【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.511~ステイホーム】
このコロナ渦で最も叫ばれている単語、それが「ステイホーム=蟄居」だろう。確かにこんな状況になっても、江の島や高尾山に人が集まるなどは愚の骨頂...、と言うか危険極まりない行動ではあるが、老いも若きも幼きも全てが蟄居とは寂しいしなんとも厳しい。しかし後輩夫妻が駐留している北京や、アグネス・チャンが一時帰国している香港など、完全拘束状態の「ロックアウト」話を耳にすると、まだ蟄居などは自由で優雅な措置に思えてくるから不思議だ。
そんな毎日のステイホーム、ぼくの場合はまずジャズを聴く~ジャズアルバムの整理などジャズ関連に始まり、ビデオ鑑賞、そして読書などと言ったおうち行動中心で、肝心の1時間ウーキング(お散歩)もバカ犬ピーちゃんを失ってからは気持ちもままならない。またジャズリスニング(鑑賞)、これもご近所の手前あまり大きな音を出せないつらさ。更にアルバムや資料の整理、これも作業しながらついつい、見逃し聞き逃してしまった資料やアルバムの発掘作業に変わってしまい、少しもはかどらないのが実情だ。
先日の資料整理の最中、一冊のジャズ&ミステリー本を再発見、久しぶりに読みふけってしまった。タイトルは「ミステリー・ディスクを聴こう」、著者はミステリー作家でジャズ好きでも知られる山口雅也。ジャズ専門誌にコラムなども書いていた彼のこのミステリー音楽本、もう20年も前に出されたものだけに、当然今は絶版だと思うが...。この本ぼくは確か著者から贈呈された筈で、その当時は全部読んでいたと思っていた。だが意外に忘れていたエピソードやアルバムなども多く、蟄居生活を癒す格好の素材として読み進んでしまった。
この山口氏のミステリー&ジャズ本が出た90年代半ばは、未だハードボイルド小説、特にぼくの大好きなディック=PI(プライベート・アイ)と呼ばれる、私立探偵達(スペンサーやモーゼズ・ワイン、アルバート・サムスン等々)が大活躍する、ハードボイルドものも人気を保っていた時代だったが、今やハードボイルド、特にディック(私立探偵)物の翻訳本は壊滅状態で、日本で出されることもほとんど無く、また日本のハードボイルド探偵も、札幌の名無し探偵シリーズ(東直紀)が頑張っているぐらいで、残念ながら壊滅状態。そんな今は絶滅危惧種扱いのディック達だが、マッチョでダンディなスペンサーを始め彼らのほとんどはジャズファンで、酒場や車のバックラウンドミュージックはジャズと決まっており、ナオン(女子)の口説き音楽もジャズだった。
そんな探偵達の登場に欠かせない音楽=ジャズを、数多く取り上げているのがこの本で、一時人気だったピート・ハミルの描くディック、サム・ブリスコー(マンハッタン・ブルース)は、冒頭が「パーカーのオーニソロジーを聴いていると電話が鳴った」と言うシチュエーションでここから探偵のNYでの活動が始まると言う次第。こうした音楽とハードボイルド小説との蜜月が、色々と面白く描かれている音楽エッセイ集だけに、やはり心惹かれる所多々なのである。「シナトラは神のごとく」「ヒッピー探偵もソ連のスパイもみんなジャズが好き」「ミステリーとマイルスの相性について」等々、こんなサブタイトルを見たジャズファンならば、その食指が動かない筈はない。今は絶版だと思うがジャズファンならば是非古本屋かジャズをメインに置いているCDストアを探してみたらどうだろうか...。満足すること請け合いだと思います。
【今週の番組ゲスト:ギタリストの三好"3吉"功郎さん】
リーダーとして10枚目全曲オリジナルのアルバム『My Little Song Book』をご紹介頂きました。
M1「separation」
M2「scenry in my heart 」
M3「lonely country boy 」
M4「both truth 」

