「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週日曜19:00~19:30で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。
【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.776~今年のジャズ入門編~】
この10年余り「テイスト・オブ・ジャズ」の4月第1週放送分は、新社会人や大学や高校の新入生達に向けての「ジャズ入門講座」にしている。講師はジャズミュージシャンやジャズライター、ジャズ誌編集長などジャズ関係者なのだが、このところはライターや編集長と言った、ジャズ関係者が続いていたので、今年はジャズミュージシャン、それも現場の第一線で活躍している若手(&中堅)ミュージシャンにゲストを頼みたい...と考えた。色々名前は挙がるのだがさて誰を...と思った時、ふと思い出したのが昨年秋に出された、1冊のジャズ本だった。
タイトルは「ジャズ深堀りセッション」(大修館書店)。慌てて本棚からこの本を取り出すと、惹句に、若手ミュージシャンがジャズ初心者向けに熱く優しく語り合うジャズトークセッションとあり、魚返明未(p)井上銘(g)石若駿(ds)と言った若手を代表する3人のミュージシャン達の名前があり、贈呈されて初めて読んだ時には、これ迄のジャズライター等によるジャズ入門書には無いなにか新鮮な視線が、興味深く感じられたことを思い出した。となればこの3人の中から誰かを...と考え、銘くんは新譜を出したばかりでまた番組に来るかも知れないし、駿くんは今一番の売れっ子ドラマーなので、スケジュール的にも...等と考えると、ここは魚返くんかな~となり、彼に声掛けすることにして、出演の快諾を得た。
魚返明未(おがえり・あみ)くんは現在30才代前半。バリバリ活躍している若手のホープとも言える期待のピアニスト。昨年出したアルバム『照らす』は素晴らしいトリオ作品で、ぼく自身もジャズ誌のジャズアルバムベスト10の中の1枚に選出したほど、気に入っている作品。東京出身で4歳からピアノを始めた彼は、高校に入るとジャズに興味を抱きジャズ研に入り、大学はあの東京芸大の作曲科に進学という、音楽エリートなのである。世界を代表するピアニスト、プーさんこと故菊地雅章など、東京芸大出身のジャズミュージシャンは、決して多くはないが、どれも素晴らしい実績を残している人ばかり。なおトークセッションメンバーの一人でもある石若駿も、芸大の打楽器科卒業である。その魚返くんのジャズ遍歴を振り返るように、幾つかのアルバムを持参してもらって、若手のピアニスト&作曲家として、ライブハウスの活用法、ジャズ名盤の味わい方など、ミュージシャンならではのジャズの面白さ、愉しみ方などを、時間の許す限り語ってもらった。「ジャズは神秘的な音楽で、言葉にするのは中々に難しいですし、4枚のアルバムを選ぶのも大変に難しい作業でした...」と真摯に語る彼は、別表の4曲を選択、うち1曲はぼくのリクエストで、自身のアルバム『照らす』から1曲を選んでくれた。
芸大の作曲科出身だけに、映画音楽やドラマ音楽などでもその才を発揮、富永昌敬監督のジャズ映画「白鍵と黒鍵の間に」など、多くの作品にその名前が見られるが、これからもピアニストだけで無く、作曲の分野でもさらなる活躍を...と自身も心しているふうでもある。
それにしても彼のジャズ歴、意外と正統派の歩みと言った感じもあり、もっと今の音が掛かるのかなーと思ったのだが、コルトレーン、エリントン、パウエルとジャズジャイアンツのアルバムが並んだ辺りは、興味深い処だった。彼が最後まで悩んだのはコルトレーンの『バラード』を掛けるか、大好きだと言うポール・ブレイ(p)のソロアルバムか...だった。だがこれは制作Pの立場からぼくがコルトレーンに決めてもらった。好漢の魚返くんの今後の活躍、大いに注目して行きたいものですし、また新作も...。
【今週の番組ゲスト:ピアニストの魚返明未さん】
今週は年度最初の恒例企画"ジャズ入門"
M1「 IDAHO / Bud Powell 」( 『Bud in Paris』より)
M2「 I GOT IT BAD AND THAT AINT GOOD / Ella Fitz Gerald & Duke Ellington」(『Ella Fitz Gerald Sings The Duke Ellington Song Book』より)
M3「 YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS / John Coltrane Quartet」(『Ballads』より)
M4「洞窟 / 魚返明未」(『照らす」より)
『ジャズ深掘りトーク・セッション――ミュージシャンが語るライブ・演奏・音源の愉しみ方』大修館書店








