「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週日曜19:00~19:30で放送中(再放送は毎週金曜日 18:30~19:00 ※特別番組放送により休止の場合あり)。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。
【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.677~蝶々バタフライ】
先日買物で立川の繁華街を歩いていると、一羽の蝶がビル街の中を優雅に舞っているのが目に留まった。おおこんなビル街の中で良く...と見ると、脇に小さな花壇が作られていて、小振りのパンジーのような花が植えられその蜜を吸うために、その蝶~黒アゲハ蝶は飛び回っているのだ。子供が捕まえようとして追いかけても余り逃げない。親はその子に注意していたが、やはり命湧き出る春ならではの微笑ましい光景で、道行く人もその優雅な舞いを愉しんでいるようだった。
ところで日本では童謡の「蝶々」やポップスではポルノグラフティーのヒット曲「アゲハ蝶」など、蝶をテーマにした曲も少なくないが、英語のバタフライ(蝶)をタイトルにしたジャズのスタンダードソング、何かあったかなーといささか気になり、家に帰って少し調べてみると、バタフライをタイトルに冠した有名曲、これが殆んど見つからなかった。日本人は虫の声などに興味をそそられ、その品評会なども古来から開かれて来たが、欧米人~アングロ・サクソン系はそうした虫の音などには関心を示さないとも言われる。但し蝶の標本収集などは欧米でも熱心なはずだから、もう少し蝶をタイトルにしたナンバーがあっても良さそうにも思えるのだが、意外なことにこれが無いのである。唯一見つけたのが結構良く知られている、スタンダードナンバーの「プーア・バタフライ」ぐらい。
但しこのバタフライ、蝶は蝶でも昆虫の蝶では無く、あの有名なプッチーニの作ったオペラ「蝶々夫人」の蝶々さんのこと。日本人のソプラノ歌手として世界的に有名だった、故三浦環主演のオペラをNYのステージで見たあるプロデューサーが、その感動を基に直ぐ詞を書き友人の作曲家に曲作りを頼み、出来上がったものだと言う。タイトル通りに蝶々夫人の悲劇を歌ったもので、アビー・リンカーンやサラ・ボーン等と言った女性シンガーが得意としており、特にサラはこの曲は涙なしに歌えない...とも語っていたとも言われる。インストものではソニー・ロリンズやポール・デスモンド等の名演が良く知られるが、ロリンズの演奏はプーア(可哀そう)と言うよりも豪快にスイングしており、蝶々夫人の気持ちなどどうでも...と言った趣き。
立川のビル街を優雅に飛び回っていたあのアゲハ蝶も、その寿命は決して長いものでは無いだろう。それはあたかもあの芸者の蝶々夫人の儚い命運とも、どこか似ている様にも思えてならない。でも生きている間~飛び回っている間は、両者ともに精一杯生き切った筈なのだから、他人がどうこう言うことも無いかも知れない。まあ街の蝶からスタンダード・ソングへと想いを飛ばす.これも街歩き&ジャズ聴く愉しみの一つかも知れませんね。
【今週の番組ゲスト:LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL JAPAN2023実行委員会の松本豊さん】
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