズコミックが国内編を終了、いよいよワールドワイドな展開を迎えることとなり、タイトルも「ブルージャイアント・シュープリーム」に変更、そのコミック版の第1集がこのほど登場した。「ブルージャイアント」とは天文学で言われる超巨星のことで、ここではジャズテナーに目覚め世界一のジャズプレーヤーになることを目指し成長していく若者、宮本大を指している。仙台で生まれ育ったバスケット少年、宮本大がある日突然ジャズの面白さ、楽しさに目覚め、大学受験も止めテナープレーヤーになろうと独学で仙台の広瀬川河畔で練習を積む。今から半世紀ほど前、即ちぼくらの若い頃ならいざ知らず、最近のジャズを志す若い連中は国立音大や洗足音大等のジャズ科、あるいは直接バークレー音楽大やカーティス音楽院あるいはNY州立大などの本場のジャズ科を目指す筈なのだが、彼はそうした既成のジャズ路線を歩かずひたすら自身で道を切り拓き、たまたま彼の川縁での独学練習を耳にしたNY帰りのジャズ教師(かつてはかなりその将来を嘱望されていた人物)が、そのプレーに関心を持ち弟子に迎えてひたすら腕を磨き、その後単身上京しライブの現場で徹底して腕を磨いていく。まあまさにかつてのジャズプレーヤーの成長そのままの展開。そしてブルーノート東京にも似たライブハウスで彼のグループ「JASS」(テナー、ピアノ、ドラムと言う変則トリオ)が演奏、日本での活動はそれでお開きとなり(単行本10巻)、彼は単身新たな世界を目指す...。

 
このジャズコミックの面白さは、大と言う意慾あふれるいささか向こう見ずな好青年を通し、ジャズの持つ何とも言えない蠱惑(こわく)力が見事に描き出されていること。この蠱惑力はその初期の仙台編に最もよく表れており、テクニックは無いが野太く力強いテナートーンでひたすらその情熱を奏で上げる。その極致が仙台のジャズフェスでの単身路上ライブ。そのソロ演奏を立ち止まって見続ける仙台市民の驚愕の表情、それが2ページにわたり30コマ近い描画として丹念に描き出される。ジャズの至福をこれほど見事に描き出した成功例は無い。ただし彼が東京に出て仲間とグループを組んでからは、本格的なジャズのお勉強も入ってくるだけに、いささかそのジャズコミックとしてのパワーとエネルギーは損なわれてしまう。まあそれも無理からぬ所でそのため有名ライブスポットでの演奏を最後に、東京編は突如打ち切りになる訳である。そして次に大が選び出した修業の場、それが今混迷を深める欧州~ドイツの首都ベルリン。言葉も全然できない彼がこれからどんな修業を積むのか...、そして憧れの本場NYへどう向かっていくのか...。
 
スタートのころの様な愉しみはいささか薄れたとしても、このジャズ・コミックはそのタイトル通り光り輝いている。頑張れ宮本大と一声かけたくなる。
【今週の番組ゲスト:ベーシストの加藤真一さん】佐藤允彦さん(Pf)とのデュオアルバム『An evening at Lezard』から
M1「Close Enough for Love」
M2「Theme for Lezard」
M3「When October Goes」
M4「Thus the Song Passed」


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