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テイスト・オブ・ジャズ

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テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.554~チック・コリア死す】

 先日何気なく新聞を開くと、かなりなスペースで「チック・コリアさん死去」と見出しにあり、この2月9日に死去、79才だったと続く。チックの具合が悪いなどと言う話は、ついぞ耳にしたことも無かったので、「ええーっ」と一瞬仰け反ってしまったが、本人のフェイスブックで11日に明らかにされたもので、ごく最近、珍しい型の癌が見つかったと記されていたと言う。その癌が見つかって余り時間も経たない内に亡くなってしまったのかも知れないが、いずれにせよ驚きのニュースだった。
 このニュースが伝わるとフェイスブックでは多くの知り合いミュージシャンやジャズ関係者が、その追悼と交友の想い出などを載せていた。そう、彼は日本の多くのミュージシャンやジャズ関係者、ジャズファンと親しい交友関係を結び、また彼ら彼女らにこよなく愛されたミュージシャンで、最も訪日回数の多い親日家と言う存在でもあった。
 この記事には最後に「グラミー賞に67回ノミネートされ、23回も受賞。極めて多作なことでも知られ、来日公演も多く、まだ17才だった上原ひろみさんをステージに上げたこともあった」と記され、「上原さんとは2008年、日本武道館でデュエット公演を果たした」と書かれていた。その武道館デュオは残念ながら聴いていないが、東京ジャズ等でのチック&ひろみデュオには数回足を運んでおり、毎回その息の合った匠技を披露し合う、究極のデュオプレーを堪能させてもらったものだった。
 
 日本のジャズファンはジャズピアノ好きが多いが、1970年代以降~すなわちビル・エバンス以降のジャズピアノ界をリードし続けて来た大立者、チック、キース・ジャレット、そしてハービー・ハンコックの3人。今回チックが亡くなり、キースも病の為にピアノを弾くこと能わず、唯一残っているハービーも、ピアニストと言うよりも、もっと多様性のあるポップな音世界に関心を移している感もある。こう見ると今や完全にブラッド・メルドーやラバート・グラスパーなど、次世代・新世代ピアニスト達へとジャズピアノの基軸や重心は変化しつつあるとも言えそうだ。そしてそれを印象付けたのがチックのこの死亡ニュースだった。
 
 ピアノトリオアルバムの不朽の名作『ナウ・ヒー・シングス...』から、一世を風靡した楽園サウンドグループ「リターン・トゥ・フォーエバー」、多くのミュージシャンやシンガーがこぞって取り上げる大ヒット曲「スペイン」、更には上記のひろみとのデュオ等々、彼への愛着の念は尽きない。しかし何よりぼくが彼を愛するのは、彼の出自に深く関係するラテン(ジャズ)への血の濃さである。彼のデビューは、確か大物モンゴ・サンタマリアのラテンジャズバンドで、名作「スペイン」にはスパニッシュ&ラテンの香りが色濃く漂い、そこら辺が一般に大受けしたとも考えられる。
 ぼくは直接彼とは話しをしたことは無いが、まだ30代の頃彼の愛妻で、シンガー&ピアニストのゲイル・モラン。彼女のインタビューを頼まれたことがあり、その時に一緒に来日していたチックに会えるか...と思ったのだが、仕事の関係で彼は不在。残念な想いをしたものだった。だが彼女からは、いかに彼が素晴らしい人物で素敵なピアニストだと言うことをいやとほど聞かされたものだった。今となっては良い思い出である。チックの霊に 献杯!

【今週の番組ゲスト:シンガーソングライターの高田みち子さん T5Jazz Recordsの清水正さん】

『高田みち子 feat.LANDMARK BLUE LIVE FROM YOKOHAMA』から
M1「青春の残照」
M2Time After Time
M3「大桟橋と観覧車」
M4「港が見える丘」


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