「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週日曜19:00~19:30で放送中(再放送は毎週金曜日 18:30~19:00 ※特別番組放送により休止の場合あり)。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。
【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.666~マーク・ジュリアナとブラッド・メルドー】
2月最初の週は素晴らしいライブを続けて愉しんだ。一つはBN東京でのドラマー、マーク・ジュリアナのライブ、もう一つは新宿のオペラシティーホールでのピアニスト、ブラッド・メルドーのホールコンサートである。コロナ禍が長く続いている所為で、来日するミュージシャンも極端に少なくなってしまい、出不精もプラスされこちらもライブに足を運ぶことも無くなってしまったが、マーク・ジュリアナとブラッド・メルドーと言う、現代の白人JAZZを代表するミュージシャンの続けての来日とあれば、何を置いても会場に向かわざるを得ない、と言うことで行ってきました。ある意味でコンテンポラリージャズの極地とも言えるライブに立て続けに...。いやーこの両者、肌触りこそかなり異なっていましたが、どちらも素晴らしいもの、本当に感激でした。
まずはBN東京のマーク・ジュリアナ。彼のライブを聴くのは今回が3回目。今までは期待の割りには今一つ乗り切れなかった感ありのライブでしたが、今回はステージに登場し彼がドラムを叩き出した瞬間から、体がゾクゾクっと反応する何とも形容し難い昂奮。実に細かく正確なドラミングながら、打ち出されるグルーブ感が半端ない感じ。その力量改めて驚かされました。ジャズドラムのイノベーターの一人に黒人のマックス・ローチがいるが、彼の卓越したドラミングをもっと現代風にし、インテレクチュアルな感覚をミックスさせもの...、とでも表現すれば良いのかも知れない。そしてユニット(サックスが入るカルテット編成)としての統合感も実に見事。言うこと無しでした。
そしてもう一つは、現代きっての才人ピアニスト、ブラッド・メルドーによるソロコンサート。久しぶりのジャズでのライブでオペラシティーのホールも十数年振りだったが、こちらも音楽を聴く喜び・愉しみに溢れた素敵なソロコンサート。次々と彼が繰り出す美フレーズにただただ身を任す感じの中、あっという間にソロコンサートは終盤を迎えアンコールへとなだれ込んでいく展開。あのジャズ界の悪ガキ...と言った不敵なメルドーが、ここでは数曲が終わると実に紳士的に、時に中性的なしぐさも混じえ客にお辞儀をして次の曲に進む。この繰り返しで淡々とゆったりとしかも甘美に時は過ぎていく。全体には今流行りのアメリカーナ色も感じられたが、実にうっとりとして心地よい時の過ぎ方。ただ残念なことには次々に彼が繰り出す美メロディー、3曲も披露したアンコールナンバーを除くと、その美曲のほとんどがぼくには不明だった。オアシスとかビートルズナンバー等も含まれていとのことだが、ぼくには聴き取れなかった。まあそれは結構気になったが、こちらもコンサート自体はもう言うこと無し。現在最もアクティブに活動しているベーシストの井上陽介が、このソロコンサートを聴いて「自分の世界を突き詰めた人だけが出せる音...」と評していたが、まさにその通りの音世界でした。
マーク・ジュリアナ、ブラッド・メルドー、この2人のライブを立て続けに聴けたこと、ぼくの最近の一大収穫でした。謝・謝
【今週の番組ゲスト:トランペッターでヴォーカリストの神村英男さん】
12年ぶりのリーダーアルバム『十六夜の月』から
M1「Fanfale〜宇宙の彼方から」
M2「妹へ」
M3「桔梗」
M4「十六夜の月(うさぎ)」
M5「Violets for Your Furs」