【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.780~下北沢レディージェーン~】
シモキタ(下北沢)の街を象徴するようなジャズバー「レディージェーン」が、4月の半ばに50年と言う歴史を刻みながらも、惜しまれつつ閉店してしまった。オーナー&マスターは大木雄高氏。様々な面でシモキタを代表する文化名士だったが、中島みゆきがこの店のことを歌い、俳優の松田優作を始め多くの映画人や演劇人、文化人が集った名店で、故中平穂積氏の新宿「ディグ」と並ぶ、東京のジャズバー(喫茶)の代表格だった。昔からぼくとも長い付き合いがあり、J-ジャズのドンとでも言えそうな存在の中平さんに比べ、大木氏自身はジャズ関係者との付き合いは、それほど多くはなかった筈だと思う。ぼくもこの個性的な店には何度か足を運んだが、マスターの大木氏と口を訊いたのはほんの2、3度。彼とは大学こそ違えど、まさにタメ=同学年だし、経歴や活動などでもいくらか重なる所もあり、一度はじっくりと...とも思っていたが、その機会はこれまで無かった。
彼は広島育ちで大学入学(中大)の為に上京、大学では演劇活動に没頭しその関係で演劇タウンのシモキタに導かれ(と言うよりも彼らが劇タウンを作った...)、その地で75年に「レディージェーン」を出したと言う経歴。演劇関係者や俳優、映画関係者との付き合いが多く、浅川マキなどジャズシンガーと言うよりも、かなりユニークな歌い手達のライブを積極的に行い、ジャズ関係者のサークルとは余り付き合いもしなかった。小田急線の地下化などに伴うシモキタの街の再開発計画には真っ向から反対、かなり頑張っていたのだがそれも叶わず、結局シモキタの商業化、高級化を横目に眺めながら、失意のままに店を閉じてしまった感も強い。
それにしてもシモキタの変わりようは激しい。あの混沌の駅裏飲み屋街などは今やもう影も形もなく、小綺麗な衛生街に変わリ今もなお変化しつつ有る。残念の一言だ。大木自身も「シモキタ祝祭」といったエッセイ集を出し、愛着有るシモキタの街の変化を嘆いていたが、そこではお芝居や映画などについても触れており、その造詣の深さや交友関係の広さには感服するところ大だった。それにしてもレディージェーンの閉店、寂しいこと限りなし。昭和はもうはるかに遠い。
【今週の番組ゲスト:86才で初めてのジャズアルバムをリリースされたカントリー歌手のトミ藤山さん】
『Tomi Sings Jazz』より
M1「The Shadow of Your Smile」
M2「Danny Boy」
M3「'Round Midnight」
M4「Tennessee Waltz」



