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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

    
【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.246~鈴木"チン"良雄~】

 ぼくは大学時代2つのクラブ(ジャズ研と山岳同好会)に在籍、その他には石投げなどで社会変革にも加わったりしていたものだが、亡くなったフジオちゃん(赤塚不二夫)にバカ田大学と揶揄される、我が早稲田大学。ぼくにとっては実に面白い役にも立つ、お気に入り大学だった。その早稲田ジャズ研だが、ぼくが入学した頃は創部6~7年目。大学の音楽サークルとしてはすでに名門ではあったが、有名プレーヤー&シンガーを輩出する迄には至らなかった。このクラブが一躍有名になったのは、ぼくの1年後輩であのタモリと同期のギター奏者、増尾好秋が入学し、その才をアメリカ帰りのサダオさん(渡辺貞夫)に認められ、学生のままサダオさんのグループに抜擢されてのこと。この事件により早稲田ジャズ研は凄いと大評判、全国から腕自慢の学生が集まったのである。その増尾と並んでもう一人、サダオさんのグループに呼ばれたのが、ぼくと同期のチンサンこと鈴木良雄だった。彼は元々ピアニストだったが、ピアノは素晴らしい人も多いのでベースに転向したら...と言うサダオさんの勧めでベーシストになり、長い間精進を重ね第一人者にまでなったのである。チンと言うニックネームは諸説あるのだが、練習などでちんたらやっているのを先輩に見咎められ、この名を拝命したが本当の説のようだ。彼は信州の木曽福島町出身で、叔父さんは日本の音楽教育に大きな貢献をなした、あの鈴木才能教育の創始者、鈴木鎮一。父親はその鈴木教室で使われるヴァイオリンを作っていたようだが、彼の姉が今は才能教育のトップとも聞き、音楽一家に育ったのだった。大学時代から増尾と並び学生トップの力量を誇った彼は、サダオさんグループでの活躍で一躍有名になり、その後アメリカに渡りアートブレーキーのジャズメッセンジャーズなどのビッググループにも参加した。彼のNY在住時代には数回高層アパートに寄らせてもらったこともあり、そのアパートで初めてかなり強烈なヒッピー体験(?)をさせてもらったことも、今となっては忘れられない思い出。

 10数年NYにいてその後帰国、自身のバンドを率い活躍し、今では自他ともに認めるJ-ベース界の第一人者。どうも彼に会うと学生気分が戻り「お前がベースレジェンドなどとは信じられない...」などと茶化すと「お前だってよく定年まで持ったな...」と返される。お互い様なのだが彼が新譜を出したとなると、やはり紹介せざるを得ない。特に今度の新譜は彼が若い有望ミュージシャン達と共演しているユニット「ジェネレーション・ギャップ」を、そのままアルバムタイトルにしたもので、相当にチンサンも気合が入っており、かなりいいアルバムに仕上がっている。年令に関わらず若い連中とよくやっている感じで、彼も若々しい。
 彼が番組収録でスタジオに来た日は、夜に銀座のクラブで仕事。自分の車で来ないとならないので、駐車場の無い新局舎事情を話したが、結局はぼくが自前で付近の駐車場代をお支払。「まあ日本を代表するベーシストをお迎えするのだからそれ位は...」と嫌味を言ってやったら苦笑していた。チンはベースも上手いが(あの秋吉敏子さんも彼を使いたがる)、人柄も上々、実に人に好かれるタイプの男。お前は人柄で持っているんじゃない...などと言いたくなるほど人に愛される好人物。 

 新作は故郷の山、あの大噴火した御嶽山(噴火前に作ったと言う)をモチーフにしたナンバーで始まり、これは和太鼓が加わり新鮮な感動を覚えるもの。メンバーもハクエイ・キム、大村恒など30代前半の俊才揃い。それらの面々がチンを敬愛して集まったと言うユニットの第1作だけに、彼も意欲充分で力感溢れた好作品。「小西よー、お前この良さが判らないならば、ライター稼業など止めちまえよ。」等と自信ありげにほざく。まあ今までかなりきついことも言って来た罪滅ぼし。アルバムの良さ全面的に認めましょう。かなり好いです。是非皆さんも耳にして下さいネ。よろしく。

【今週の番組ゲスト:ベーシスト鈴木良雄さん】
M1『御嶽』
M2『モネ』
M3『スキャヴラ』
M4『ルーレット』

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