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テイスト・オブ・ジャズ

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テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.347~2017mの山、そしてまたひとり】
 
 以前月に数回は山行をしていた頃は、山岳写真家や山のエッセイスト、ヤマケイ(山と渓谷社)のお偉いさん~ヤマケイ協力の番組もやっていた関係、そしてトレッキングサークルの面々等々、本当に色々な連中と山に入ったものだった。まあこんなことを言うといかにも凄そうだが、実際は年に数回アルプスに行く位で、後は同行のメンバーの車で関東・信越の山に入るぐらいで、決して威張れたものではないが、関東周辺の名だたる山は殆ど全て踏破している位に、良く山行したもので、その帰りは温泉と決まっており、温泉の数もかなり稼いだものだった。それが60才を超えた位から、温泉探訪は別として山には殆ど行かなくなってしまい、年に数回仲間と山行をする位で、足腰の衰えもオールドボーイならではの顕著なものになってしまった。これではいかんと思い直し、大学時代の仲間に頼むと早速案を出してくれた。

 その案とは東京都の最高峰、雲取山トレックである。ジャズ研のクラブ先輩や同期の仲間など(不思議なことにジャズ好きであると同時に山好きでもある)数人との、気の置けない山行である。この山行元々はあの東日本大震災の週に実施されるはずのものだったが、それがあの大震災で取りやめ、今回ようやく実現したという中々に因縁深いもの。その上今年は2017年、そして雲取山も海抜2017メートルの高さを誇り、どうやら17年の山としても脚光を集めているのだとも聞く。それはグッドではないかと言うことになり、三条の湯で一泊し翌日雲取に登る計画と決まった。一日目は立川駅から青梅線に乗り終点の奥多摩駅でバスに乗り換え、雲取山の麓の三条の湯に向かう。三条の湯、山深い渓谷の奥にある秘湯で、PH10.2と言う高いアルカリ濃度を誇る。バス停を降りてから林道をひたすら歩くこと3時間半、ようやく辿り着ける山中の秘湯(鉱泉)だが、長い時間を掛けるだけの価値は充分にある秘湯で、ぼく自身は三条の湯は今回で3回目。10数年振りの再訪になる。以前ならば三条の湯までかなり楽ちんに着いた筈なのだが、やはり年を重ねるとそうもいかない。

 雲取山に登るのは今回が5回目、なまじ昔の登山経験があると失敗する。この時期の山行はなんと言っても冬山なので、それ相応の準備も必要なのだが、以前の経験もありそれなりにこなせる...などと甘い考えだったが、これが大間違い。事前にアイゼンももう少し高価な6本爪を買っとけば良かったのに、余り雪山に来ることも...などと考え、簡易アイゼンにしたのが大間違い。雪はさほどないのだが狭い山道の日の当たらない所はバリバリのアイスバーン。以前ならばなんてこともなく通り過ごした山道も立ち往生、その上簡易アイゼンは肝心な時に外れてしまったりで殆ど役立たない。しりもちをつきながらどうにかやり過ごしたが、仲間から"お前息も絶え絶えじゃないか..."と揶揄される始末。昇り降り全て8時間余り、以前ならば1時間は短く行けたはずなのだが...。そのおかげで最終バスにも乗り損ね、奥多摩駅までタクシー、温泉に入ることも叶わないトホホの山行、家に辿り着いた時は本当にホッとしました。やはりオールドボーイになればなるほど、山を舐めてはいけません。今回の大教訓でした。

 そして家に着くと訃報が待っていた。かなり長いこと患っていたピアニストの辛島文雄が亡くなったという知らせ。享年68才。。大分出身の音楽一家(父は大分大教授、兄弟も芸大教授など)の彼は、名門九州大学卒業後上京して様々なバンドで腕を磨き、日本逗留(麻薬使用容疑で帰国できず)中のあのレジェンド・ドラマー、エルビン・ジョーンズにその才を認められ、彼のバンドに参加、ワールド・ツアーなど華々しい活躍をした。以降は自身のトリオなどで、日本を代表するジャズピアニストとして人気を博した。日本人離れしたダイナミックなプレーは今の時代にはいささか熱すぎると敬遠される向きもあったが、素晴らしいピアニストだった。数年前からがんを患い、闘病生活が続いていたのだが...。辛島は新しいアルバムを出すとほぼったが、最後に顔を見せたのは数年前のこと。その頃から幾分調子も悪そうだったが、スタジオに来れば快活に振舞い、ユーモアたっぷりに昔の仲間達の逸話などを聞かせてくれたものだった。今月の14日には池田篤などを従え新宿"ピット・イン"で医師の許可を得てライブを敢行、これがラストステージになってしまった。

 山から帰宅してかなり疲れてはいたが、辛島のアルバムを...と思って、CD棚からエルビン・ジョンーズとの『ムーン・フラワー』、ハーモニカの名手トゥーツ・シールマンスを迎えた『ウイズ・シールマンス』を取り出し聴いてみた。心に沁みました。 合掌!

【今週の番組ゲスト:
「ジャズのお勉強」音楽評論家の青木和富さん】

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