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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.628~21世紀のECM~】

 我等がジャズ番組「テイスト・オブ・ジャズ」、このコラムでも良く書いている通り、もう58年と言う恐らく世界でも屈指の長い歴史を誇る番組で、ぼく自身が担当してもう50年弱とほぼ半世紀も経過しているのだ。まあよく続いているものだし、昨年初め辺りからラジコの聴取者ランキングでも上位を続けると言う...、予想外の好調さでもある。

 ところでこの番組をぼくが担当するようになったのとほぼ同時期、まあ実際は少し前ではあるが、その時に誕生し現在もなお世界で最も個性的な素晴らしいレーベルとして、ジャズ関係者などから高い評価を受けているのが、ドイツのミュンヘンを拠点にしている「ECM」である。このECMが誕生したのは1969年のこと。クラシックのコントラバス奏者でフリージャズも演奏していたと言うマンフレッド・アイヒャ―が、その独特な美意識に基づく抒情&耽美なジャズサウンドを求めて起こしたジャズレーベルなのである。記念すべき第1作は、日本でも絶大な人気を誇っていたピアニスト、故マル・ウオルドロンの『フリー・アット・ラスト』。このアルバムは確か日本ビクターから出されており、初代の木全信プロデューサーのアシスタントをやっていた時に、番組でも取り上げた覚えがあるので、我がジャズ番組とアイヒャーのECMは、切っても切れない縁が有るように思えてならない。そしてそのすぐ後にぼくが正式にジャズ番組の担当プロデューサーとなり、半世紀に渡る関りがスタートすることになる。先方はそんなことはこれっぽっちも意識していないだろうが...。

 誕生後このECMは、アイヒャーと言う強烈な個性の持ち主に導かれ、順調な道を歩みミュージシャン達からの信頼も厚く、一躍欧州を代表するジャズレーベルへと成長してゆく。特にこのレーベルは、ジャズ界を代表するピアニスト、キース・ジャレットとの専属契約によって発展を遂げ、彼のソロアルバムやスタンダードトリオなどの諸作が大ヒットしたことにより、世界の中でもその個性が際立つレーベルとしてジャズ界を代表するものとして、多くの関係者からも強く認識されることにもなる。キースの諸作の大ヒットはアイヒャーの自信を深め、元々クラシック奏者だった彼は、ジャズだけでなくクラシック関連のアルバムも発表するようになり(「ニュー・シリーズ」)、ギドン・クレーメルやアンドリュー・シフと言った大家の作品も手掛け、クラシックレーベルとしてもその存在感を見せつけることになる。

 今や押しも押されもせぬジャズ&クラシックの世界的レーベルになったECMだが、21世紀に入りジャズの世界でも新たな才能の発掘を加速させ、様々な資質を世に送り出している。サックスのクリス・ポッターとマーク・ターナーと言う、現代のシーンのメインに位置する白人・黒人の代表的奏者の作品がそのなかでも最も印象深いが、その他にも今注目のイスラエルジャズのプレーヤー、シャイ・マエストロ(P)、アビシャイ・コーエン(tp)等々、又東欧のアルメニア出身のティグラン・ハマシアン(p)、ぼくの大好きな国キューバ出身の気鋭ピアニスト、ダビ・ビレージャスなど、様々な国の若手にも目を向けており、その細やかな目配りは流石と言った感じだ。
 このECMについてはぼくも関係しているジャズブログ「ジャズ・トウキョウ」を主宰する稲岡邦也氏(以前にこのレーベルの担当責任者でもあった)が最も詳しく、関連のジャズ本も何冊か出しているだけに、このECMの新たな動きについて、番組でも彼に色々と解説してもらおうと思っている。数カ月前に音楽誌「ステレオ」がこのレーベル特集号を組んだところ、音楽誌では珍しくすぐに完売してしまったとも聞く。それだけに人気の高いECM特集、そのレーベルの歴史と主に歩んできたと言う、細やかな自負を持つ我がジャズ番組でも、かなりなジャズ愛好聴取者を獲得出来ればとも今考えているのですが...。

【今週の番組ゲスト:ジャズボーカリストの西村知恵さん フレットレスベーシストの織原良次さん】
お2人のユニット「VIRTUAL SILENCE」の新譜『VIRTUAL SILENCE』から
M1 「矛盾の街 (Vain Pursuit) 」
M2「Beyond The Flames 」
M3「人間が住んでる (The Past Decade) 」
M4「汚れた群青 (Grief Runs Deep) 」



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