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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜23:00~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.449~注目のサックス奏者ダニー・マッキャスリン】

 デビッド・ボウイが亡くなったのは3年程前の2016年1月のことで、遺作になった『★(ブラックスター)』は、ロックの殿堂入りを果たしロック界のアイコンとして話題を集め続けた存在のラストアルバムだけに、何かと評判を呼びセールスも良かったと聞く。その『★』で主役のボウイを助ける重要な役割を担ったのが、テナーサックスのダニー・マッキャスリンとドラムのマーク・ジュリアナ、21世紀のジャズシーンを牽引する2人のプレーヤーだった。元々ボウイはジャズとは結構関りも深く(ジャズ好きだと思われる)、かつての大ヒットアルバム『ジギー・スタンダード』(72年)にはジャズプレーヤーも参加、主演映画ではあの巨星ギル・エバンスとも共演したりしていた。それだけにラストアルバムの構想が出来上がりバックメンバーを探すために、現代きっての才媛の作・編曲者&バンドリーダー、マリア・シュナイダーに相談に行ったときに紹介されたのがこの2人。直ぐに彼らを『★』に起用することを決め、ボウイの遺作サウンドはかなりジャズテイストが感じられるものに仕上がった。


 このラストアルバムで一躍世界的にも有名になった2人だが、彼らは17年初めにマッキャスリンをリーダーとするユニットで訪日、東京「ブルーノート」での公演は大反響を呼び、一躍ジャズ界のニュースターとして日本でも注目を集めるようになる。そんな彼らの一人、ダニー・マッキャスリンが2月初めに再度の来日を果たし、またブルーノートのステージに立つと言う。このニュースを聞きつけたのがラジオNIKKEIのボウイ大好き社員で、是非聴きに行きたい...と言うのでブルーノートに付き合うことにした。マッキャスリンの新しいアルバムは『ブロウ』と言うタイトルで、かなりロック色の強いアルバムだが、素晴らしい内容だと彼は言う。まあ余りそちらの色が強いのも...と思ったがいずれにせよ今注目の存在だけに、聴いておくのも決して無駄では無いと考えたのである。

 
今回のステージには、前回共に登場したマーク・ジュリアナ(ds)の姿はなく、彼への期待も大きかっただけにいささか残念な思いもしたが、彼に代わってドラムの椅子に座ったザック・ダンジガーも中々の強者。ロックビートをメインに今風のエキサイティングでエッジの効いたドラミングを展開してくれた。ユニットはロックファンには名前の知られているらしい、ボーカル&ギターのジェフ・テイラーを全面フューチャーしており、オープニングナンバーは完璧にロック色。その上マッキャスリンもボーカルを披露、これはどうなることか...と思っていると、2曲目からは大分趣きが変わって来て、基本ロックテイストではあるが、ハードコアなジャズ的要素も加わり興味深いものになって行く。中でもキーボード奏者が全体のサウンドを作り上げており、誰だろうとチラシを見るとこれがぼくのご贔屓の一人ジェイソン・リンドナー。うかつにも彼がボウイの『★』に参加していたことを忘れていたが、このマッキャスリンのステージでも変則ながら実に印象的なスペーシーサウンドを構築、ステージを盛り上げる。リンドナーと言うピアニスト&キーボード奏者は実に懐の深いプレーヤーで、数年前にはブラジルに移住し現地のミュージシャンと共演した楽園系の素敵なブラジリアンジャズアルバムを発表しており、純生のピアノトリオでも素晴らしい作品を制作する変幻自在な才人。ここでもマッキャスリンを自在・闊達な蠱惑的サウンドで刺激、それに触発されたマッキャスリンも長尺なテナーソロの「ブロウ」を展開、大いに気を吐く。ロック&ジャズの入り混じった刺激的な音空間がステージでは現出され、全体にかなりな興奮度だった。

 
いまジャズは、ピアニスト&プロデューサー、ロバート・グラスパーを筆頭とするアフリカン・アメリカンの中堅から若いプレーヤー達が活躍、ヒップホップなどをベースに彼らの日常~ストリート感覚を生かした新しいジャズを提供、これが大きな潮流として時代をリードしつつある。彼らの音楽は一時余り元気の無かった感もある、アフリカン・アメリカン(黒人)・ジャズの強烈な復権を物語るものだと思うのだが(どうもヒップホップ自体に馴染めないので、その意義は大いに認めるにしろぼく自身は敬遠気味だが...)、これに対してマッキャスリンやジュリアナの音楽(ジャズ)は、ホワイトアメリカン達からのグラスパー一派に対する挑戦状、ないしはアンチテーゼの様にも見て取れる。ここら辺皆様は如何にお考えだろうか...。まあこの双方共そんな意識は余り無いかも知れないが、お互いに切磋琢磨し時に融合・交流を図りながら、21世紀の新たなジャズを構築していくのでは...と、ぼくは今大いに期待している所なのですが...。いずれにせよダニー・マッキャスリンのステージはかなfり愉しませてもらいましたよ。

【今週の番組ゲスト:ジャズクラリネット奏者の谷口英治さん】
4年ぶり、記念すべき10枚目のリーダーアルバム「In A Mellow Tone」から

M1
Begin the Beguine
M2Crazy Rhythm
M3Lil' Darlin
M4Jumpin' at the Woodside
M5In A Mellow Tone


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