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テイスト・オブ・ジャズ

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テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.616~ジャズ・ブルータス~】

 先日国立の書店を覗いたら雑誌の「ブルータス」が目に留まった。いつもの号よりもかなり厚手で値段も張るのだが、タイトルにつられて買ってしまった。そのタイトルは完本「音楽と酒」。サブタイトルに「飲んで聴く、
2つの幸せを1冊に...」とある。こうなれば買うしかない...、それも巻頭があのジャズ漫画の傑作「ブルー・ジャイアンツ」の石塚真一が、書き下ろしで「人生最高の音楽と酒の話」を寄せており、その漫画の主役のイラストレイターが、あるジャズバーでキヤノンボール・アダレーの名盤『ライブ』をリクエストするのである。ぼくの大好きなキャノンボールをフューチャ...、もう言うこと無しだが中を見ると何か読んだことのある記憶もある。よく見ると完本と言うだけあって、昨年2月と7月に出た「ブルータス~酒と音楽 特集号」の合本で、ぼくはその2月号の方をすでに買っていたのである。しかしこの完本の為の書下ろしなどもあり、決して損をした感じも無くかなり愉しめた。

 まあ音楽と酒となると、今流行りらしいリスニングバーかレコードバーの話と言うことになる訳で、この完本はその全国のリスニングバーの店主などに、自身の好きなアルバムを紹介させており、そのマスター達が選ぶ数点のアルバムも面白く、かなり熱心に読み耽ってしまった。そのリスニングバーだが、言葉だけ見るとなにやら目新しい感じもあるが、実際はかつてのジャズ喫茶そしてその発展形のロック喫茶からブルース喫茶等々の現代版で、それらのお店の出し物が珈琲・紅茶からお酒に変わり、お店自体も少しモダンな内装になった...、と言った形なのである。ただこうした音楽を聞かせお酒を飲ませるバー、こうしたものは欧米の諸都市ではめったに無く、それだけにそれを珍しがって外人の客も、欧米各国から結構来店していたと言うのだ(当然コロナ前の事だが...)。まあこうしたジャズ喫茶文化の真っただ中で、ぼくらモダンジャズ第1世代は育った訳で、中心地の新宿などにはかつては10数軒のジャズ喫茶が乱立、会話厳禁などとあってただ黙々とジャズを聴いていた訳だが、その後ロックの台頭とともにロック喫茶やブルース喫茶なども生まれて来たと言う次第。欧米各地ではまずジャズやロックの本物達が、日常に聴けると言う環境下にあった訳だが、こと極東の島国ではその本物に出会う機会も少なく、レコードを通してしかその音楽に触れる機会は無かったことから、こうしたジャズ&ロック喫茶などが隆盛だった訳なのである。何時でも音楽が垂れ流され消費されている現代、それが果たして良い時代(いや悪しき時代か...)かは別として今ではまず考えられないことだろう。
 まあそうした時代の推移もあり、ジャズ喫茶はジャズバー、ロック喫茶はロックバー(共に今はリスニングバーと言う名称へ)と変貌を遂げ、生き延び続けて来て、最近はかなりな活況でもあると言うことらしい。そしてそうした状況を見逃さずに特集を組み、売り上げを伸ばす...と言うのが、ブルータス流なのである。但しそこにはやはり名門ブルータスならではのセンスも、最大限に発揮されており、そこがかなり興味深い所。この完本でもあのピーター・バラカンに、自身のリスリングバーで掛けるナンバーを聴いたり、「理想的なリスニングバーの為のジャズ入門」などを、ライターに選曲させるなどの小技も効いている。また嬉しいことには、温泉に合うジャズなどの小コラムもあり、ジャズ温泉地として伸して来た感もある、佐賀県嬉野温泉の旅館の若主人にそこら辺を聞いてみる...等の企画もあり、結構色々と愉しめるのだ。

 今は余り元気の無いジャズだが、この音楽バーの世界ではやはり老舗で強みも多々。合本だけに1500円近い値段だが、それなりに読み応え~見ごたえある音楽本で、皆様にもお勧めしたい1冊である。

【今週の番組ゲスト:ジャズヴォーカリストの斉田佳子さん】
4thアルバム『Bon Voyage II』
5thアルバム『POPYSM』から
M1「Skindo - Le - Le」
M2「`S Wonderful」
M3「My Love」
M4「Breakout」


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