お知らせ:

テイスト・オブ・ジャズ

番組へのお便りはこちら
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.306~グランドピアノ】

 日本のファンが最も好むのがピアノジャズそれもピアノトリオもの、ジャズアルバムで売れるのはもっぱらピアノトリオノアルバムだし、それに伴ってかジャズアルバムが出されるのもまたトリオものがほとんど。こうした傾向は決して好ましいものとは言い難いが、ある意味仕方ない面もある。サックスやトランペットと言うかつての花形楽器は、プレーヤー個々の個性と言うか、まずその出す音自体が人によって千差万別。人間ひとりひとりの生理を写し取ったような、その生音を受け付けないとなると、どんな素晴らしいアドリブプレーを繰り広げたとしても、そのプレーヤーは自分にとって無縁な人と言うことになってしまう。しかしピアノに関して、プレーは様々なスタイルがあっても、楽器の特質として、平均律と言うか...根本の音自体は誰もがさほど変わらない。それだけに音に対する好き嫌いは余り派生しない。そのうえピアノはギターと共に「小さなオーケストラ」とも呼ばれ、それ自身で自立できる(=ソロで成り立つ)表現力豊かな楽器でもある。まあそれやこれやでピアノはジャズ楽器の主力として君臨しているのだと言えそうである。

 
さてそんな圧倒的な人気を誇る楽器~ピアノ、その頂点ともなるのが堂々としたグランドピアノとなる訳だが、それをそのままタイトルにしたアルバムを先ごろ発表したのが、ベテランの伊原康二氏。50年近いキャリアを誇る彼にとって、このアルバムは3枚目のリーダー作となり、純粋なピアニストとしては確かデビューアルバムの筈である。その彼の久々のアルバム発表と言うことだし、彼自身も是非番組に来たいという強い要望もあって、およそ10年振りに彼にスタジオに遊びに来てもらうことにした。かつてのフランスギャング映画の出演者のような強面の風貌の彼だが、根は実に繊細でセンス良い人。

 
元々彼は日本を代表するオルガン奏者で、かつては渋谷でオルガン演奏をメインとした珍しいジャズクラブを経営していたこともある。それだけにその前作も当然オルガン・ジャズアルバムで、これが愉しさ溢れた仲々の出来栄え。ジャズ雑誌でレビューを担当してかなり褒めておいたのだが、その関係で彼と縁が出来、そのお店に行ったりもしたものだった。それから10年余り、今の彼はもうほとんどオルガンは弾かなくなってしまい、専らピアニストとして活動しているのだと言う。その彼のピアノに惚れたある篤志家がスポンサーになり新作が誕生したのだが、いささか残念でもあるが、それもまた仕方ない所だし、このピアノジャズアルバムの出来栄えもかなりなものなので、それもまた良しとすべきなのだろう。現在60代半ばの彼は、80才で現役引退を広言しており、キャリア50年で3枚のアルバム、それについては「ゆっくりと生きて来た証しです」と語ってくれた。引退後は」ファンの皆がたまに思い出してくれれば嬉しいです」と言うことだそうだ。

 
アルバムは「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」など良く知られたスタンダードが10曲で、ラストに自身のオリジナル、インド政府の招きで現地のジャズフェスに出演、その時見た現地リゾート海岸での心象風景を綴った「サイン」が収められている。また3曲でストリングスとの共演もあり、ジャズピアニストとしては大変に嬉しいことだったと言うが、確かにウイズストリングスものを1枚は作ってみたい、と言うのは多くのジャズプレーヤー達の願望。その望みが叶えられたのだから、言うことなしである。面白いことにはアルバム出資者でもある篤志家が、数曲で自身のフリューゲル・ホーンの妙演を披露していること。これが素人はだしの出来栄えで、伊原氏のピアノに輝きを加えている。この関係ジャズにしてはかなり良いものですね。まあそれに倣って、どなたかお金持ちのジャズ好きな篤志家の方が、我が「テイスト・オブ・ジャズ」のスポンサーとして、名乗りを上げてくれませんかね。こりゃいささか虫が良すぎですかね、失礼しました。
【今週の番組ゲスト:ジャズピアニストの伊原康二さん】
M1「These foolis things」
M2「You go to my head」
M3「sign」
M4「Fly me to the moon」

お知らせ

お知らせ一覧